夏休みが終わっちゃった
消化不良な夏でした。
今年の関東地方の夏は、来る日も来る日も、雨、雨、雨。
息子は息子で、窓の外の分厚い雨雲を見上げつつ、おうちの中でくすぶって、僕の夏休み(=釣りに行く日)を指折り数えておりました。
僕は僕で、息子が釣りやすそうな釣りモノを決められないまま休暇を迎えてしまい、内心焦っている始末。
唐突に太陽が顔をのぞかせた日には、大慌てで東京湾の漁港に向かい、「難易度が低そうだ」という理由でサビキに挑戦してみたり…。

久々の釣行に、はしゃぐ息子とたどたどしく仕掛けをセット。釣りをスタートするも、そもそもここで何が釣れるかさえわからない。この炎天下では水温も高そうで、何かが釣れる予感はしない。

ジリジリとした日差しに耐える僕と息子。
炎天下で約2時間、やみくもに粘ってみましたが、結局なんにも起こりませんでした。
「おさかないるのに、なんでつれないの?」。当然息子は、納得がいきません。
「今日は練習だから…」。僕の答えはまるで言い訳のようです。
だましだまし(?)の家族サービス
翌日からは、また雨です。
フラストレーションでエンスト気味の息子をなだめようと、今度は小雨の中を繰り出して、ザリガニ釣りをしてみたり…。

おとうさんのマル秘スポットでザリガニが釣り。21尾をゲット。
水族館でお魚たちを観てみたり…。

カクレクマノミだ!
シャチのショーを観てみたり…。

「さめー?」と息子。「シャチだよ」と僕。
そうして僕らの夏休みは、静かに終わりを迎えました。
SEPTEMBER
9月になっても相変わらず、釣りモノを決めかねていた僕です。
息子といえば、「つりにいーきたーい」と、ことあるごとに、ちょいちょいアピールしてきます。
悩める週末の昼下がり、僕はふと、ある「風景」を思い出しました。
地元の千葉にUターンしたばかりのころ、息子に海を見せてあげようと立ち寄った海岸に、結構な数の釣り人がいたような気がしたのです。その時は、あんまり釣れてる印象がなかったのですが、お散歩をかねて、息子と一緒に行ってみることにしました。

釣り人でにぎわう「検見川の浜」の突堤。
千葉県千葉市の稲毛海浜公園にある「検見川の浜」に着きました。記憶通りの場所にあった突堤には、予想以上に大勢の釣り人がいます。中心はファミリー層。サビキのほか、投げ釣りをしている人も多いようです。
突堤の入り口付近で、ファミリー連れがサビキ釣りをしていました。カゴにエサ(アミ)を入れて海面におろすと、小さな魚が巨大な群れをなして食い付いています。
「何が釣れますか?」と聞くと、「イワシです」とおかあさん釣り人が教えてくれました。
入れ食いの状態なので、エサなしでも釣れるそうです。
この様子を食い入るように見つめていた息子の感情が爆発します。
「ぼくも、つーりたーい!」
やる気スイッチが「TURBO」に入った、われらが釣り師をなだめつつ、突堤の先を目指します。
「どれくらい釣れましたか?」
今度は、釣り道具を片付けていた初老の男性に聞き込みです。11時から夕方まで粘って、釣果はイワシが70尾くらいとのこと。かなり、いいじゃないですか。
「イワシは群れで回ってるからさ。回ってきたらエサをゆすってやってさ。簡単に釣れるよ」
突堤の先端のほうには、ラインに何かの仕掛けを結んでいる、僕と同年代の男性釣り人がいました。
「何狙いですか?」と僕が聞くと、「私はスズキ狙いです」と教えてくれました。釣れる確率は、何度か来て1回釣れるかどうか。「やっぱり難しいんですね」と僕はいいます。それでも、釣り人はニコニコと楽しそうです。
「うちの子どもたちは、向こうのほうでイワシを釣っていますよ」
そんなこんなでロケハン(?)終了。
この突堤は、なんだかとってもよさそうです。
サビキ・リベンジ!
というわけで翌日の朝、僕らは再び稲毛海浜公園にやって来ました。
今度は、竿もリールもエサも持っています。ターゲットはイワシ。サビキ・リベンジです。

雄たけびを上げながら突堤を目指して駆ける息子。
わが隊の到着は9時前。すでに大勢の釣り人が釣りを楽しんでいます。

ざっと見たところ、釣れているようだ。
いそいそと、僕らも準備に取り掛かります。8月の無謀な「サビキ大作戦」の経験が生かされたのか、思っていたよりスムーズにセッティング完了。

竿、リール、クーラーボックス、タックルケース、水汲みバケツ…。このごろ道具もそろい始めた。
仕掛けのカゴにアミを入れます。

ぼくがやるー!
イワシが釣れた!
それでは本日の1投目です。

釣れるかな~?
心配するいとまもなく、いきなりイワシがヒットします。

幸先よくダブルでスタート!
針を外してバケツに放します。

ぼくがやるー。
釣れます、釣れます。春のニジマス釣り以来、久々に釣れてます。

久しぶりの釣果にひと安心。
うちの息子は、釣れた魚を手でつかみたがります。

釣れるのは、体長12、13cmほどのカタクチイワシだ。
1回のキャストで1尾か2尾では効率が悪いと、仕掛けを海に垂らしたまま、しばらく時間をおいてみました。
すると、3尾のイワシが食い付いたものの、

仕掛けが絡んでしまいました。

針を食った状態のイワシを泳がせすぎると、こうなるのか?
ときどき、ラインがリールに絡まるトラブルに見舞われながらも、その後もイワシは釣れ続けました。

いーち、にーい…。数えたら全部で29尾あった。
イワシの群れを狙って、こんな魚も姿を見せてくれました。

いずれはこれも釣れるようになるのか?
付近の釣り人にお話をうかがったところ、この細長い魚はサヨリであることが判明しました。仕掛けを変えれば、釣れるようです。
「いつか釣ってみたいね」と、僕と息子は盛り上がります。
すると、わが家の隣で釣っていたファミリーのおかあさんが、「サヨリー! ぐあぁ~」と絶叫しています。サヨリがサビキ針に食い付いたものの、残念ながらばらしてしまったのです。
サヨリって、意外と釣れるものかもしれません。
おさかなたちの昼休み
時計の針が11時を回ってしばらくすると、とたんにイワシが釣れなくなりました。
エサの周りに群れは集まってくるけれど、一向に食い付きません。周囲の釣り人たちも、道具をしまって次々と帰っていきます。どうやらそろそろ潮時のようです。
「どうしてもっと、つれないの?」と息子。
「お魚さんもお昼休みかな」と僕。
海を見ながら、おにぎりを食べたあとは、おかたずけ。

突堤の内側はウインドサーフィンエリアでもあるため、投げ釣りは逆サイドでやるのがマナーらしい。
晩御飯はカタクチイワシの天ぷらです。お料理担当はおかあさん。

ウロコを指で簡単にはがしたあと、頭を落として肝を取り、天ぷらにした。

おいしいね。
あしたも、あしたのつぎのひも
「あしたもつりにいきたーい」
布団の上に横になり、絵本を読んで聞かせる僕に、息子がいいます。
たくさんイワシが釣れたことで、彼は自分の釣りに、ますます自信を深めたようです。
釣りモノと釣り場に悩む、僕と息子を救ってくれた思い出の海「検見川の浜」。あまったエサと仕掛けを持って、またここに戻ってこよう。
ぐるぐる回るイワシのように。

“Do you remember ?”…いつか息子に問いかけることがあるんだろうか。
<関連記事>