ゼナックの”イカリブランク”を一日相模湾で使ってきたよ!インプレッションレポート



ゼナックのオフショアロッドシリーズ「フォキート」に2018モデルとして加わるのが「フォキート イカリ」シリーズ。「イカリブランク」と名付けられた新作ブランクを採用するこのシリーズを実釣で使ったルアーマガジンファミリーの”ネコ人間”が、そのインプレッションをお届けする。

フォキート イカリをインプレするよ!

『ルアーマガジンソルト2018年5月号』で既報ですが、ゼナックから新たに登場するニューオフショアジギングロッドが「フォキート イカリ」です。今回はこちらのロッドをインプレしてきました。珍しく本誌連載企画「タックルハンター」よりも先のアップになっています。っていうか、アチラよりも中身濃いんじゃね? 的な内容でお届けしたいと思います(でも、本誌も読んでね!)

〈「フォキート イカリ」のスペック&お値段は下のリンクからどうぞ ↓〉

イカリブランク、ってナンだ?

さて、今回の新シリーズ「フォキート イカリ」ですが、その最大の特徴は「イカリブランク」という新開発のブランクを採用していること。ん、イカリブランクとは? ってハナシですが…。
メーカーの解説では下記の通りになります。

「カーボンコア」ってどんなモノなのかについては、PAT.P(特許出願中)のために一部明言されていない部分もあります…。実際使った上で推測すると、カーボンソリッドにカーボンシートを巻いた全身フルソリッド+チューブラーのハイブリッド構造なんじゃないかなと思います。たぶん詳しく言うといろいろ違ってくるかもしれませんが、大枠そんな感じかと。

中央がカーボンコア。その外周を通常のカーボンシートで巻いている、言わばハイブリッド構造ですね。

実際に触った感触を率直に言うと、高弾性ながらすごくしっかりしたロッドという印象が極めて強いです。まず、軽さが前面に出た現代の高弾性ロッドとは異なり、しっかりとしたブランクの重量が感じられます。次に、軽く曲げたときは適度なハリがありつつも、荷重を抜くとその分が素直にスッと戻るという感じで、とにかくクセがない印象で、ソリッド感はさほど感じません。

で、気になるのがこの重量という部分ですよね。

重いようで重くない、ちょうど良い重さとは?

「え? カーボンコア? それにカーボンシート巻いてるの? それってスゲー重いんじゃねーの?」ってことになりますよね? 

実際のところ、ブランクの見た目はかなり華奢で細身。その印象のままで持ってみると、ブランクの細さに比べて重量感はかなりあるように感じます。

ただし、その重さは同程度のブランク径で考えたときに重く感じるというハナシ。逆に、このクラスのウエイトを背負わせられる大多数のジギングロッドと比べると、ブランク径がかなり細くなる分、むしろ軽量感を感じることになると思います。

また、実釣時には重さがそのままブランクの強度にも感じられるため、恐怖感なくロッドを扱うことができるというメリットにも繋がっています。使用時の安心感は、似たような細身のロッドでは考えられないほど高いですよ。オフセットされたグリップ部分で重量バランスをキッチリと取っていることで、持ち重りは皆無となっています。

イカリブランクの特性-1:高い破断強度

さて、イカリブランクの特性としてまず挙げられるのが”破断強度”です。

ぶっちゃけコレ、使わせていただいたロッドをへし折るわけにはいかないので、ゼナック社がオフィシャルでアップロードしている動画を貼り付けておきます。動画内では、ざっくりと同程度のパワーを持つロッドでの比較で、高弾性中空ブランクと比べて、およそ2.6倍の強度を持っていることが示されています。

折れにくいロッドであるというのは、どんなサイズの魚が食ってくるか分からないソルトゲームでは非常に優位な性能であると思います。いつマグロや巨大なハタが掛かるか分かりませんからね!

イカリブランクの特性-1.1:破断強度が高いので、ロッドを立てられる

ぶっちゃけ、今回の釣行では暴力的なファイトを見せるような青物系の魚をキャッチできなかったので、上に挙げたような性能についてソコまで体感できなかったワケですが…。ともあれ、従来の細身なジギングロッドでは”ロッドを立てる”ファイトは無理だったのですが、細身ながら圧倒的な破断強度を持つイカリブランク搭載のフォキートイカリなら、普通にロッドを立ててファイトを止めるような強引なファイトも可能になったというコトです。

今回の実釣時に掛けた魚がマトウダイだったり、ユメカサゴだったりで、そこまで引くサカナではなかったのですが、何の違和感も感じることなく普通にグイッと曲げてファイトできました。

ファイトでこれくらい曲げるのは全然平気。

特にスロー系ジギングで使われる高弾性のロッドでは、この手のファイトは破損を招くために禁じられていたわけですが、そんなこともなく普通にファイトできるワケです。
その辺は下の動画で詳しく解説してくれていますので、是非チェックしてみてください。

イカリブランクの特性-2:高反発でジャークがしやすい

さてさて、ここからは実釣を交えたネコ人間の具体的なインプレをお届けします。

まず使ってみて感じたのは、ウリのひとつでもある高反発性能です。最初に使ったのは、青物系狙いということもあって「FS64-5.5」。

Length: 6’4″ / Jig: ~210g(ショート) ~280g(ロング) / Line: PE#1.5~3

スピニング仕様ですね。これにDAIWAリール・ソルティガの5000を合わせました。今回狙った、青物が付いているというポイントは、比較的浅い50mラインの根周りということもあって、使ったのは写真の120gセミロングジグです(DAIWAのソルティガリーフ)。幅も若干広めで、引き抵抗もそれなりにあるタイプです。

ソルティガリーフ(DAIWA)

ロッドの適正ジグウエイトから考えれば、ほぼ半分のウエイト。とはいえ実際のところ、ジグを動かすときにはジグウエイトだけが問題になるわけじゃありません。たとえばジグの潮の噛み方。例えばラインに掛かる海流の抵抗。リールの巻き上げ力やスピードも。ジャークの際に抵抗を生む要因はジグ以外にも少なくないワケです。

連続ジャークでも高反発なブランクならば、スラック処理が楽です。それなりに動作ができればエキスパートみたいな連続ジャークが可能!

で、ボトムからのジャークを繰り返す。そんな中で、高反発ブランクの性能を試していきます。個人的に反発の高低が一番利いてくるのがハイピッチな連続ジャーク時のリズムの取りやすさだと思っています。



それはつまり、高反発ブランクがジャークをアシストしてくれるということ!

ざっくりいうと、シロウトがやるハードジャークが、クロウトっぽく見せられます。つまり、ジャークが気持ちいい。オレウマくなった?的な感覚と言うか。ブランクがアシストしてくれるのが体感できるわけです。

ジャーク時のロッドの動きを考えてみましょう。たとえばワンピッチ。スタート時は、ラインがピンと張った状態で、下に構えたロッドを上方向に振り上げます。そして戻すことでラインにスラックを作り、同時にそのスラックを巻き取る。ここまでが動作としては1セットになります。

このとき、反発性が高く、ロッドの適正ウエイト以内のロッドであれば、振り上げた後に荷重が掛かり曲がり込んだティップがスッと戻ってくれます。この状態を作れれば、どのポジションからでも次のジャークに移れます。つまり、高反発なロッドは連続ジャークがやりやすいということです。

前置きが長くなりましたが、120gのソルティガリーフを使った場合、ジャカジャカでもワンピッチでも、アクションが付けやすい。ピッチの強弱を付けたときでも、キチンとティップが追従してくれるので、スラックのコントロールも楽々です。この手の細かい動作は、慣れた道具でないと難しかったりするんですが、戻りの速いティップが慣れの部分を補完してくれたというイメージですね。

朝イチのコレで普通のジギングは終了。

というわけで、根周りのジギングではマトウダイをゲット。その直前には、着底直後に押さえ込むようなアタリが出たんですが、それは抜けてしまったんですよね。コレがもっと反発力の低いタイプならどうだったのか? というの疑問が残るわけですが、その辺りにはロッドを使い分けるという道具選びの面白さがあるので、それはそれで、と思います。

イカリブランクの特性-2.1:スロー系ジギングでの優位性

感度の高さが必要な釣り、ということで、続いて水深200mオーバーの世界での釣りにもチャレンジ。実際には290m前後が釣り場でした。コチラで使用したのは「FB64-5」。

Length: 6’4″ / Jig: ~210g(ショート) ~280g(ロング) / Line: PE#1.5~2.5

深さもありますし、同行者のオススメもあって、電動リールでトライしてみました。実は電動リール初体験だったんですが、電動をオンにしなければ普通に巻き上げもできて、ワンピッチなどのジャークも問題なくできるんですね、コレ。もちろん巻き上げ回収時の楽さについては言うまでもありませんね。

狙いがアカムツということもあって、先ほどまでのいわゆる普通のハイピッチとは異なり、今度は基本スロー系の釣りです。今回、ここで言うスロー系の釣りとは、レンジの狭いフォールベースの釣りのこと。滞空時間の長い、幅広肉厚なショートジグを使うことで、ジャークによるダートからのスライドフォールで魅せて釣っていくというのがこの釣り方です。

スロー系ジギングのロッドはおしなべて高弾性のモノが多いです。というのも、曲げたティップが戻ることによって左右にジグを飛ばすというメカニズムがその理由。だから戻りの速い高弾性高反発なロッドが必須なのです。

…ということで、高反発なイカリブランクはこの釣りには非常に向いた性質を持っています。スロー系ジグは肉厚幅広。同じグラム数でも、細長く薄いロング系ジグとはジャーク時の抵抗感も動き方も全く違うわけです。カンタンに言えば、動かすのにパワーが必要なタイプのジグということ。そのパワーはどこから生まれるかと言えば”高反発性能”。そしてパワーを掛けても折れない”破断強度”があることで、パンっという瞬間的に強いパワーを鋭いジャークでブランクに掛けることができるというワケです。

スロー系の釣りでは、ジグはこのときのティップの戻りで飛ぶイメージなので、反発の高さが必要。そうは言っても飛びの幅のコントロールもしたいので、「FB63-3」と「FB64-5」の2つのパワーを使い分けることになるのです。

今回、ネコ人間が中深海初心者ということ、そしてジグは動く方がいいだろう、という2つの考えを基に5パワーのFB64-5をメインで使いましたが、同行者はもっと柔らかいロッドでアカムツを釣っていたので、ひょっとしたらFB63-3が正解だったのかもしれませんが…。

イカリブランクの特性-3:スーパーディープでもアタリが分かる高感度

さらに、水深200mオーバーの世界。当然ロッドの感度は高ければ高いほど、アングラーは様々な情報を得ることができます。

アカムツの基本的な釣り場は200mオーバーのいわゆる中深海です。しかも砂泥底を好むと言われています。もちろん船長はそういった場所に連れて行ってくれるわけですが、ボトムの着底時にコツンと来るのか来ないのか。それをキチンと把握できる感度があるのかないのかは、釣果に非常に結びつくポイントとなります。

そしてアタリ。300m近く、もしくはそれ以上出ているラインの先でのアタリが分かるなんて、正直あまり思っていませんでしたが、ロングジャークからのフォール時にでる僅かなアタリも、意外なほど捉えることができて驚きました。

こんなサイズが300m下で食っても分かるもんです。

結局乗らないことも多かったのですが、こういった中小サイズのユメカサゴやギンメダイ、それにオキギスなどをキャッチ。他にも、ハリには掛けられなかったけれど、ジグにじゃれ付くようないわゆる前アタリ的なものは結構頻繁に感じることができました。

食わせられるかどうかはソコから先、腕の部分なので………

このあたりは、高感度設計になっているというイカリブランクに加えて、オフセットグリップ周りの性能も関係していると思います。

フォキートイカリのフィーチャー

さて、続いてはグリップとかのパーツ類のハナシに行きましょう。

グリップはオフセットタイプを採用。移動時にコンパクトになるほか、ブランクだけ取り外してじっくり洗いたいなんてのも楽々です。リールシートはFBがT-DPS20、FSがDPS18を採用。ともにロングナット仕様で、リールのズレを最小限にとどめてくれます。

ベイトモデルはトリガー付きパイプシートのT-DPS20。
スピニングモデルは少し細身のDPS18。

また、ブランクよりも一回り太いパイプでグリップ部を構成することで強度を向上。感度的にも伝達性能を上げつつ、さらに持ち重りをしないような重量バランスに設定されています。

グリップそのものも逆三角形っぽくシェイプされています。釣行時に違和感を感じる場面がまったくなかったことから、長時間のホールドにとても向いたシェイプなんだと思います。


次にガイド。ここはオールチタンKフレーム+トルザイトリングガイドです。FBはトップがT-KGTT、ティップ〜ベリーがT-KTTG、バット部分がT-KWTG。

FSでは、トップにT-KWTT、ほかはFBと同シリーズのサイズ違いでセッティングを出しています。
Kシリーズの自動ライン絡み防止機構はロングジャーク後にフリーで落としたいときなどの絡みつきを軽減してくれるので非常にありがたい。

トルザイト採用なのは、重くなりがちなイカリブランクの構造をアシストするためにも、コンマ1gでも軽いほうがいいからですよね。ブランク側が軽ければ、その分グリップでのバランス確保も楽になりますしね。

スリムでシャープで強い。ヒトコトで言うとそんなロッド。

…という感じで、一日みっちりと「フォキート イカリ」を触った結論としてはこう思います。実釣性能的に200gを超えるジグをきっちりと動かして、かなりのサイズのブリ等とも普通にやり取りが可能という。それって、いわゆるスロージギング用の高弾性ロッドでは無理な話だし、普通のジギングロッドでも、ひと昔前ならば遥かに太いブランクが必要だったハズなんです。ソレが今やこの細身のブランクで、かつスロージギングにも対応できてと考えると、技術の進歩ってスゴいなぁと思いますね。

このフォキート イカリのキニナルお値段は、定価税込みで5万円オーバー。これを高いと見るか安いと見るかですが、個人的には高くはナイと思います。

実際にフォキートイカリを購入するのに当たって気をつけなければイケないと思うのは、”高反発ブランク”という部分だと思います。というのも、ジグをコントロールする際に飛ばしすぎると食わない、そういうシーンってあると思うんです。このロッドは「素早く飛ばしたい」とか「もっと軽いパワーや動作で飛ばしたい」方向性のロッドであるので、そのあたりをじっくりと自分のスタイルの中で消化できるか考えて手にすると、狙い通りの使い心地が味わえるのではないでしょうか。単純に強度的な部分でのマイナスはありませんからね!

「フォキート イカリ」の詳細はオフィシャルサイトにて ↓


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