かつてベイトリールしか存在しなかった時代、圧倒的に軽いルアーが投げられるスピニングリールの登場は衝撃的だったに違い有りません。その誕生から数10年。現代に至るに当たり、スピニングリールは進化を遂げているのでしょうか? Noと答える人は恐らくいないでしょう。しかしその進化は正しかったのでしょうか? その答えは、アブ・ガルシアの新型スピニングリール「ゼノン」が握っていました。


アブ・ガルシアが世に問う「軽い」スピニングリール追求の進化

ZENON(ゼノン)

画像: ZENON(ゼノン)

すでにその名称や画像が公開され、多くのテスターが次々に動画やブログで拡散、情報が錯綜している感のあるスピニングリールのゼノン

それはまごうこと無く、アブ・ガルシアが2021年に発売する予定の目玉中の目玉リールです。

モデル見込み自重(g)ギア比最大ドラグ力(kg)最大ライン巻取り長
(cm/ハンドル1回転)
ボール
/ローラーベアリング
ラインキャパシティ
(ナイロン・フロロ/PE)
1000S1425.236510/12lb-100m/0.4号-90m
2000S1455.236910/14lb-100m/0.6号-100m
2000SH1456.238210/14lb-100m/0.6号-100m
2500S1485.257410/16lb-100m/0.8号-150m
2500SH1486.258710/16lb-100m/0.8号-150m
2500MSH1486.258710/18lb-170m/2号-150m
3000SH1656.259310/18lb-110m/1.2号-150m
3000MSH1636.259310/116lb-150m/2号-220m
4000SH1706.2510010/116lb-100m/2号-220m
caption

その前衛的なデザイン、そして驚くべき軽さが、すでに大きな話題を呼んでいます。

実際、インフルエンサーたちが紹介するゼノンのインプレッションを見てみると、軽い、頑丈、etc…。誤解を恐れずに言うのであれば、そこにあるのはすでに使い回されたウリ文句の羅列ばかり。

もちろん事実として、従来モデルに比べてそういった点が優れていることは間違いなく、素晴らしいことです。

しかし、です。

ことゼノンにおいては、軽いや頑丈といった特徴は、その道程こそを知ってほしいのです。

スピニングリールの歴史を紐解き、正当進化を具現化させたアブ・ガルシアのゼノン。

その全貌を、ピュア・フィッシング・ジャパンの開発担当・石川さんが語ってくれました。

稀代の名作からの邪進化?

石川「スピニングリールの進化の是非。それを知るためのヒントはかつてのリールにありました。アブのカーディナル33。1976年に発売されたリールです」

画像1: 稀代の名作からの邪進化?

カーディナル33といえば、往年のアングラーが憧れた稀代の名作的スピニングリール。復刻版が登場するなど、今もなおその人気は衰えません。

石川「これは44年前に登場したリールなのですが、その設計はすでにコンパクトで軽量を実現していたのです。その一方、相反する性能としての強度面や、ローターの内側にスプールが入るインスプールタイプゆえのトラブルといった問題も抱えていました。その欠点をカバーするための進化こそが、現在のスピニングリールに繋がっているんです。現代のスピニングリールの例えとして、4年前から発売しているレボMGXのスプールを見てください」

画像2: 稀代の名作からの邪進化?

石川「ローターに被せるような形でスプールがつくタイプのアウトスプールになっています。この方式の場合、ライントラブルは減りますが、かぶせたスプールのさらに外側にベイルアームが必要となるので、必然的にリールは大型化してしまったんです」

確かに現在では、ほぼすべてのリールがアウトスプール化しているといっても過言ではないでしょう。

さらにもうひとつ、進化に伴ってほとんどのスピニングリールが同様の特徴を持つようになった点があるそうです。

画像3: 稀代の名作からの邪進化?

石川「スピニングリールを分解したことがある方はわかると思うのですが、メインシャフトに重なる形で配置されているフェイスギアというギアがあります。これはメインシャフトの片側のみに配置されていて、反対側にはありません。つまりフェイスギアが入っていない側に空洞が広がっていると言えるんです。であるにも関わらず、リールのボディは左右対称が一般的なんですよ」

40年以上前、軽くてコンパクトという魅力をすでにもっていたスピニングリールですが、当時の欠点を解決するための進化の中で、それまでにあった良さを失っていったのでした。

だからこそ、

強度を犠牲にせず軽量化を目指す。

アブ・ガルシアが挑んだのは、スピングリールの正当進化だったのです。

軽さと強さの秘密

無駄を排除し最適化するという本当の意味

石川「リールを軽くする方法としては、軽い素材を使用し、その素材を薄く、細くしていくのもひとつの手です」

でもゼノンはそういった方法ではなく、もっと根本的な手法をとったのです。

石川「簡単に言えば、中の空気を抜いていく。無駄なスペースを取り除いていくわけです」

言葉にすると簡単です。ですが、アブ・ガルシアが行ったのは、現代スピングリールの焼き直しではなく、稀代の名作からの正当進化なのです。

石川「まず、ボディは左右非対称にしました。先述したフェイスギアが収まる側だけが出っ張って、その反対はフラットに近い形状になっています」

画像: ゼノン 左右非対称ボディ(左)とMGX(右)のボディ。

ゼノン 左右非対称ボディ(左)とMGX(右)のボディ。

その他にも、内部構造から省スペース化を見直し、外見が大きく変わるほどのコンパクト化にたどり着きました。

石川「ボディ本体のコンパクト化にともない、スプールの形状も従来のデザインから大きく変更しています。ラインが巻かれる部分の下側をスカートと呼ぶのですが、この部分を下に向かって細くなる形状で省スペース化しつつ、フィン状のパーツで形作ることで軽量化を図っています」

画像: ゼノン エアフィンスプール(左)とMGX(右)のスプール。

ゼノン エアフィンスプール(左)とMGX(右)のスプール。

既存の形状に穴を開けて軽くするのがブランキングというのであれば、最早まったく新しい設計のスプールと言ってしまえるでしょう。

石川「そしてスプール形状の新設に伴い、ローターの形状も変更し、軽量化しています。これはリール全体の軽量化だけでなく、慣性モーメントも減らし、巻心地の向上に貢献しています」

画像: ゼノン C6-Vローター(左)とMGX(右)のローター。

ゼノン C6-Vローター(左)とMGX(右)のローター。

慣性モーメントがもたらす巻心地の向上

慣性モーメントを簡単に表現すると、物体を動かす際に必要な力や、逆に止める際に必要な力の大きさのようなものといえます。

例えば、軽自動車と大型トラックのタイヤをイメージしてください。

軽自動車のタイヤであれば、転がすのも簡単だし、止めるのも簡単ですよね?

一方、大型トラックのタイヤは転がすのも大きな力がいるし、転がっているのを止めよとするのにも相当な負担がかかることが想像できます。

このタイヤの例えの前者が慣性モーメントが低いということを表します。

つまりローターの慣性モーメントが低いということは、リーリングの始めや終わりに必要な力が少なくなり、快適でスムーズな巻心地に直結するというわけです。

石川「他にもハンドルアームの形状も見直し、従来の円筒形から変更しています。これにより、強度を損なうこと無く、軽量することができました」

画像: ゼノン(左)とMGX(右)のハンドル。

ゼノン(左)とMGX(右)のハンドル。

つまりゼノンは、これまでのスピニングリールの常識を見つめ直し、言わば数10年分にも及ぶ超軽量化を実現しているわけなのです。

常識を疑ったからこその高強度

石川「根本から見直した設計により、ボディ内部の無駄な空間はとことん減らしています」

画像: 左右非対称ボディ。

左右非対称ボディ。

石川「ですが、内蔵しているパーツは従来のリールと同じサイズのものを使用しているんです。小さくしたり薄くしたりしていない。だからリールの外観はコンパクトになっていても、内側の強さは変わっていないんです

またコンパクト化による恩恵は、ボディ素材にも及んでおり、全体的な強度も高く仕上がっているとのこと。

石川「形状そのものを見直した結果、ボディ素材を不必要に軽くする必要もなくなりました

画像: 常識を疑ったからこその高強度

石川「つまり、高い強度を保ったままでコンパクト化できている。実際、青木大介さんや河辺裕和さん、小森嗣彦さんといったアブ・ガルシアのテスターに触ってもらったところ、真っ先に帰ってきた感想が頑丈であるという趣旨のものでしたね」



ゼノンの立ち位置と価格帯…?

ここまで紹介してきたのは、言わばゼノンの誕生秘話。そして本質的な部分のみでした。

そうです。

ゼノンが凄まじいリールであるという点はこれだけではありません。

新開発のラインクリップやシータシリーズで好評のフリクションフリーメインシャフトウォーターシールドカーボンマトリックスドラグ…

細部に至るまで、アブ・ガルシアの技術力が結集しているのです。

それもそのはず。

ゼノンはアブ・ガルシアのレボシリーズよりも更に上のグレード。つまりハイエンドモデルに君臨するからなんです!

そうなるとやはり気になるのはその値段。

はっきりとした答えは聞くことができませんでしたが、石川さんはこう答えてくれました。

石川「アブ・ガルシアのコンセプトとしては、リールはあくまでも釣りの道具であって、工芸品ではありません。だからこそ頑丈である必要があるし、使えば傷がつくのは当然。であればこそ、リールひとつに6万円以上かかるということは無いでしょうね」

最高の道具を、その価値に臆すること無く使って釣りを楽しんでほしい。そんなアブ・ガルシアの心意気は、多くのアングラーに届くことでしょう。

かつてスピニングリールの登場によって業界に走った衝撃。

その衝撃が今一度走るとすれば、2021年に来る、ゼノンの登場に他ならないのではないでしょうか?

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