着水後の立ち上がりをよくするための後方重心
栗田淳さんがジュンミノーを立ち上げたのは、1999年の終わり頃。当時は、友人のスポーツ店や知人のホームページを間借りして作品を販売していたそうだ。
そんな栗田さんが渓流用ミノーを作る上で最も意識しているのが〝着水後のワンアクション(泳ぎ出しの素早さ)〟である。そのため、渓流用のミノーのウエイト設定は基本的に後方重心。着水直後にテイルから落ち、即座にロッドアクションを加えると、そのまま頭を上げるようにしてミノーがアクションを開始するイメージだ。
この渓流用ミノーのウエイト設定やバランスには、幼少期に経験したハヤのミャク釣りの経験が活かされているのだという。
ミノーを魚の着き場に着水させて魚の注意を引き、そのまま流れに乗せてナチュラルアピールで食わせる。そんなテクニックに最適なミノーだという。エサ釣りのテクニックををルアーフィッシングに応用したユニークな発想だ。
桂川とジュンミノー
栗田さんが初めて作品を置かせてもらったショップが、山梨県・桂川のアンテナショップ「プロショップオノ」である。
「プロショップオノさんにミノーを置かせてもらうようになってから、桂川水系にはよく通うようになりました。さらに、それまでアップストリームの釣りしかしてこなかった僕がダウンストリームの釣りを覚えたのも、この川での釣りがきっかけなんです」。
栗田さんの言うダウンストリームの釣りとは、〝キャストしてポイントまで到達させたらミノーを定位させてじっくり誘い出す〟というものである。桂川特有の流れ、そして魚の性質に合わせたダウンの釣り。これらが反映されたミノーがSD(シンキングディープ)モデルである。
「リップは潜行させるためだけのものではなく、その場でボディを定位させるための抵抗板の役割も果たす。イメージでバランスを設定しています」
本流用ミノーへの情熱
近年、栗田さんは本流ミノーというジャンルにも力を入れている。中でも注目したいのがダイビングリップレスというサツキマス用のフローティングミノーだ。
「これは盛期の本流をイメージした表層用ミノーです。サツキマスは底にいても表層で食ってくる魚。そんなシチュエーションに合う設定を目指し、開発しました」。
ダイビングリップレスシリーズは、揖斐川や長良川などの岐阜県のサツキマスフィールドにてテストを行い、数多くの釣果を得ているモデルである。
栗田さんは「人に教わるのが苦手なんです」と照れ笑いを浮かべた。幼少期のミャク釣りに始まり、桂川や岐阜のサツキマスフィールドなど、様々な要素がミックスされ彼の製品の中に息づいている。独自の釣り。実戦に基づいた画期的な理論。加速するジュンミノーから今後も目が離せない。
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