アングラーの闘志に火を付ける伝説の管理釣り場”朝霞ガーデン”(埼玉県)。トラウトは確実にいる。しかも大量に。しかしここの魚たちは一筋縄にはいかない。イメージ通りには釣れない。そんな厳しい環境で鍛え上げられたノリーズプロスタッフ・井上太一氏の”超人的”釣りスタイルを追った。
アングラーの闘志に火を付ける伝説の管理釣り場!
埼玉県・朝霞ガーデン。
このエリアには、ボトムまでキレイに見渡せる超クリアウォーターのポンドが存在している。しかも放流量が多く、いつ訪れてもポンド内には、悠然と泳ぐ大量のトラウトを視認することができる。
トラウトの数も多い…。水質も抜群…。だからこそ、ルアーを投げればすぐに釣れる…。初めて訪れたアングラーは誰でもそう思う。それほど朝霞ガーデンのコンディションは見事に調整されている。
だが、朝霞ガーデンのクリアウォーターポンドほど、見た目と現実にギャップがあるエリアも珍しいと言える。
そうなのだ、ここのトラウトたちは一筋縄にはいかない。魚は確実に居る、しかも大量に。その上、水質もいい…。魚のコンディションも抜群だ。だが、イメージ通りには釣れない。そんな現実が、アングラーの闘志に火を付ける。
そうなのだ、朝霞ガーデンは数多くの超人的エリアアングラーを育て上げた、伝説の管理釣り場として知られている。
その代表格がノリーズプロスタッフの井上太一さん。
クリアウォーターで繰り広げられる究極のエリアゲーム
クリアウォーターという条件は、キャストしたルアーに対するトラウトの反応を、アングラー側がダイレクトに確認できる。だが、トラウト側にとってもルアーの詳細情報を把握しやすい条件といえる。
魚を釣りたい「アングラー」。そして、釣られたくない「魚」。その二者が持ち得る限りの情報を開示した上で「釣る」「釣られる」の極限のゲームを展開するのが、クリアウォーター(サイトゲーム)におけるエリアゲームの神髄なのだ。
そこには、「ミリ」「感覚」「イメージ」という言葉が頻繁に登場する。エリアゲームのひとつの極限世界なのである。
そして、その極限世界こそが、井上太一さんが得意とするスタイルなのだ。
トラウトの単位を体内に宿した男…井上太一
例えば、体長20センチのトラウトの体高はどれくらいあるだろうか? 個体差はあるが、おそらく数センチ程度と予測できる。
その、体高数センチのトラウトが定位している目の前に、リトリーブ中のマイクロスプーン(アンダー1グラムのスプーン)が登場したとして、そのスプーンが上下のどちらかの方向に3ミリ動いたと仮定する。
その動きは、体高数センチのトラウトにとっては、明確な変化として捉えられる。その変化が「吉」と出るときもあれば「凶」と出るときもある。
簡単に言うと、井上さんはその数ミリの動きをコントロールして、極限状態のトラウトと対自しているのだ。
井上さんの体内メモリは、人間界のメモリではなく、トラウト基準のメモリに無意識に置き換えられている。そのため井上さんの釣りには「ミリ」という単位が頻繁に登場する。
ルアーの動きを見続けた結果、何をしても口を使ってくれないトラウトに口を使わせるとき、イレギュラーな動きが「数センチ」という単位では刺激が強すぎることがある。
人間から見たら、変化がほぼ把握できない数ミリ単位の動きの変化…。その単位だからこそトラウトの警戒心に抵触することなく、かつ一瞬だけ、トラウトにスイッチを入れることが可能となる。そうした一瞬を見逃さずにフッキングに繋げる。それが井上さんの得意な釣りスタイルなのだ。
では…具体的にラインで繋がった、数メートル先をゆっくりと泳ぐマイクロスプーンの軌道を数ミリ変えるために、アングラー側にできることは何か? もちろん、視覚で確認できるほどロッドティップを上下させてしまうと、当然のようにミリという単位はコントロールできない。その段階で単位はセンチに昇格してしまう。
井上さんは自分でも現実的にミリ単位のレンジをコトンロールできているのか? という確信はないという。
そのレベルの繊細なコントロールはイメージと連結していることが多いという。イメージの中で数ミリ下げる。その結果として体が無意識にシンクロして、結果として数メートル先のマイクロスプーンに何らかの影響を及ぼす。そして、その瞬間にフッキングに至る。
今まで口を使わなかったトラウトが口を使う現実。さらに、一般のアングラーにはなかなか釣れないトラウトが、井上さんだけに釣れる現実。
そして、その裏側が井上さんの膨大な経験に裏付けされたイメージに支えられている現実。
それこそが、サイトの表層ゲームの究極の到達点のひとつかも知れない。
ちなみに、これらの繊細な井上さんのゲームは。水面直下~約3センチ。そして、リトリーブ距離にして約15センチ以内というミニマムな世界で完結していることが多い。
つまり「15センチ以上の距離をトラウトがルアーを追わない」。という本当の意味での極限状態における世界の話なのだ。
そのスタイルの釣りをしているときの井上さんの姿は、ときに目の前のトラウトと、呼吸のリズムまでも合わせているように見えるほど、緊張感に包まれている。
まさに超人と呼ぶにふさわしい釣りスタイルだ。
※ちなみに朝霞ガーデンにはさまざま個性のポンドが存在しています。ビギナーでも釣りやすいマッディ系ポンドもあるのでご安心下さいませ。