
ジャッカル・ビッグベイトのニューカマーはなんと揺らぎ系!? いわく、ビッグベイトの最終形態、動かないルアーなのだ。今回は開発に関わった水野浩聡さんが実釣を通してシークレットを公開していく!
クルーバーSF(ジャッカル)




項目 | スペック |
---|---|
全長 | 180mm |
重量 | 40g |
潜航深度 | 約1.5mm(諸条件で変化があります) |
価格 | 4,620円(税込み) |
すべてのパーツはボディを動かなくするために
テールを含めると3連結のジョイントビッグベイトなのだが、各ジョイントはほとんど動かないように工夫されている。フェザーもボディを動かなくするためのもの。サーキットボード製リップは水を受けて潜らせるという役割はあるものの、動かすためというよりはブレーキとして、あるいは人間が巻いた際の抵抗感を持たせるためのものだという。ウエイトは水平姿勢を保つため、頭側ボディーに列をなして並んでいる。
金具でボディにフックを固定
冬場はテールを啄むだけの確認バイトが多い。アタリが小さくバスが暴れてやっと気づくこともままあるので、フックポイントを少しでもテールに近づける工夫がこれ。ボディにフックを固定しているのだ。
ジョイント断面はほぼ平面
通常のビッグベイトはジョイント部分がV字に切れ込んでいたり、凸面同士でジョイントすることによって可動域を確保している……のだが、クルーバーは真逆の考え方で、ジョイント部分をほとんど平面に近い形にしている。
ボディのシルエットで気付かせる
ビッグベイトサイズにした理由は、冬場のデッドスロー巻きなど手数が少ないアプローチをすることになるので、やる気のあるバスにルアーのシルエットだけで魚に見つけてもらうため。「なんだこれ? 食ってまえ!」と、口にくわえて確認するようなバイトが多いという。
テールのジョイントにも遊びなし
ソフトテールにした理由は、冬以外のシーズンでブルっとアクションを付けた際の波動がほしかったため。素材はシリコンで、速く巻くと波打つような硬さのある動きをする。ジョイント部分はほぼ固定なのでくねらせたときの波動は強め。
共同開発者のジャッカルスタッフ片岡壮士さん
10年以上前から、リザーバーの中層に浮いたビッグバスを釣るために、ビッグミノーをデッドスローに巻いていた片岡プロの釣りのノウハウも随所に詰まっている。
水野さんクルーバー実釣&インタビュー
動かさずに存在感で食わせる……静のビッグベイト
クルーバーはルアマガが情報初出し! ……とのことで、事前情報がまったくないなか取材が始まった。水野さん、ズバリどんなルアーなんですか?
水野「動かないビッグベイトですね。ビッグベイトとミノーの中間の形をしています。冬場、捕食のために上がってくる魚を釣るために作りました」
近年は首振り系ビッグベイトが冬場によく効いて、低水温期のメソッドとして確立されていた。しかし、首を大きく動かしてアピールするので、ハイプレッシャーや水がクリアな場所では嫌うバスが増えてきたという。そこで、同じ場所を首振りアクションではなく、i字引きでビッグベイトをゆっくり引っ張ってくると食う、という現象が起き始めた。
水野「クルーバーはそういうバスを獲るために特化しています。最初はブラストボーンというジョイントルアーのジョイント部分を稼働しないように輪ゴムでぐるぐる巻きにしてi字引きしていたら反応があって。そこからリレンジという130mmのビッグミノーをi字引きしたらよく釣れて、この釣りは間違いない、と確信しました。その究極系がこのクルーバーです」
ビッグベイトとは存在感があってこそ、という先入観があったので、「動かないビッグベイト」というのはコロンブスの卵的発想かもしれない。水野さんは動かないことのメリットをどう分析しているのだろうか?
水野「まず、水を押さない、存在感がぼやける、っていうところですね。その結果、場荒れさせない、バスに見切られにくいというメリットにつながっています。通常、ルアーのジョイントはボディをくねらせるとか首を振らせるとかの機構としてあるのですが、クルーバーのジョイントはほぼ可動域がない。では、なんのためかというと、動きそうだけど動かなくて、水を纏って漂うというところがいいですね」
さて、朝6時半すぎには最初のポイントへ到着した……のだが、そこには先行者が。なので、徒歩で付近を流すことにした。
水野「本当は冬になってからがこの釣りの本番です。晩秋のこの時期はベイトが速いスピードで動くので、ルアーは速さを出さないとバスに見切られちゃう。逆に、冬場はプレッシャーにより動くと見切られ、i字のほうが反応が良い場面も。ベイトが動けるかどうかやその速さに近いかどうか、そういうことですね」
と、解説してもらっていたらバスがヒット! しばらくファイトしていたが、惜しくもバレてしまった。


水野「今のは40cmくらいはあったかな。今のはi字引きではなく、ボトムに当たった瞬間にグリっと巻いたら食いました」
そう、i字引きだけでなくアクションを付けて誘うこともクルーバーはできるのだ。ただ、ほかのビッグベイトとは少し違う。
水野「首振り系のビッグベイトは100の動きをさせ続けるのですが、このルアーは動かないままの0の状態をキープして、なにかモノに当たったり、ボトムにトンと頭が当たった瞬間に、リールをグリっと巻いたりして100のアクションをつけるんです」
静だけでなく、時には動へと豹変させることもできるのだ。
流れが出た! あの場所へ戻ろう!
ところで、超人気釣り場として知られる五三川。最近の状況はどんなものなのだろうか?
水野「シブいっス。いろいろな釣りを組み合わせていけば5~6本いけることもあります。それでもいいフィールドだと思いますよ。淡水魚、汽水魚、エビ、カニなどエサの量が豊富ですよね」
一旦下流まで走ると、止まっていた流れが動き始めた。水門が開いたのだろうか?
水野「お、川らしい流れになった。これはチャンスやな。下流はあんまりバスとベイトがリンクしていないのでもう一度上流へ行きます。流れているうちに!」
と、朝に入った本命ポイントへと戻ってきた。先行者が立ち去ったのが見えたぞ。やはり、流れがある。池のような場所へとつながる水門付近の水が動く場所だ。流心を越えてルアーを着水させ、ゆっくりと巻いてくる。反転流に差し掛かったところで……ロッドが力強く曲がった!
水野「狙い通り! 人が先に入っていてもあまり関係ないですね、この釣り方は。朝、ベイトがめっちゃ溜まっていたので、流れが出始めたこのタイミングを狙いにきました。流れを横切るように、緩いところから流心へ、そこから反転流のところへ引いてくると……引ったくられましたね」
会心の1尾。タイミング、アプローチなど完璧だった。ちなみに、先行者はシャッドを巻いていたらしい。
水野「またアタリがありました。ヤバいな、コレ。これだけ狭い場所でこのサイズのルアーを投げ続けられるのがクルーバーのいいところですね。逆に、広いエリアよりも絞れているスポットのほうが効率が上がりますよ」
ちょっと違うシチュエーションでもこの釣りを見せたいということで……近くの野池へと移動した。大規模な皿池タイプで、接続する水路が川と繋がっているらしい。
水野「風が当たるウッドカバーが本命です。冬にその場所ではリレンジのi字引きで何回か釣れていたんです。この釣り方に目覚めた瞬間でした。1月下旬にリレンジで釣れて、新しい引き出しが増えた! と感動して手が震えるくらい嬉しかったですね」
なお、この池の水は霞ヶ浦以上に濁っているが……それでもi字系ビッグベイトで釣れるらしい、いつもなら。この日は残念ながらアタリがないので、池は諦めて五三川へ戻ることにした。




再び、時を捕まえた! 遅いまずめに49cm登場
戻ってみると、先ほどの流れとは逆流している。水野さん、これはいいんですか?
水野「ないよりは全然マシです。ただ、減水もハンパないっスね。逆流しているということは、ここから下流にかけて一気に増えるということです」
その逆流が当たって夕まずめのフィーディング場所になるであろう、橋脚へと向かった。しかし、逆流が当たる側には先行者がいたので、反対側へ入った水野さん。すると……程なくして流れが再び変わり、順流になったではないか。 そのとき……。
水野「よっしゃ、食った! これがフィーディングバスです!! 今、順流になって、流れが一番当たる橋脚の先端をかすめるように引いていたんです。そこからブレイクに差し掛かった瞬間にチョンとやったらゴン! ときました」
これまたクリティカルヒットな49cm。
デラドンピシャ! 逆流だった流れが順流に変わり、橋脚の先端に当たり出したまさにそのタイミングでヒットした。スローリトリーブをしつつブレイクのボトムをかすめる瞬間にチョンとアクションをつけて食わせた。 [写真タップで拡大]
水野「橋脚にいたヤツが追いかけてきたんでしょうね。またドンピシャのタイミングでした」
時をとらえるビッグベイト、そんなキャッチが頭に浮かぶ、五三川の2発だった。
ため池にちょっとだけ出張
水野さんが真冬のi字引きに開眼したという私的聖地へ。風の当たるサイドの倒木を狙ったがこの日は留守のようだった。
クルーバー完成に至る変遷史
上から古い順に。ブラストボーンを輪ゴムで動かなくしている(テールはサカマタシャッド)。リレンジをゆっくり巻く。スリークマイキーを動かなくチューン。以下はクルーバーのプロト。最初のプロトはリップもジョイントもかなり異なっている。
クルーバーの使い方
今回の使用タックル
水野浩聡さんのプロフィール
『ルアーマガジン』2023年3月号 発売情報
※本記事は”ルアーマガジン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。
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