かつて環境コンサル会社に勤めていたフクシゲが、そこで得た経験・知識をバス釣り界にフィードバック! もしかした釣りに使えるかもしれない、フィールドに関する情報をお届けする当連載。今回のテーマは「溶存酸素量」=水の中に溶け込んで存在している酸素の量について。
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溶存酸素量って何だ?
さて今回は、溶存酸素量についてのお話です。読んで字のごとく…、
水の中に溶け込んで存在している酸素の量
「溶け込んでいる」というのは、要するにたくさんの”H2O”分子の隙間に”O2“分子が挟まっているといった状況です。
魚にとっての水中の酸素量=人間にとっての空気中の酸素量
そんなイメージで大体OKだと思います。
そのため、魚類はこの溶け込んでいる酸素を水ごと口に入れ、エラを通り抜けるさせる事で、体内に酸素を取り入れているんです。
エラを使って水中の酸素で呼吸する生き物は、魚類の他にもエビや貝などがいます。
なお、カメやワニなんかの爬虫類は水辺にいるけど”肺呼吸”。両生類のカエルはオタマジャクシの時だけ”エラ呼吸”です。ちなみにドジョウは”腸呼吸”という荒ワザ(?)を駆使して空気呼吸ができますし、肺魚と呼ばれる魚達はその名の通り”肺呼吸”ができます。
もう何が何やら(^_^;)
水中の酸素は増減する
この溶存酸素量は、常に一定というわけではありません。たとえば魚がエラ呼吸をすれば、当然減って行きます。その一方で空気に触れれば、再び酸素が溶け込み、溶存酸素量も上昇します。そのため水中は基本的に、表層に行くほど酸素量が多く、底に近いほど少ないとされています。
狭い水槽やバケツに金魚なんかの魚を長時間入れていると、水面をパクパクしだします。これは水中の酸素量が低下したことで、表層の少しでも酸素量が増した水をエラに通したいからとる行動なのです。
また、地上と同様、植物(つまりウィード)の存在により酸素量が増減します。ウィードも地上の草木と同じように光合成をする一方で、呼吸を行うからです。
光合成とは、植物が二酸化炭素をとり込み、酸素を発生する機能なのはご存じの通り(厳密に言えば酸素は、成長するためのエネルギーを生みだす過程で生まれる副産物)。コレを行うために特に重要なのが光、自然界で言えば”太陽光”なのです。
つまり、ウィードは太陽の出ている日中に光合成と呼吸を行い、夜になると呼吸しかしなくなるのです。すると日中のウィードエリアでは、呼吸で消費される以上の酸素が光合成によって発生します。
一方、夜になると呼吸しかしないので、ウィードエリアの酸素量が減少してしまうのです。
また、あまりにも濃いウィードの場合、例えハイライトであっても光が届きにくいボトム付近ではやはり溶存酸素量が少ないようです。
もしかしたら、ウィードエリアで釣るなら朝マズメより夕マズメの方が有効かもしれませんね。
水温が溶存酸素量に与える影響
水に溶け込んでいる酸素の量。コレ、実は水温によって上限があるんです。具体的には、水温が高くなるほど溶け込める酸素の量が少なくなり、低いほど多くなるんです。そのため、夏になると、水中は酸素が少ない状況になりやすいわけです。「ブルーギルが酸欠状態で浮いている」とは、しばしば夏に見かける光景ですが、こんな背景があったんですね。
生物にとっての溶存酸素量
冒頭で紹介しました通り、溶存酸素量というのは、
魚にとっての水中の酸素量=人間にとっての空気中の酸素量
のイメージ。ということはもちろん、溶存酸素量が少ないのは魚にとってあまり良い状態とは言えないわけで。ということは、仮に同じ条件の場所が複数ある時には、少しでも溶存酸素量が多そうな場所で釣りをした方が良いかもしれません。
具体的にどんな場所かというと
・水面付近:空気に常に晒されるため。
・動いている水:水が流れていたり波立っていれば、そのぶん頻繁に空気にさらされるため。
・ウィードエリア:明るさが必要だが、ウィードが光合成で酸素を放出するため。
・水温の低い場所:溶け込める酸素量が多いため。
といった場所が考えられます。
つまりどういうことよ!?
今回は水の中にある酸素、溶存酸素量についてお話しました。あらためてまとめると…、
・魚も人間と同様、酸素を必要としている
・水が空気にさらされる事で、酸素は水中に溶け込む
・ウィードが光合成する事でも酸素は発生する
・夏は水中の酸素が無くなりやすい
といった内容でした。どうです? ちょっと賢くなった気がしませんか? これらのコトを理解しておけば、夏の釣りでちょっと差がつく・・・かも?
※この連載は福重の経験を元に書いております。相手は自然。全てが書かれている通りであるとは限りません…。