新たなルアーターゲットとして昨今注目を浴びているのが、サワラ。暴れまくってダッシュする俊足スプリンターでありながら、見た目のイカツさもアングラーの“厨二病心”をくすぐってくれるヤバいヤツだ。コイツの釣り方を、百戦錬磨のガイド船「海猫」の三枝キャプテンに叩き込んでもらおう!

【Profile】
三枝 優(さえぐさ・すぐる)
東京湾のシーバスガイド船『海猫』のキャプテン。シーバスを中心に、東京湾内においてルアーで釣れるターゲットならば幅広く対応。サワラもそのうちの1魚種で、ここ4年ほどめざましい釣果を上げているという。
サワラってどんな魚?
ルアーフィッシングの世界では60cm以上をサワラ、それ以下をサゴシと呼び、ブリやヒラマサといった青物釣りのジャンルのひとつとされている。そのファイトは獰猛で、ヒットすると強烈な首振りの後、一気に突っ走る。歯が鋭いだけに見た目も怪獣っぽい。

『ルアーマガジンソルト2021年12月号』
アングラーを魅了する新たな定番ターゲット
サワラとシーバス。同じボートでも狙う場所が違う
何でも、サワラが大人気らしい! サワラと言えば漢字で『鰆』と書くだけに、特に関西では春が旬の魚として認識されていたようだが、関東では秋~冬が旬となり漁でも水揚げが多いと聞く。では、ルアーの『釣り物の旬』としては、どうなんだろう…?
三枝「少なくとも東京湾ではシーバス同様、割と1年中狙える魚になってきました。僕の記憶では湾奥で釣れ始めたのは10年くらい前だったと思うんですが、ルアーで狙ってコンスタントに釣れるというものではありませんでした。しかし、多くのシーバスガイド船の試行錯誤を経て、今のような盛り上がりを見せてきたのが4年ほど前からですね。ルアーも各メーカーから、シーバス用ルアーや青物用ルアーをベースにサワラ・サゴシ対応モデルが発売されるようになり、一気に火が付いた感じです」
基本的には、ボートゲームですか?
三枝「少なくとも、東京湾でコンスタントに釣果を狙うなら、ボートが一番ですね。イワシやコノシロなどのベイトフィッシュの群れを追って回遊しているので、それをボートで追いかけるスタイルです。岸際や障害物に居着いたり、河川の上流域まで入ってくるシーバスとは、その辺りが違う部分です」

「跳ねる」サワラをみんなで探すところからスタート!
サワラはどんな水域で釣れるのでしょうか?
三枝「東京湾の湾奥の水深は深くても20m前後なので、ジギングではあっという間にサーチが終わってしまう。だから基本的にはキャスティングゲームです。釣りやすいのは水深3m以浅でベイトフィッシュの群れを追いかけているサワラで、ベイトの群れを下から突き上げるように捕食するので、活性が高ければ水面から跳ねる姿が確認できます。そして、その“跳ね”をお客さんにも協力してもらって、探すところからゲームが始まります」
ただ、いつも跳ねているわけではないんですよね?
三枝「もちろんです。ベイトが沈んでしまえばサワラも沈んでしまいますから、そういう場合は実績場を回って魚探で探し、深いレンジを探れるルアーを使用します」
まずは「跳ね」を探せ。話はそれからだ!!
大海原に出て、まずはお客さんとともに四方を見渡してサワラの“跳ね”を探すという、青物ゲームらしいスタート。跳ねが確認できなくても鳥山やベイトのボイルが確認できればサワラがいる可能性は高いので、一直線で向かう。
見えない場合は船長&魚探が頼り
表層に反応がなくても、サワラはベイトフィッシュの群れに着いている可能性が高いので、ここから先は船長におまかせ。魚探を駆使して、ベイトフィッシュの群れを探してくれる。

マヅメ時と潮止まり前後は外せない
一番のチャンスタイムは、やっぱり朝マズメと夕マズメ。もちろん日中でも時合が訪れることはあり、特に潮止まり前後には太陽がテッペンに昇っていても、活性が上がりやすい。

サワラとのファイト&取り込み時の注意点
怪獣的風貌の通り、サワラのファイトは超強烈!
三枝「サワラはルアーに食い付くと、まずは凶暴なほどの首振りをカマしますから、タックルをしっかり支えていないと落としそうになるかもしれません。その後一気に突っ走ってラインを引き出されるんですが、このときに鳴り響くドラグ音がたまらないですね! そしてボートの周りをグルグル回りながら寄せたり走ったりを繰り返し、ボート際まで寄せると再びダッシュです。コレがまた楽しい!!」

三枝「こんなやり取りを2~3度繰り返した後、ようやく取り込みですが、歯が鋭くケガをする恐れもあるので、すべて船長がやりますから安心してください」

サワラを狙うおすすめタックルは「ボートシーバス用」
高速巻きがイージーにできるM~MHのスピニングタックルを
タックルですが、サワラ専用…というのは、見かけたことがありません。
三枝「ボート用のキャスティングゲームロッドならば問題ありません。僕は基本的にはボートシーバス用のスピニングタックルを使用しています。シーバス用でM~MHくらいのパワーならば30g前後のルアーも遠投しやすく、それでいてバイト後にサワラが突っ走ってもドラグ調整さえ適切にできていれば、口元が切れたりすることなくファイトを楽しむことができます」
青物用スピニングタックルという選択肢もあるが、サワラという魚は身がとても柔らかく、ロッドにパワーがありすぎるとフッキングした部分が広がったり、身切れしたりして簡単にバレてしまうことがあるという。その意味で、三枝さんはシーバス用を推奨する。
三枝さんのタックルはこちら↓

●ロッド:ディアルーナBS S610(シマノ)
●リール:10ステラ4000XG(シマノ)
●ライン:PE1.2号
●リーダー:フロロカーボン5号
【サワラおすすめリール】4000番以上の超ハイギアスピニングモデル
サワラは歯が鋭く、ルアーの前に回り込んでバイトされると高確率でリーダーを切られるため、常にルアーの後から追わせてバイトさせる必要がある。そのためには巻上速度が速い、1回転で1m前後巻ける4000番のエクストラハイギアが最適。
強烈な突っ込みに合わせてドラグを効かせるスタイルを考えても、やはりドラグ性能に優れたスピニングリールの方が適している。
【サワラおすすめロッド】6.8~7.3ftのM~MHパワーのスピニングモデル
サワラはダッシュ力のある魚だが、ルアーを感知してからバイトするまでにはそれなりの距離が必要となる。つまり助走が長い魚なのだ。
したがって20mレンジまで素早く沈められる30g以上のルアーを、思いっ切りキャストして飛距離を出すことができるロッドが不可欠。M~MHクラスのパワーでレングスは6.8~7.3ftほどのロッドが適切となる。
【サワラおすすめライン&リーダー】1.2~1.5号PEライン&~25lbフロロリーダー
より遠くまでキャストするために、引っ張り強度さえ確保できるなら可能な限り細いPEラインが良い。問題はリーダーで、サワラの鋭い歯が触れればどんなに太いリーダーもすっぱり切られてしまう。
だからサワラゲームではバイト時にリーダーに干渉されないよう、常にルアーのテールフックに掛けるイメージでアクションする。リーダーに歯が触れないなら20lbでも切れることはない。飛距離で考えても、細いリーダーの方がガイド抜けがよく、さらにロングキャストが可能となる。
サワラゲームのメインウェポン:シンキングロングミノー
食性ではなく、リアクションバイト狙いのルアー
ここからはルアー選びを。まずはメインとなる3mレンジまでを探れて、バイトを積極的に誘えるシンキングタイプのロングミノーから。
三枝「他のルアーを使う場合はマッチ・ザ・ベイトを意識したサイズを使うんですが、ロングミノーの場合はあまり考える必要はありません。というのも、ジャークして大きく左右へとダートさせ、食性と言うよりはリアクションバイトを誘うからです。ただ、前に回り込まれてバイトされてリーダーが切れないように、とにかく高速でジャークしてください。仮にポーズを入れるとしても『0.1秒』程度と、一瞬にするのがキモです」

止めても0.1秒…とにかく高速アクション!
着水したら高速ジャークを5回程度繰り返し、間髪入れずに高速ただ巻き、そして0.1秒ほどポーズを入れたらすぐに高速ただ巻きして、再び高速ジャークを5回…と、とにかく忙しい。『止めたら切られる』と思った方がいい。

サワラの食性に訴えるルアー:ヘビーシンキングミノー
高速巻きでヒラを打ち、打った瞬間にバイト!
次は青物のナブラ狙いなどに使うヘビーシンキングミノーだ。
三枝「サワラが跳ねている、またはシャローレンジで捕食しているなら、着水後からの高速巻きでOK。ヘビーシンキングミノーは高速巻きすれば自動的にヒラを打ち、その瞬間にバイトすることが多いです。また、サワラもベイトも沈んでしまっている場合は一旦ボトムまで沈め、斜め上方向に高速で巻き上げてきます。途中で連続ジャークを入れたりするのも効果的で、ロングミノー同様にリアクションバイトが誘えます。ただ、やっぱりジャーク後のポーズは『0.1秒』を厳守です!」

マッチ・ザ・ベイトは意識するべし!
食性に訴えかけるという意味では、サワラゲームにもっとも適していると言えるのがヘビーシンキングミノー。それだけに実際に食べているベイトフィッシュのサイズを意識して、ルアーのサイズを選ぶのも重要になってくる。

広くサワラを呼び寄せるルアー:ブレードジグ
ヘビーシンキングミノーにはないアピールで誘う
最後は、昨年辺りから流行し始めたブレードジグだ。
三枝「表層付近の攻めはロングミノーにまかせて、サワラやベイトフィッシュの気配が表層に見えない、感じられないときにはブレードジグの出番です。基本的な使い方はヘビーシンキングミノーと同じですが、まずはジャークなどせず一心不乱に巻き上げます。ブレードからの波動とフラッシングが、ヘビーシンキングミノーにはないアピールでサワラを誘います。ブレードから飛沫を上げながらの高速表層巻きもアリですね」

圧倒的な飛距離を活かすべし!
小さくても重いので飛距離は抜群。サワラもベイトも見えず、とりあえずサーチに徹したいならば、広く深く探れるブレードジグを最初から投入するのもひとつの手。
まずは高速巻きで探り、『0.1秒』ポーズでバイトを誘うのも良し。

サワラ釣りにおすすめルアー
ブローウィン!140S(ブルーブルー)【シンキングロングミノー】
「ブローウィン!」はシーバスメーカーとして快進撃を続けるブルーブルーの人気シンキングロングミノー。重心移動システムを搭載、スリムな形状でよく飛ぶのはもちろん、シーバスのスイッチを入れるための「ジャーキング」がサワラのリアクションを誘ってくれる。
ルドラ 130S(O.S.P)【シンキングロングミノー】
レジェンドバスプロ並木敏成さんが率いるO.S.Pの「ルドラ」は、一部の船宿では「絶対ルドラ持ってきて!」と指定されるほどサワラゲームでは釣れるルアーとして有名。トゥイッチやジャーキングのパワーを伝えにくい遠投先でも、ロッドアクションに反応して機敏な動きを見せる。
ダーティンZ(DAIWA)【シンキングロングミノー】
キレのある激しいダートアクションに特化したDAIWAのシーバスルアー「ダーティンZ」もサワラ釣りに有効。サワラゲームにおいてシンキングロングミノーに求められている遠投性能&ダート性能が集中的に高められたルアーであり、軽い力でも広いダート幅で動いてくれるため扱いやすいルアーとなっている。
X-80マグナム(メガバス)【シンキングロングミノー】
「ハチマル」の愛称で幅広いフィールドで使われ続けるX-80のマグナムモデル。メガバスCEO伊東由樹とプロアングラー村岡昌憲の両者が手を組んで生まれたハチマルを、ランカー級のシーバスを積極的に狙っていくため100mm超にビルドアップさせたものだ。ジャイアントシーバスと同等のパワーを持っているサワラを狙うのにふさわしいと言える。
ピンテールサワラチューン/サゴシチューン(ジャクソン)【ヘビーシンキングミノー】
サワラ専用ルアーの先駆けとなったジャクソンの「ピンテール」シリーズ。35gと42gというかなりのヘビーウェイトを活かした遠投性能でサワラ&サゴシを釣っていく。ナブラやボイル撃ちが主体となるサワラゲームでは、まずはいち早くピンポイントにルアーを届けることがアドバンテージとなるのだ。
コンタクト・フリッツ(タックルハウス)【ヘビーシンキングミノー】
「コンタクト・フリッツ」はタックルハウスの老舗ヘビーシンキングミノー。長年シイラやカツオ、マグロのキャスティングゲームで高い実績を誇ってきたルアーだ。やはりナブラ&ボイル撃ちを得意とし、一般的なミノーをはるか凌駕するキャスタビリティで活性の高いサワラにアピールしていこう。
ブレードショーテル(シャウト!)【ブレードジグ】
サワラ釣りにおけるブレードジグの主な使用法は、前述したように他に例を見ないほどの高速巻き。しかし全てのメタルジグがそのような速度域に対応しているわけではない。シャウト! の「ブレードショーテル」は高速巻きでも安定して泳いでくれる形状を追求。破綻することなく安定したアピールが可能だ。
メタルマジックTG(アクアウェーブ)【ブレードジグ】
コンパクトさを追求したブレードジグがアクアウェーブの「メタルマジックTG」。タングステン素材を使用することでダウンサイジングを実現しただけでなく、ブレードにもコロラドタイプを採用して全体的なシルエットをコンパクトに。その心は「小さいものが速く動く方が視覚的に速く見える」からだ。
マキッパサワラチューン(メガバス)【ブレードジグ】
メガバスのソルトシリーズにおいて人気のショアジギング用メタルジグ「マキッパ」がサワラ向けにチューンされたモデル。サワラの鋭い歯でリーダーを切られないよう、フックとジグとの接続にスイベルとスプリットリングが用いられているのが特徴だ。
メタルマル(ブリーデン)【ブレードジグ】
エギを思わせる異色のジグ形状が特徴の「メタルマル」。魚種限定解除を標榜するこのルアーはもちろんサワラも射程圏内だ。ブレードと同一のスイベルにダブルフックが接続されているため、ジグではなくブレードにアタックしてしまう「ブレードバイト」でもサカナを掛けていける。
サワラはとても美味しい魚!
三枝「釣れた人の9割が持って帰ります」
見た目はイカツいが、美味しい魚として有名なサワラ。
三枝「ファイトも楽しい魚ですが、それ以上に食べたくて釣りたいお客さんも多いです。海猫には氷入り160Lクーラーを常備していますし、絞めから血抜きまでしっかりやりますから、手間なくお持ち帰りいただけます」

サワラは非常に美味しい魚でありながら実は劣化が早く、鮮度の高いものを味わえるのは釣り人の特権とも言える。しかし、より美味しくいただくためには適切な処理と保存を行いたいところ。ルアマガプラスでは誰でも簡単にできる魚の仕立て法「津本式血抜き」を推奨しています。
さて、東京湾ではこれからハイシーズンに突入するようですが、現在の釣果はいかがでしょう?
三枝「好調な滑り出しだと思います。シーバスやイナダが混じりながらも、3kgクラスが釣れ始めています。これから晩秋~冬にかけて、もっと釣果は伸びてくるはずなので、ぜひチャレンジしに来てください!」

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