アメリカでのトーナメント経験を経て、琵琶湖のプロガイドとして活躍する内山幸也氏の代名詞と言えば”フロッグルアー”。数多くのフロッグを使い込んできたからこそ言える、オススメフロッグとその使い方を”大人の事情”抜きで完全公開!
「オトナの事情」抜きで語る本音のフロッグ起用術!!
ルアーマガジン2017年9月号で、フロッグの名手として知られる内山幸也さんが”STEEZフロッグ”(DAIWA)の使い分ける記事が掲載された。
その内容は、サッカーの日本代表に見立てた「内山ジャパン監督」として、STEEZシリーズのフロッグ4モデルを軸に、タイプ・サイズ・カラーを使い分け、どうスターティングメンバー(=スタメン)とサブスティチュート(=サブ)を選び、どう使いこなしていくのかといもの。内容の濃さに加え、フロッグのセレクトをサッカーのスタメンに例える見せ方の妙もあいまって、プチ話題となった!
その企画の釣行は遠賀川水系に限定されたが、「日本全国津々浦々のフィールドでフロッグを使うとしたら、件の4モデルだけでもカバーできるのか?」。読者さまの中にはそう斜め目線を送る方も多いのではないだろうか。では、内山さんの本音はどうなのか聞いてみた。
内山ジャパン監督(以下、内山)「かつては星の数ほどフロッグを使い分けていましたが、今はほぼこの4モデルだけのスタメンで通用しますね。ホームでもアウェイでも90%固定メンバーです。ただ、特殊な状況もあるので、そんな時だけ起用する選手もいます」。
10%の特殊な状況ではどんなフロッグがスーパーサブとして登場するのか、実に興味深い。
今回は、メーカー・ノーリミットで”裏・内山ジャパン”をお届け! 内山監督の戦術、ここで完全公開!!
「当たり負けしないパワーのオリジナル、Jr.は全国陸っぱり標準機」
STEEZフロッグ&Jr.(DAIWA)
内山監督のスタメン、ベースを作るのはやはりSTEEZフロッグ各種。かつての「D」から「STEEZ」へとマイナーチェンジの際、監督のアイデアも盛り込まれた。両モデル共にテール側上部に2ミリ穴を設け、フッキング性能の向上にも繋げている。
内山「オリジナルサイズは一番水押しが強くて、ネチネチと使えるモデル。ただサイズが大きく19グラムあるので、少し深い場所から魚を引っ張り出したい時に威力を発揮。琵琶湖なら水深3メートルで水面からエビモが顔を出しているところ。サーモクライン前後でサスペンドするバスをそのパワーで。もちろん遠投も利きます」。
対して、Jr.サイズはどうか。
内山「これは日本の陸っぱりスタンダード。ていうのも、今季STEEZになってウェイトがマイナス2グラムの12グラムで、浮力を高めてより軽快なドッグウォークができるようになりましたし、もちろん飛ぶ。ボートの場合でもタフな着水音を抑えて使うことも」。
「ポッパーだからって、得意技がポッピングだけじゃない」
STEEZポッパーフロッグ&Jr.(DAIWA)
内山「ポッパーと名が付くので、ポッピング専用と思いがちですが、使い方はどれも同じドッグウォークが基本です」。
ついついネーミングで勝手に想像しがちだが、フロッグの場合はフロントカップがあっても、ハードベイトのポッパーほど使用用途は限定されないのだと内山監督は言う。
内山「オリジナルポッパーは長く細いので、スプラッシュがどれよりも大きく出ます。なので、雨が降っている時に水面でアピール力が欲しい時に特に有効です。それとヒシモなどマット上をダイレクトに攻めたい時にもカップのチカラが活きますね」。
オープンのSTEEZフロッグ、マット上や雨天のSTEEZポッパーフロッグといった使い分け方もできそうだ。
内山「ポッパーJr.は、小さい割には重く作ってあるので喫水線は低く、実に水によく絡んで、浮かせにくい魚にもしっかりアピールすることができます。ウネウネと弱々しいアクションを水面下へ伝達しやすく、虫やカエルというより、ベイトフィッシュを意識した横の動きで引き波アピール。レンジをほんの少し下げたい時…んー、例えるならベビー1マイナスとフットルースの差という感じ。いずれにせよ、ベタナギで出番が多いですね」。
STEEZシリーズの中でもこのポッパーJr.は特異性を秘めている。
「国内フィールドでは、や・は・り小型は欠かせない!」
ミクラ(ディープフォレスト)・ダビート(アイマ)
現在国内市場でお目にかかれるフロッグの中でもとりわけ小型サイズなのがこの2モデル。実は、開発者は同一人物だったりする。
内山「ミクラはポッパータイプですが、STEEZポッパーフロッグJr.と好対照な存在。浮力が高いためにドッグウォークした時のスプラッシュは激しく、一口サイズのアドバンテージを活かしながらもバスがイケイケな時に威力を発揮します」。
一方のダビートはほぼ同サイズだが、ミクラとはどんな差があるのか。
内山「これはもう最終兵器。日本のフロッグマン達が口を揃えてそう言うはずです。大型から小型までまんべんなくフロッグで釣れますよ。ただ、その軽さがネックとも言われますが、DAIWAによるSVというベイトリールの進化があったからこそ生まれた、ジャパニーズスタイルの究極です。他に比べ動かしづらいのも事実ですが、これを使いこなせたらもう無敵ですね」。
この2モデルに関しては、タックルはややライトにする必要がありそうだ。
「秋専用。他とは全く異なる、唯一無二の引き波」
ブロンズアイシャッド65(スプロ)
内山「これは完全に秋しか使いません。他のフロッグとは完全に引き波が別物でV字なんですよ。まるでペンシルベイトと呼ぶべきか、他にこんなモデルは存在しないんじゃないかと思います」。
ベリー側を見ると、Vハルボートのような形状。これが水を切り裂きながらアクションを生む秘密だ。
内山「しかも水面直下ギリギリで動くんです。秋にアユなどベイトフィッシュを追っている時に、アクションはノンストップで使います。僕の中では唯一の喰わせ系フロッグですね」。
STEEZフロッグJr.開発時のインパイアにもなったという。
内山「喫水線の低さですね。水に絡めることで喰わせにも繋がることを教えられました。ただコレは引き波系、ポッパーJr.はスプラッシュという特性がそれぞれあります」。
この秋に注目したいモデルと言えそうだ。
「今は出番ないけど、このサイズ感に注目です」
ブロンズアイフロッグ65&ブロンズアイフロッグ65(スプロ)
内山「この2つのフロッグ、同じモデルですが、発売時期が異なるんです」。
パッと見では気付かないが、よーく見ると…おや? サイズが明らかに違う。65ミリとは言うものの、右のはもっと小さいような…。
内山「現行は左のモデルよりさらに大きいんですよ。僕がかつて使っていたのは、右の最初期モデル。なぜか? やっぱりコンパクトなサイズ感と動かしやすさですね。僕がフロッグを使い始めたのが確か今から11年前で、このモデルで使い方を覚えていったんです」。
内山さんのフロッグオリジンがそこに。
内山「現行が3代目で、自重はそのままにどんどん大きくなっているので浮力は高まっているはずなんです。なのに、初代のほうが動かしやすい。やっぱりフォルムの差なんですよね。ただ今は、出番はほぼないですね」。
なぜ内山さんはもう使わないのだろうか?
内山「STEEZフロッグで十分に事足りますからね。かつて、Dフロッグも登場していない頃はコレと、1サイズ小さい55、それにシャッドを使い分けていました。米国の試合では、タフになる2日目や3日目でも魚を引き出せるフロッグとして溺愛していましたね。その頃からですね、フロッグのサイズ感がバスのバイトに結びつくってことを体で覚えたのが。今でこそKVDセクシーフロッグ(ストライクキング)とかありますけど、当時はこれしかなかったですからね」。
話を聞いていると、ブロンズアイフロッグ65の初代モデルが欲しくなってしまった…という方に入手方法アドバイスを。
内山「パッケージが現行とは違うのですぐにわかるはずです。それと初代はカラーが多くないので限られてますね。秘密ですよ(笑)」
「変わり種フロッグ。左は巻き専用、右は…」
スプリンカー(テッケル)・ブルフロッグⅡ(DAIWA)
内山「スプリンカーはもぅただ巻き専用ですね。バズベイトのような使い方でマット上でもオープンでも使えます」。
ドッグウォークでは使わない?
内山「ですね。カバーが濃い場所でエリアサーチのために使うフロッグ…というより、形状はフロッグで中空構造ですけど、また新たなカテゴリーと考えたほうがいいかもしれません。あ、最近、水野(浩聡)がよく使うブリンク(ジャッカル)と同じスイミングフロッグというカテゴリーになると思います。テッケルにはホンカーというブレードが付いたアピール力の高いモデルもありますが、スプリンカーのほうがよりスピーディーにサーチできますね」。
最後を飾るのは、ウシガエルの意味を持つオールドDAIWAルアー。
内山「カワイイですよね。コレクションアイテムです。中古店で見つけて買いました」。
80年代のモデルなので、内山さんが子供の頃…。
内山「そうですね…て、バス釣り始めたのは18歳になってからだから、ブルフロッグの存在はつい最近まで知りませんでした(笑)。あ、もちろん釣れたこともありません(笑)」。
何とも内山監督らしい。
「いずれにせよ、全てはPE+ベイトタックル!」内山監督、かく語りき
内山「スナッグレス性が高く、どんな場所でも使えるのがフロッグ。その特性を活かすためにも、PEラインとそれなりのタックルは絶対に必要です。フロッグ自体より、タックルをまず重視してほしいですね。フロロカーボンじゃ無理」。
カバーにスタックしても極太PEなら回収可能。遠くに投げても伸びの少ないPEだからこそ、アクションをしっかり伝えることができる。内山監督はたびたびこんな言葉を口にする。
内山「いかに激しく強く水面上を動かすことができるか。フロッグはしっかり水面上を動かさないと、バスを引っ張り出すことはできません。ステイで喰わせとか、スローでじっくりとか考えるより、まずは一定速のドッグウォーク。より強く水面でアピールしてみてください」。
他のルアーにはない独特のパワーがフロッグには明らかに存在するのだと内山監督は言う。この秋、その威力をぜひ確認してみたい。