最近、高級ルアーロッドに採用されて、セールス文句にもなっているカーボンマテリアル。そう、東レ・トレカ®T1100Gについて深掘りしたく、東レ本社に赴き取材を敢行! その取材でわかったことを元に、こいつの実力に迫りたいと思いますよ! そして、最新プリプレグ「MX」シリーズの実力とは!?
そもそも、トレカ®ってなんぞ? プリプレグってなんぞ?
カーボン製のロッドというのは、カーボン・プリプレグシートと呼ばれるカーボン繊維を特殊な樹脂で固めたシートをくるくるっとロッドの型になる鉄芯に巻きつけて、オーブンで焼くのであります。そうすることで、プリプレグは硬化して硬度と反発力を持つんですね。するとご存知、釣り竿が出来上がるという寸法です。
ざっくりと書きましたが、トレカ®というのは、東レにより開発、販売された、ロッドなどに使用される材料となるカーボンファイバーの商品名なんですよね。そういったカーボンを使ったシートのことをプリプレグと呼んでおります。トレーディングカードの略称ではございませんのであしからず。
東レのプリプレグは、日本製、海外製の問わず釣竿に使用され、かなりのシェア率を誇り絶大な信頼を得ていることからも、その性能を推し量ることができます。そんな東レが開発した高性能炭素繊維がトレカ®・T1100Gなんですね。
高弾性カーボン至上主義からの脱却
さて、カーボンロッドが普及し始めて四半世紀以上ということもあり、その進化の過程では、より高反発、高弾性なロッドを作れば、釣り竿すごくなるんじゃね!? 的なムーブメントもありました。結局の所、適材適所なので、なんでもかんでも高弾性にすれば夢のロッドができるなんてコトはないんだと落ち着いたのが昨今です。
高性能なトレカ®と聞くと、高弾性マテリアルなんじゃないか?感度ビンビンなんじゃないかと勘違いされる方も多いかと思いますが(実際、感度ビンビンなんですが)、T1100Gは約320GPaの中弾性のプリプレグです。一昔前なら320GPaでも高弾性と謳われたでしょうが、400GPaを超えるカーボンマテリアルもあることから、320GPaであれば中弾性と表記するのが適切でしょう。
同社で#2574という品番の樹脂で成形されているトレカで、この#2574はナノアロイ®技術を使っていますので、全体的に竿は軽量に抑えられることもあり(繊維をまとめるためのレジン量を抑えられ、なおかつ必要強度を確保できる)、感度という面では非常に高い素材ではあります。なおかつ、ねじれ剛性、破断に強い特性を持っていますので、釣り竿用途してはもってこいなんですね。
が、どちらにせよ、こちらはテーパーや、ロッドの設計次第でどうとでも味付けがなされますので、この素材に関しては高感度がウリと表記するよりは、「高感度は当たりまえにロッド性能として表現できる」プリプレグだと評させてください。
さて、T1100Gが中弾性特性のマテリアルだとわかりましたが、なんだ中弾性なのかと評価を下げないでください。世の中のだいたいのルアーロッドは、中弾性特性のマテリアルで作れて、感度が伴うのが理想だと言えます。
そういった意味では、T1100Gは最強のロッドマテリアルだといえるでしょう。中弾性でありながら、軽く、感度がありますからね。そして強度もある!
そして、T1100Gの後に控える最新マテリアルが「トレカ®MXシリーズ」だ
先程、ルアーロッドは中弾性カーボンをうまく配置すれば、基本的には良いロッドができると提言させていただきましたが、ルアー釣りといっても多種多様なわけで、高弾性なマテリアルのほうが、ある釣りには良い…という場合ももちろん存在します。そんなニーズにも応えるべく、東レが開発したのがT1100Gよりも高弾性な炭素繊維「トレカ®MXシリーズ」です。
MXシリーズの最初の品種として登場したのは「M40X」というモデルで、従来の炭素繊維と同等の弾性率を保持したまま30%の強度アップを実現したとリリースには記載されています。
東レの十八番技術であるナノアロイ®技術を投入しているからこそ、従来型の高弾性マテリアルより、強度と粘りをマテリアルにもたせることができているわけですね。そして、軽量です。このM40Xは弾性率377GPaという高弾性で、従来の高弾性マテリアルより軽く、なおかつ強度も上がっているわけですから、より「高弾性ロッド」の設計に幅ができた(る)といっても過言ではないでしょう。
さぁ、ロッド最新マテリアルの2巨塔(T1100G&M40X)として、今後のロッドにどう採用されていくのか…。ロッドマニアとしては実に楽しみですね!