さて、前回は重心移動システムがどれくらい飛距離アップに寄与しているかというデータと、ちょこちょこっと誕生の歴史について語らせていただきました。
今回は、世紀の発明といえるこの「重心移動システム」において、DAIWAのアプローチはどうだったのか??をHFE(自称ハイパーフィッシングエディター)目線で語らせて下さい。
はい。HFEのフカポンです。もふもふ釣り場ネコの原稿でも書こうと思ったのですが、また飛び道具か?と訝しげな顔をされたので、一転、こんなマジメなお話を…。
ルアーには様々な叡智が詰め込まれていることは、釣り人なら誰もが認めるところですよネ。現在発売されているルアーに求められている性能はいろいろとありますが、 飛距離を出して、遠くの魚を狙う 性能というのは、ルアーに内包すべきギミックとしては優先度の高いモノ。
そんなスキルをルアーに持たせちゃったのが、これからお話す…
K-TENの爆発的ヒットで一躍脚光を浴びた重心移動システム
このエポックメイキングな発明をタックルハウス社の二宮正樹さんがルアーに組み込み、一躍、
K-TENは時のルアーとなりました。しかぁし、各社このまま指を加えてこの市場を放置しておくわけにはいきません。
かといって、K-TENシステムをフルコピーして自社のルアーとして発売するわけにもいかないのが市場原理、競争市場ってもんであります。重心移動システムという概念そのものには特許はないものの、キモといえるウエイトをマグネットで固定するシステム(K−TENシステム)には特許が申請されていました。
特許は回避しないとね。コストかかりますからね。使用権を買うなんてことももちろん選択肢にはあると思いますが、そこをくぐり抜けて作るってのも技術者の腕の見せどころ。でも、まぁ、最初のアイデアはリスペクト(大事なことなので今回も言いました)。
重心移動システムの根本自体は各社とも利用したいものの、まっとうな技術者ならば、丸パクリやん!と突っ込まれることをヨシとしません。DAIWAの当時の技術者もそう考えたのではないでしょうか。
誕生したサイレントウエイトオシレートシステム
そこで生まれてきたのがDAIWAの“サイレントウエイトオシレートシステム”。という重心移動機構でした。K-TENはウエイトボールがレールのようにルアー内部に設けられたルームを移動して重心移動を実現していたのに対し、このシステムはルアーのボディ内にワイヤーを通し、ウエイトボールに穴を空けて前後に移動させるというものでした。
ぐぅ、これもなかなか理に叶ったシステムだなぁと感心するばかり。オリジナルのシステムは偉大ですしリスペクト!ですが、敢えて、比べての利点を敢えて考えてみます。
まず、ボディ構造を簡単にできますよね。そして、ボディ内部の体積を増やせます。ボディ構造が簡単!は単純にコスト減に寄与すると思いますし、体積増えたはメリット面では、ルアーアクションのキレが良くなる方向に働く気がします。
このシステムが採用されたショアラインシャイナーR55は爆発的ヒットを記録し、多くの人に愛されるルアーとなったと聞きます。
進化するサイレントウエイトシステム
さて、DAIWAは更なる改良を加えていきます。この課程もおっかけていくとおもしろいのですが、こりゃぁ、イケてるぜと思える工夫がボール状のウエイトを円筒状のウエイトに変化させたことです。
ボール状→円筒状にウエイトを変化させたときに物理的にどうなるかを考察。
円筒状になるとウエイトはボールに比べて前後に分散化、低重心化します。そして、円筒状にすることでルアーの上下スペースを有効に使えることがわかります。
より細身のルアーを作ることが可能になった、ということですね。
添付した写真を見て頂ければわかると思いますが、より細身でベイトライクなシルエットを実現したわけです。より“リアル”であることは、武器にもなりますしデメリットにもなります。が、ルアーのバリエーションが増えること自体はプラスなわけですから、この工夫も凄いなぁと関心するばかりです。
そしてこの円筒化されたウエイトシステムにより、より細身で長身のミノーをDAIWAは開発しました。また、その利点を最大限に活かしてるなと思えるデザインが、2のサイレントウエイトダブルオシレートシステムです。
低重心で省スペースになるという利点をフルに利用し、2つのオシレートシステムを内包するという工夫がなされています。コレは凄いなぁと素直に思います。こういったアイデアが出て来るエンジニアの方、本当に尊敬しますね!
重心移動システムで良く語られる、着水後からルアーが正しくアクションするまでのタイムラグが少なくなるわけです。シングルで長くウエイトの移動距離をとっちゃうと、このラグが長くなるんだなぁというのは構造を見ていれば想像できますよね。
ということで、今回はここまで。日本人って与えられたベースを工夫してカタチにしていくのがホント得意なんだなぁとつくづく思いました。
まだまだ色んな形の重心移動システムがありますので、機会をみてお伝えできればと思っています。
本誌記事のほうも、ぜひご覧になってみてくださいね。
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