タイトル奪還に燃える青木大介と福島健【国内最高峰バストーナメント2017TOP50 勝利の栄冠に最も近い男たち-2】



気づけば毎年上位に「彼ら」がいる・・・。強豪2選手による舌戦!?

2017TOP50プレビューの第2回目は、強豪選手として知られる青木大介、福島健の両選手に今季タイトル奪還へ向けた意気込みを聞いた。

ところで前回、北大祐&五十嵐誠インタビューのラストでこんなコメントがあったことを覚えているだろうか。「強敵は?」との質問に対する五十嵐選手の答えがこれだ。

五十嵐選手「北さんと小森さんは、試合に対して用意周到型。僕とは別のタイプだと思っています。福島さんも型は異なりますが、また別。青木さんは僕と同じく、その場を見て感性で捕らえていくタイプだと思っています。本人に言ったら怒られそうですが(笑)。同じタイプの人に負けるのは本当に悔しい」

青木大介「ナメんなよ五十嵐! オマエとは違げぇーよ!!  …て、書いといてください(笑)」

あおき・だいすけ 2006マスターズイースタンA.O.Y.、07&12クラシックウィナー、08&15TOP50A.O.Y.、10&11&14エリート5ウィナー、14&15オールスターウィナーと、ここに書ききれないほどの華々しい成績を誇るスーパースター。ボートを駆使したプロトーナメントの最前線で活躍しながらも、ルアマガ誌上の人気コンテンツ・陸王でも12&15と2度ものチャンプに立ち、比類なき強さを魅せる時代の寵児だ。2017TOP50ゼッケンNo.4 スポンサー:ゲーリーインターナショナル、ピュアフィッシングジャパン、ティムコ、フィナ、湖波、DSTYLE 1982年10月26日生まれ(34歳)、神奈川県出身・山梨県在住。株式会社DSTYLE代表。

場外乱闘も辞さない?過激なコメントで始まったのは青木大介選手のインタビュー。

とはいえ、自身でも五十嵐選手と試合の運び方は近似していること、そして強敵であることも認めているようだ。

青木選手(以下青木)「釣りをしながら、フィールドから情報を感じ取って、釣り方とルアーを探していくという点では、タイプとしては似ているかもしれませんね。強敵? そうですね、五十嵐を含むアノ4人です」

昨季A.O.Y.の北、2位の五十嵐、そして3位の小森嗣彦という年間4位だった自身の上に立った3選手に加え、もう一人は順位の数字としては若干差を開くが20位の福島健の4選手。前回の北&五十嵐と同じメンバーを強敵として選んだ。

青木「結局、ひとことで言うと、その4人は『隙がない選手』ですね。確かに強い選手はたくさんいるんですが、年間5戦のトーナメントとなると、あのフィールドで強いけど、このフィールドではダメだ…という得意不得意があると(A.O.Y.レースに)絡めない」

青木選手の最高峰戦における年間成績を振り返ると、2004年にエコワールドプロ(*1)として昇格以降、2005年28位、2006年32位とTOP50の洗礼を受けるも、2007年以降は5・1・4・2・2・14・4・5・1・4位と、この10年間は実に4.2位という超高値安定のハイキャリア。しかし、昨季は強敵と目する3選手に見下ろされる自身の年間順位に苛立ちは隠せない。はたして秘策はあるのか。

*1:JB最高峰戦は2007年に「ワールドプロシリーズ」の名称でスタート。2005年以降は現在の「TOP50シリーズ」として開催されているが2004年のみ、その前年の上位を対象としたフルタックルのワールドプロ、新人を中心に現TOP50同様のエコタックルルールで競うエコワールドプロの2カテゴリーで同場所&同時開催された。

青木大介「進化の年。自分の試合運びの型を、良い意味で崩していく」

ジャッカルとの共同開発で大きな話題を呼んだDSTYLEの2017新作「RESERVE(レゼルブ)」。青木選手が「勝つため」の道具を作るDSTYLEだけに、今季のキーにもなり得る。「タイミングが合えば間違いない」。勝利はもはやリザーブしたようなものだ。

青木「10年以上トーナメントを続けてきて、戦い方のパターンはある程度完成してきた。それがもちろん、良い方向に働く時も悪い方向の時もある。その悪いほうが、去年の成績に影響している。噛み合っていなかった…」

2016年は年間4位。けっして「悪い」とは言えない好成績だが、青木選手はそこに価値を微塵も見出していない。むしろ不満さえ感じているようだった。

青木「(正解の)芯を捕らえていなかった。10が正解だとしたら、いつも5くらいで試合が続いて、それが積み重なって、たまたま4位になっただけ。自分としては実にもどかしい。今までなら自分の型だけで何とかなっていた部分もあった…けど、それだけじゃもうさすがにキツい。自分が進化していかないと、ヤツらに置いていかれる…」

想定外に進化を続ける4人の「ヤツら」。彼らに言わせれば、その「ヤツら」にむろん青木選手も含まれるのは言うまでもない。

青木「釣りって、去年と今年では全く別の物になる。道具が進化することはもちろん、魚も進化しているから、そこに自分が合わせていかなければ勝てない。凝り固まらないことが大切だと思う」

今季の全5戦で注目の1戦をと尋ねると「開幕戦の福岡・遠賀川」を挙げてきた青木選手だが、「相性はあまり良くない…」と歯切れが悪い。

青木「2年前(2015年第1戦)は予選30位のギリギリで、3日目の決勝に出場して、結果は27位。この年は最後でマクってA.O.Y.を獲りましたけど、通常じゃあり得ない初戦の順位。遠賀川をどう克服していくか。そこが今季のカギになる」

全方向に死角なしかのように思える青木選手だが、意外にも弱みを見せた…。が、しかし! 記者は騙されない。これはむしろ青木選手のポーズなのかもしれないと勘ぐった。

なぜなら、かつて「スモールマウスは苦手で…」と言いながらも、軽々と栄冠をさらっていった2008第3戦野尻湖戦を忘れない。その試合こそ、先に自身が言う当時の「進化」の1つだったのかもしれない。底知れぬ強さを魅せる青木選手。開幕戦から目が離せそうにない。



福島健「若手に強敵として迎えられるのは、プロとして実に光栄なこと」

ふくしま・けん 2001年にJB日本シリーズ琵琶湖第1戦で叩き出したのは、未だ破れ得ぬJB最重量レコードの13130グラム(5尾)。サイトフィッシングの天才として名を馳せ、2003年にワールドプロシリーズ(現TOP50)に昇格して以降もなお常に上位を席巻中。2003クラシックウィナー、2011TOP50A.O.Y.、2005&2016マスターズA.O.Y.ほか。FACT(EG)プロデューサー。2017TOP50ゼッケンNo.20 スポンサー:エバーグリーンインターナショナル、オフィスZPI、がまかつ、サイトマスター、STRUT 1978年2月21日生まれ(39歳)、京都府出身。

底知れぬ強さ、という意味では、この選手を抜きにして語れない。福島健選手、その人だ。

2003年から最高峰シリーズに参戦しながらも、下部カテゴリーのマスターズシリーズにもダブルエントリーしておよそ20年。

昨季こそTOP50では年間20位だが、マスターズでは2度目のA.O.Y.を獲得。最高峰シリーズを目指して3ケタの出場選手がひしめき合う2ndカテゴリーは、TOP50とはまた別の異空間がある。

福島選手(以下福島)「戦い方が全然別ですね。僕にとっては、どちらも楽しい。TOP50が上のカテゴリーだから、マスターズが下だからとか、そういう考え方で試合に臨んではいない」

かつて2011年、TOP50最終戦を残して暫定首位で迎えた際、8ポイント差で猛追する2位の青木選手にどう立ち向かうのかと尋ねると「年間チャンプは結果。終わってから考えたい」と語った福島選手。

実はそのインタビューを敢行したのは、その年のマスターズ最終戦を暫定1位で控えていた時のこと。結果的にマスターズは2位で終えたが、TOP50でA.O.Y.の栄冠を取りこぼすことはなかった。安打製造機、バス釣りロボットと呼ばれる所以はそんなところにもある。

福島「強敵に挙げてくれましたか・・・。僕(39歳)からしたら若い選手たち(北34歳、五十嵐32歳、青木34歳)なので、そう見てもらえるってことはプロとして本当にうれしいですね。強い選手として小森さん(42歳)と青木は今までずっと注目していましたけど、そこに北と五十嵐が加わってきたという印象です。去年の1位と2位はここ数年で、雰囲気というかオーラがかなり変わってきましたね。彼らを見ていると、僕もあんな時があったなー、歳とったんかなーと思いますね(笑)」

オーラとは何か。身体から発せられる目に見えないエネルギーのようなもの…と解釈するが、そこにこそ福島選手は強いこだわりを見せている。

福島健「シングル順位じゃ意味がない。目指すのはその先にある頂点」

昨季の第1戦早明浦ダム戦で第5位入賞時の使用タックル。この地との相性は良く、2戦連続3戦目の表彰台を獲得。2013第1戦で3位入賞を果たした際にシークレットとして使用していた「ゴリ系ワーム」が、写真のFACTスカルピン(EG)。自作フットボール3/8と組み合わせ、ヘラクレスFACT HFAC-67MHST(EG)で「タテのクランクベイト」的に使用したという。「毎年開幕戦が大事。走り抜けるのか、つまづくのかを決める大事な一戦になる」。今季はいかに・・・

福島「トーナメントって、どんなにカッコイイことを言っても、結局、人と競い合ってることは事実。僕は、その人の釣り方より、やっぱり雰囲気とかオーラを見るんです。(波に)乗ってるか、乗ってないか、そこが最も大切。釣りの技術はTOP50ともなれば誰しもが持っているもの。何より『勢い』が大切なんですよ。そういう選手を見ていると、本当に刺激になりますね」

福島選手が口にした4選手に限らず、その場その場で強い選手の言動は福島選手のパワーの源、発奮材料になるという。試合の現場で必要以上に語らず、マイペースを貫いているかのように見えるが、脳内では激しくCPUがデータを処理していた。実に興味深い事実だ。

ここまでに5選手の名が挙がったが、昨季のトップ5に唯一入っていないのが福島選手で、結果は20位。翌年の残留権利を獲得できる上位30位に入る好成績ではあるものの、上位常連と目されるだけにいささか物足りなさを感じる。

福島「昨季は第4戦終了時点での暫定順位は11位。最終戦で守った釣りをするのも1つの手だったとは思う。ただ僕は平凡な成績(5・20・33・16位)が続いている中で、そのままシングル順位に留まっても意味がないと考えた。そこで賭けに出ることにした。結果的に順位をガクンと落とすことになりましたけど、それをわかっていて挑んだ勝負。次に活かせる最終戦だった」

狙っていたのは間違いなく表彰台の頂点。単純に、ミスをしたのではない。一か八か、伸るか反るか。その先にある未知なる自身を探るべく挑んだ結果だった。

福島「30代は釣りが上手くなる10年だと思う。まだ見ぬ40代になった時、自分がどうすべきかを考えるようになった。今まで吸収してきた様々な経験を、頭をどう使っていくか」

バスフィッシングのピークパフォーマンスは身も心も脂が乗った30代にあると考える人も多い。目に見えない衰えは確実にやってくるであろうが、対抗策に抜かりはない。

来季にはいよいよ40歳の大台を迎える福島選手。30代最後の年に、またA.O.Y.という花を咲かせる準備はできている。

次回「その3」にTOP50史上最強プロがいよいよ登場!!

青木、福島の両選手が狙うのは今季も言うまでもなく、A.O.Y.のタイトルだ。

福島「優勝したいですね。テクニック云々より勢いに乗ることが大事。そうすればきっと年間(=A.O.Y.)という結果も付いてくる」

青木「2回獲ってるんで、次は3回目を獲りたいですね。えぇ、3回獲っている人(=小森嗣彦選手)がいるんでね…。アノ人が獲れるんだから、オレが獲れないことはないですよ。いいですよ、書いちゃってください(笑)」

青木選手に宣戦布告されたのは、現時点でTOP50最多A.O.Y.獲得回数を誇る小森嗣彦選手。次回は、そのご本人にご登場いただくことにしよう。

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※JBTOP50 2017年のスケジュールについてはJB/NBC公式サイトを参照してください。


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