おまんら美味いカツオのタタキを知らんきに、ホンマの土佐づくりを教えちゃる【極私的カツオのタタキ論|釣り師のレシピ】



カツオ愛は土佐人のアイデンティティである

カツオの本場、土佐生まれの俺ちゃん。

土佐人とは切っても切れないのが「カツオのタタキ」。子供の頃から食べつけてきたカツオのタタキは大好物。ウチの親父の得意料理でもあり、帰省した時の一番の楽しみです。

カツオは、土佐人のアイデンティティの一つと言っても過言ではありません。

ご当地キャラ「カツオ人間」。土佐人の有り余る(行き過ぎた)カツオ愛感じられる。コイのぼりかわりにカツオのぼりが上がる漁師町もある。なんでもかんでもカツオと龍馬と、やなせたかし先生デザインのキャラで押し通すのはいかがなものかとも思う

もちろん東京でも美味しいカツオが食べられる店があります。スーパーなどでもカツオの名所・千葉から仕入れた美味しいのが手に入ります。

ただ……気にいらないケースが多々ある。

それは「カツオの土佐づくり」などと称しながら「土佐」を感じさせてくれないこと。

ショウガ醤油でおめしあがりくださいだと!?  
ニンニクはどうした!? 
なんだこの貧相な薄切りは!?
カツオのタタキではあるが、「土佐」ではないのだ。

土佐づくりを名乗るなら下記の5か条をクリアすべし!!

一つ、薬味はたっぷり。ニンニクとタマネギは必須!!
二つ、身は分厚く切るべし!!
三つ、大皿に豪快に盛り付けるべし!!
四つ、氷水でしめるな!! ほんのりとヌクい(温かい)うちに食え!!
五つ、酢ミカン(柑橘酢)で食うべし!!

分厚く切ったタタキを、焼き目もホロホロのほんのり温かいうちに、たっぷりの薬味とともにポン酢でほお張るのが、土佐流、土佐のロックンロール。

今回はそれを踏まえて作り方を紹介するきに、やってみとうせ!!

カツオ人間もたいがいだが「わたし、いつでも旬です」「すてきなママよ おしゃれネギ」の田邊温室農場もなかなかのものだ

材量
薬味……タマネギ(新タマネギが最高・辛みの少ない赤タマネギも彩りがよくて良)、ニンニク、大葉、青ネギ、ショウガ。
カツオ……今回は背と腹の両方を購入。背側の肉の旨味と、腹側の脂の旨味の両方を堪能。
調味料……ゆずポン酢。
※高知では「酢ミカン」と言って、ユズ、ブシュカン(仏手柑)、直七、ダイダイなどの香りの強い酸っぱいミカンを調味料として多用します。

【1 薬味を用意】

タマネギはスライスして水にさらしておく。今回は辛みが少ない新タマネギだったのでサッとさらしただけでした。

ニンニクもスライス。大葉とショウガは細切りに。青ネギは小口切りに。

最低でもタマネギとニンニク。サク一つにニンニクひとかけは欲しい。

【2 カツオを炙(あぶ)る】

軽く塩をふってから強火であぶります。

テレビなんかで金串に刺して炙るのを見ますが、身が崩れないように串を打つのは難しいものです。
100均で買ってきた焼き網で十分。身がくっつかないように油を塗る人もいますが、少々のことは気にしない。そのままでいい。

ガスコンロがなくIHという方は、テフロン加工のフライパンでOK。カセット式のバーナーで炙ってもいいですよ。

塩をふる。
軽く叩いて塩をなじませる
100均で買ってきたモチ焼き用の網。
「焼く」のではなく強火で「あぶる」。カツオが焼けてものすごいイイ香りがする
ひっくり返す。フライパン返しとか使ってもいい
はい、少しくらいくっついても気にしない。こびりついた身をむしり取って、これをツマミに酒を飲むのも楽しい

表面をあぶるのは、「カツオ独特の血の臭みをとる」、「皮目に火を入れて虫を殺す」、「硬い皮の部分に火を入れて食べやすくする」などの意味があるそうです。
鮮度が良かったり、すでに皮を剥いでいる場合もありますが、加熱することでタンパク質が分解され旨味に変わり、脂も溶けてより美味しくなります。

氷水につけたらそれが台無し。氷水で身をしめないことを力説するのはソコなんです。

熱で溶けて浮き出してきた脂のツヤ。これが重要
もうちょっとあぶってもよかったかな? 

【3 ぶ厚く切る】

氷水につけないことで焼き目が崩れやすくなってます。でも気にしない。厚く切るから、大きく崩れはしません。最低でも1cm幅は欲しい。温度キープもできる。

このくらいのホロホロ加減で食うのが美味い。脂ののった戻りガツオなんて最高です。で、崩れてこぼれたところをツマミに酒をもう一口

【4 もりつけ】

皿にタマネギを敷き詰めカツオを盛り付けたら、その他の薬味をバラバラっと。

もうね、下品にドチャっといっちゃってかまわない。「土佐人の豪快な気質を表現」という便利な言い逃れ方があるから

【5 豪快にほおばれ!!】

ポン酢をぶっかけて、たっぷりの薬味とともに厚切りのタタキをほお張る。口いっぱいに濃いカツオの旨味、薬味の香り、ポン酢のさわやかさが広がります。

ビールをグイッとやってもいいし、酢ミカンで割った焼酎のロックとか、日本酒の冷やで洗い流すのもたまらんです。もちろん白いご飯でも。

タタキのタレとしては高知県・馬路村の「ゆずの村」がおススメ。


タタキの由来

本来タタキはナメロウのように包丁で身を「叩いた」ものを言います。

カツオのタタキの場合は「炙る前に塩をふった後、塩がなじむように包丁の背や手で軽く叩く」「盛り付けた後、調味料をかけてから味が馴染むよう叩く」からという説があります。

その手順を踏まない作り方もあるのですが。

土佐では「焼き切り」「やけど」と言う呼び方もあります。「氷水で冷やさない」ことの方が多いんです。グレ、チヌ、ウツボのような磯魚も「焼き切り」でよく食べられます。

カツオの名産地の一つ、鹿児島県でも、薩摩半島の漁師さんたちが「やっぎぃ(焼き切り)」という呼び方をするそうです。

以前紹介した「さつま」という冷汁や、「さつま揚げ」に似た「じゃこ天」が土佐にあるように、もしかしたらカツオのタタキも黒潮に乗って九州から伝わってきたのかもしれませんね(←「土佐人のアイデインティティ」はどこへ行った)。

作りすぎたら、残りは煮つけに

「独身の俺ちゃん、一人でカツオのサク2本は多すぎじゃないの?」とご指摘あるかと思います。ハイ。このたび身を固めまして、2人前作ったんです。撮影も手伝ってもらいました。「一人で陽気に飲める店・居酒屋俺ちゃん」は「家族サービスにおススメ」へと経営路線を拡大します。

とはいえサク2つは多すぎた。残ったときは煮つけにして翌日のオカズにするのがおススメです。

ニンニクだけ取り除いて、ショウガを追加。薬味と一緒に醤油と酒で煮ます。

生のカツオが入ってるからダシいらず

子供の頃、「明日の朝ごはんで食べたい」と言ってワザと残したこともありました。ショウガと大葉の香りがよく、カツオのダシが染みたタマネギが美味しいです。

カツオの味が染みたタマネギがイイのよ~。冷めたままでも美味しいです
翌朝の食卓。ちなみに味噌汁は鳥肉、白菜、シメジ、小松菜。温泉卵は火の通し方が甘かったよ


実家近くの魚屋件お惣菜屋さんでは、売れ残ったタタキを薬味とともにぽってりと衣をつけて揚げて、かき揚風の竜田揚げとして売ってました。付属のタタキのタレで食べると美味しかったなあ。

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