『ルアーマガジン』誌にてバス釣りの年間陸っぱりキングを決める連載企画『陸王』がスタートしたのは、今を遡ること10年以上昔の2008年3月号。1on1バトルの予選を勝ち抜いたアングラーがチャンピオン・カーニバル(決勝戦)で岸釣りの王者を競うこの戦いは、またたく間に実力派アングラー達の闘争本能を刺激し、これまで数々の伝説的名勝負が繰り広げられることとなった。その長い歴史を振り返るべく、[ルアマガ+]では本稿より連載企画『陸王名勝負列伝』をスタート。当時の誌面に掲載された戦いの軌跡を忠実に辿ることにより、『陸王』の面白さをあらためて掘り下げてみたい。まずは記念すべき初回、2008年の予選第1戦〈関和学 vs 川村光大郎〉戦からお届けしよう。
※本稿は『ルアーマガジン2008年3月号』掲載記事を基に再構成しています。※事実関係等について、本記事公開時点とは一部異なるものがありますが、誌面掲載当時の内容を優先しています。
- [p1]陸王2008予選第1戦・概要/初日:川村光大郎 編(本稿)
- [p2]初日:関和学 編
- [p3]2日目:川村光大郎 編
- [p4]2日目:関和学 編/総合結果
- [p5]ザ・対談:川村光大郎&関和学
今回の『陸王』対戦ルール
◎初日スタートは「道の駅いたこ」。2日目スタートは土浦駅前
◎1日5本、2日で10本の総重量を競う(重量は編集部・アングラーの双方で確認)
◎エリアは霞ヶ浦及び利根川につながっている全水域
◎ポイント移動は自由
岸釣り1on1バトル『陸王』2008予選第1戦、関和学 vs 川村光大郎!
ついに始まったルアマガイチオシ企画、岸釣り達人同士の1on1対決マッチ『陸王』! 記念すべき初回は川村光大郎vs関和学によるバトルだ。決戦の舞台は最近復調がささやかれている関東屈指のビッグフィールド、霞ヶ浦&利根川水系。”勝利”の2文字のみを賭けて関和さんと川村さんが2日間を競い合う。対象的な2人の冬バス戦略。寒さ厳しい12月末の厳寒マディー水域対決。いよいよ戦いの火蓋は切って落とされた!
〈初日〉川村光大郎編・スタート
「冬のセオリー通り自信のあるエリアを時間をかけてやり切ります。目標は5本5キロ!」
「道の駅いたこ」にて関和さんと別れた後、川村さんが一直線に向かった先は与田浦。
「冬はエリアを移動しすぎてもダメです。絞り込む必要がある。目標は午前中に3本。できれば5本獲りたいですね」
平均水深およそ1メートルという、ほぼ全域がシャローの与田浦。冬にも関わらず、このエリアを選んだその理由を聞いてみた。
「与田浦の中でも、奥まったこのエリアは北風からブロックされてるんです。冬であってもそういった穏やかな場所であれば浅い水深でもバスはいる。ここはオダや杭といった撃ち所も多いですしね。しかも、シャローにいるバスはコンディションがいいんです」
6時45分、最初のポイントで川村さんが手にしたのは、新作のド・ライブクローのライトテキサスリグがセットされたタックル。そっと岸に近寄り、点在する護岸周りの杭へとリグをアプローチしていく。その動かし方も特徴的だ。
川村さんの普段のスタイルは、歩いて撃つを繰り返すラン&ガンが主体なのだが、今回は一投に数十秒をかけて、ボトムの僅かな起伏やオダの枝一本一本を確実に感じながらごくスローに動かしていく。
「食べたいけど動けない低水温期のバスに食わすには、目の前に落とさなきゃダメ。そのために、枝のスキマすべてにリグを落としたい」
最初のスポットを40分ほど掛けて丹念に探ったが、無反応。しかし、川村さんに焦りの色はまったく見えない。
「このエリアは、午後になると水温が上がって、バスの食いが良くなるんです。だから、今反応が無くても焦る必要はないんですよ。午後にもう一度入る予定ですから」
キロオーバーで最高のスタートダッシュ
そして、200メートルほど先の囲みオダへ移動。しかし、予想よりも早い7時36分、コンっという気持ちいいアタリとともに、この日最初のバスがドライブクローに襲いかかった。
「きたっ!」
上がった声とほぼ同時の秒速ランディングで、バスが川村さんの手中に収まる。
「遊ばせとくと、オダに潜られるんで一気に巻き上げてしまうのがコツなんですよ」
手にしたバスは、43センチ、1040グラムとまずまずのサイズ。1本目からキロオーバーで、この季節からすれば十分にキッカーフィッシユとなりうるグッドサイズだ。
「このエリアは、正直昼から釣れ出す予定だったので、ウレしい誤算。12ポンドのタックルから14ポンドのタックルに持ち替えたのも正解でしたね。オダの中から一気に引き出す必要がありましたから」
「ひょっとしたら、今日の与田浦は大正解かな。水温が上がったらスゴいかもしれませんよ」
その予言めいた川村さんのつぶやきが、後に現実のモノとなる。
2本目のグッドサイズがヒット「ナイスな展開になってきましたよ」
8時30分、続いて2本目のバスは桟橋周りのオダから。
「桟橋周りには、結構オダらしき枝が入ってる事が多いんです。枝を乗り越えて、フォールした時にコン、とアタリました」
スローに探るからこそ、細かい起伏を把握し釣って行くことができるのだ。
3本目は想像以上の最大級
9時前に2本目のバスを手にした後は、与田浦の湖岸に点在する桟橋やオダといったストラクチャーを釣っては移動を繰り返して行く。
「今日はドライブクローだけでこのエリアを釣り切っちゃおうと思います」
そして水温が上がり始めるだろう10時過ぎ、遂にドラマが起きた。水面に張り出した大きなシェードに障害物が複雑に入り組んだ場所へ送り込んだドライブクローを、明確なアタリとともに巨大なバスが飲み込んだのだ。
「うわっ、やっちゃったかも?」
想像以上のバスのサイズにうわずった声を上げる川村さん。それもそのはず、抜き上げたバスは47センチ1790グラム。冬の陸っぱり、しかも霞ヶ浦水系という条件ならば最大級のサイズだ。
「ここまで来たら、本気で5キロを目指します!!今日ならば、釣れる気がします」
その後、11時47分に4本目となる1000グラムをキャッチすると、さらに1時間半後の13時20分には、なんと1790グラムを釣ったのと全く同じスポットから遂に宣言通りのリミット達成となる5本目を抜き上げた。
「よっし、リミット達成。でも5キロは届かないな」
この時点でトータルウエイトは約4800グラム。いよいよ、5キロというウエイトが現実味を帯びてきた。
ついに5キロオーバー! 32センチ520グラム
気分転換を兼ねた遅い昼食をすませた後、エリアを移動するのかと思いきや、「午前中のエリアにもう一度入ります。今日は、与田浦を釣り切りますよ」と、再び与田浦へと川村さんは入った。
「5本目の170グラムを400グラムに入れ替えて、なんとか5キロを釣りたいですね」
終了時間が迫る中、自らの足でラン&ガンを繰り返す川村さん。そして、15時50分ついにその執念が結実する。アシとオダが絡む岸際のスポットから手にした6本目のバスが、川村さんの手で計りにかけられる。
「6本目は……、520グラム。これで5キロ達成。よっしゃあ、勝った!」
この瞬間、冬の陸っぱりで5キロオーバーという偉大なウエイトが川村光大郎によって達成されたのだ。
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- [p3]2日目:川村光大郎 編
- [p4]2日目:関和学 編/総合結果
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