トラウト管理釣り場「エリア」で「釣れる」という名作ルアーはたしかに存在する。高い実績を誇る釣れ筋ルアー達の中から、今回紹介するのはディスプラウト「DSベビーバイブ」。エリアトラウトゲームの歴史を変えたと言われる、その生い立ちをお伝えします。
DSベビーバイブの登場でエリアのボトムゲームが変わった!
ラッキークラフトが誇るバス用ルアー「ベビーバイブ40S」のウエイトは3.5グラム。一方、ディスプラウトが誇るエリアトラウト用ルアー「DSベビーバイブ」のウエイトは3.8グラム。その差、僅か0.3グラム…。だが、実はこの0.3グラムの違い中に、バスフィッシングとエリアトラウトゲームの違いが詰め込まれているのだ。
バス用バイブレーションであるベビーバイブ40Sを、エリアトラウトメーカー『ディスプラウト』が、エリア用にオフィシャルチューンを施したDSベビーバイブの登場は、あらゆる意味でセンセーショナルだった。
DSベビーバイブ登場以前、エリアにおけるボトムゲームはスプーン、クランクベイト、メタルバイブレーションで行うことが常識だった。だが、エリアにおけるボトムゲームの可能性はとてつもなく大きい。既存のルアーだけでは、補いきれない大きな死角が存在していた。
ディスプラウトの看板テスターであるマグナム高田さんは、その死角に誰よりも早くから気が付いていた。
メタルバイブレーションとABS素材のバイブレーションの違い
マグナム高田さん「DSベビーバイブを発売した当初、エリアのボトムゲームはメタルバイブレーション全盛でした。各社から優秀なメタルバイブが続々と発売されていました。メタルバイブは確かにエリアのボトムゲームに一石を投じてくれました。ですけど、同時に限界もありました」。
マグナム高田さん「メタルバイブにしても、DSベビーバイブに代表されるABS素材のバイブレーションにしても、基本はリアクションの釣りです。ですが、DSベビーバイブはメタルバイブよりも喰わせの要素が介入しています。理由は、動きがメタルバイブよりもスローだからです。
また、攻め方のバリエーションもメタルバイブよりも多彩です。誤解を恐れずにシンプルにまとめさせて頂くと、メタルバイブはリフト&フォールにおけるリフト時…つまりシャクリ上げたときにアタリが多発するスタイルです。一方のDSベビーバイブはフォール中もアタリが取れます。この違いは大きいです」。
ウエイト差0.3グラムの理由
フォール中のアタリの精度と確率を極限まで引き上げるために、ディスプラウトチームは0.01グラム単位の緻密なウエイト調整を行っていた。その結果がオリジナルのベビーバイブと、オフィシャルチューンを施したDSベビーバイブのウエイト差…0.3グラムとなって表れている。
マグナム高田さん「ラッキークラフトのオリジナルベビーバイブはバス用です。そのためタダ巻きで使うことも多いと思われます。ですがエリアでABS素材のバイブレーションを使うときは、例外もありますが、基本はタダ巻きではなくてボトムゲーム専用です」。
マグナム高田さん「すなわちオリジナルの3.5グラムでは、エリアゲームにおけるリフト&フォール時の、フォール速度が遅いです。またフォール中のアピールも弱すぎました。もちろんフォールの遅さが効くこともあるのですが、最大公約数的に考えると速い方が効果的です。
ただ、難しいのは無尽蔵に重くすればいいという訳でもありません。重たくし過ぎると、着底のときに生じるABS素材独特の、浮力を含んだ波動も一緒に消えてしまいます。それでは結果的にメタルバイブレーションと同じです。
その絶妙なバランスが0.3グラムのウエイトアップでした。散々テストしたので究極のバランスである自信はありますよ…(笑)」。
そして…現役にして伝説のルアーとなった!
DSベビーバイブは釣れ過ぎるエリアルアーとして、発売と同時に爆発的な人気を得た。そして、エリアゲームにおけるABS素材のバイブレーションの有効性を証明した。
その証拠にDSベビーバイブ発売後、各社からABS素材のエリア専用バイブレーションが続々と発売された。エリア業界にABS素材のバイブレーションブームのきっかけを作ったのは、間違いなくDSベビーバイブだった。
エリアにABS樹脂素材のバイブレーションの概念を最初に取り入れたルアーとして、DSベビーバイブは現役にして伝説のルアーへと昇華した。
このDSベビーバイブ…使い方があまりにも多彩過ぎことでも知られている。その詳細は別の機会にじっくり解説させていただきます。