後編は「トラウト用バルサミノーが出来るまで」
岐阜県美濃加茂市に拠点を構えるハンドメイドルアーメーカー「シンドラー」。代表兼ビルダーを務めるのは、業界屈指のアイデアマンでもある酒向智史さんだ。
前回の記事では工房内部を拝見させてもらったが、今回は実際にバルサミノーが完成するまでの工程を紹介していきたい。
<前編はコチラ>
トラウトルアーというジャンルにおいて、ハンドメイド、つまりお手製のルアーの人気は高い。
中でも最もポピュラーで人気の高いアイテムがバルサ素材を採用したミノーであろう。設計に始まり、素材の切り出しや成形、サンディングやコーティングなど数多くの工程を経て世に送り出される作品には、やはり“手仕事ならではの”魅力がある。
そんなバルサミノーの魅力に迫るべく、今回はビルダーの工房に潜入してみることにした。
お邪魔したのは、岐阜県美濃加茂市に拠点を構えるハンドメイドルアーメーカー…
①設計・型取り
バルサミノーのラフスケッチを描き、それをプラ板に写す。ハサミで切り取れば「型」の完成だ。プラ板には0.5㎜程度の塩ビ板を使用した。
②バルサの加工(切り出し&成型)
バルサを「型」の形状に合わせて切り出し左右のボディを貼り合わせる。その後、カッターを使って形を整えていく。最初は粗く削り、徐々に滑らかに仕上げていく。
③サンディング仕上げ
サンディング(ヤスリがけ)では、サンドペーパーの目を徐々に細かくしていく。まずは#240から始めて、#400、#600という順番で使用した。最後に使い古しの歯ブラシで削りカスの掃除も行う。
④ワイヤー成形&ウエイト入れ
内部ワイヤーをペンチで曲げて加工し、ウエイトと共に接着。ワイヤーをバルサにあてて出来た溝をルーターで削ることで、接着もスムーズになる
ウエイトホールも同様に位置を決めてルーターで溝を削る。
⑤下地コーティング
1液性のウレタンに薄め液を混ぜたものをボディにしっかり馴染ませる工程。ウレタンは小さなボトルなどに小分けにして使うことで、湿度による硬化を防げる。
ウレタンで下地コーティングを施したバルサボディ。
⑥サンディング
ウレタンを吸ったボディの毛羽立ちを滑らかにしていく。この工程では#240のサンドペーパーを使用。最後にカッターの刃先を使ってバリを取り除いていく。
⑦下地コーティング+上地コーティング(×2回)
さらにコーティング+サンディングを行えば「下地コーティング」は完了するが、この後、「ウレタン原液を使用した「上地コーティング+サンディング」を行う。
⑧フェイス塗り+2回のコーティング&アルミ貼り
頭部をマジックで塗りつぶし(シンドラーオリジナル)、強度を出すためのコーティングを2回行う。ボディと頭部に分けて成型したアルミを貼る。
⑨段差を消してからコーティング
千枚通しなどでアルミとボディをならし瞬間接着剤で段差を埋める(シンドラーオリジナル)。その後ウレタン原液を利用して、2回程度のコーティングとサンディングを行う。
⑩カラーリング
塗装の工程では、パーマークのマスキングを製作してヤマメカラーに仕上げた。なお、作業を行う際には、塗料やシンナーを吸わないように防毒マスクと換気システムは必須。
⑪アイの取り付け&コーティング
アイの成型を行い、ボディに取り付けてから、最後のコーティングを3〜4回行う。アイは丸くくり抜いたアルミテープの上から黒い塗料とエポキシを垂らして成型した。
⑫最後のバリ取り
コーティング剤が乾いたら最後のバリ取りを行う。カッターの刃先を使って慎重に進めていきたい。ちなみに、コーティングの際にアイに溜まったダマを楊枝で取り除いておくと、バリ取りも楽になる。
⑬リップの成型&取り付け
リップの素材には水馴染みのよい基盤(サーキットボード)を採用。デザインを決めたら、プラ板で保存用の型を作り、型に合わせて基盤を切り取る。仮止めで位置を確認したら、瞬間接着剤と2液性のエポキシで仕上げる。
⑭スイムテスト
完成したら、実際にフィールドに繰り出しスイムテストを行う。「テストの際に重要なアイチューンは、調整がシビアで、見た目には分かりにくい曲がりでも、泳がせてみるとアクションが大きくなることもあります」。
実はここで紹介した工法はほんの一部(スミマセン!)。必要な道具や作り方の詳細は、ルアーマガジンリバーの連載ページ「リバーハンドメイド工房」にて紹介しているので興味のある型はぜひご一読を!(ルアーマガジンリバー2013年4月号〜10月号)工法は小誌連載用に構成したものであり、実際のシンドラー製品とは工程が多少異なるが、オリジナリティ溢れる酒向さん工法や技は、ハンドメイドビギナー必見の内容だ!
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