今、釣り人や料理会で話題沸騰中の魚の締め方…。宮崎県在住の津本光弘さんにより公開された、魚のポテンシャルを劇的に変える「究極の血抜き・津本式」。津本さんは実は宮崎県の魚屋さんに務める人。その津本式で締められ、仕立てられた魚が、各地の料亭などに送られて高い評価を受けていたり、注目されたりしているわけです。ということで、あまりにも気になりすぎて小社で「津本式」をテーマとした書籍化が決定したので、もろもろ詳しくはそちらでびっちり語らせていたさきます!が….。とりあえず、取材させていただいた、津本さんの地元宮崎県で、その津本式をリーズナブルに食べられると紹介されたお店がすごかったのでフライング紹介!
某リエモソに言いたい? え? なんて? 寿司職人は修行なんていらない? んなわけないでしょう…。いろいろ知ってるようで知らないんだなー。
津本「僕の魚を卸している料亭で、ちょっと次元の違う調理や熟成をしてくれるところがあるんですよ。そこに行ってみましょう。とても素晴らしい板前さんで、熟成の基礎を教えてくれますから、ぜひ聞き出してください。大将のお名前は黒木裕一さんです。お店の名前は「ゆう心」さんです」
【Profile】
黒木裕一(くろき・ゆういち)
宮崎県の観光地として知られる青島。そこで「ゆう心」を構える。古くから魚の熟成に興味を持ち実践。きめ細かなバランスで食材を高めて提供する料理人。その繊細な料理への心配りは、間違いなく刺し身一片にも込められている。都心にあれば予約がとれない店になること間違い無しのクオリティが、宮崎県その地で楽しめる。東京からもここ目当てで行く価値アリ!!!
鮨と魚肴 ゆう心
〒889-2162 宮崎県宮崎市青島6丁目14-30
電話予約:0985-77-8577
そういって案内されたのが、「ゆう心」さんという宮崎市青島にある鮨屋。なんでも、津本式で仕立てられた魚を、独自の技術でじっくりと熟成させて、お客さんに提供している店なのだという。
以前に津本さんにご紹介していただいた、西新宿の「立ち喰い寿司 にぎりて」さんのお寿司もちょっと驚愕でしたが。
津本「あそこは、東の聖地です(笑)にぎりてさんも、ものすごく安い価格で僕の魚を提供してくれているんで、首都圏の方はぜひ行ってみてください。で、宮崎にもあるんですよ。リーズナブルに食べさせてくれる店が」
驚愕なのは熟成技術に限らなかった! 職人さんの技術のバリエーションも広がる、その可能性に遭遇!
入店したのは13時過ぎ。ピークは過ぎているもののお客さんは、ほぼ満席。入店するとカウンター席に通されて、お食事をいただくことに。メニューはおまかせ。津本式の熟成魚の実力取材ということで、通常のコースとは異なりますが、ドキドキします。
すべてを紹介するとただの飯テロにしかならないし、10000万字レポートになってしまうので、断腸の思いでぐっとコンパクトに紹介します。
まず、熟成系のトップバッターであらわれたのはイシナギ。
黒木「こちらは、熟成10日目の刺し身です。カツオ出汁にクズ、ポン酢のタレでお召し上がりください」
……。いや、小生、決してグルメ大将ではございません。でも、釣り人ゆえに、超絶鮮度の良い、魚を食する機会が多い人種でございます。あと、仕事柄、海辺の民宿や食事処に通うことの多いこともあり、刺し身に感動することって、そんなに多いわけじゃないのですが….。
なんじゃこりゃぁ!!! 口パッカーン、顎開きっぱなし〜。津本式仕立て・熟成魚ゆえの旨味は異次元。このイシナギのしっとり感と旨味、そ・し・て、この味わいにマッチするように作られたポン酢…..。高い音域でなく、低い音域で「OH! Amazing….」ですよ。
津本「熟成そのものの技術は、大将の加減やからね。いちばん美味しいタイミングで出してくれはるねんよ。僕は、熟成に耐えうる素材を提供してるだけやからね(笑)」
津本式のカツオは、カツオにあらずだけどやっぱりカツオ。いや、カツオなんだけどカツオじゃないみたい。この謎掛けは認めないと解けないぞ?
津本式をかじりはじめてから、食べたかった食材が2つ。ウナギとカツオ。今回、その片方を頂くことができました。
なぜ、カツオを食べたかったか。従来、カツオは血の味が旨味だと言われてきた部分があります。それが風味だとね。
なんちゃって高知出身としては、カツオはLOVE魚。いろべよー!(I love you)です。そんな完成形の従来カツオ。それの血を完全に抜いたカツオなんてアリなん? と懐疑的に考えておったのです。
黒木「カツオです。10日目の刺し身です」
大将。ワシ、やっぱりカツオは高知のタタキやと思うねんやわ。アレの旨さは血の味やで。そんなもん完全に抜いてカツオが生きるわけないやろ。津本さんには悪いけど、認めるわけにはいかへんねや。
ということで、ひょいパクっ。
………….。
やってませんが、気分はカウンターをダン!と両手で叩き、椅子をひっくり返す勢いで立ち上がり〜の。蚊の鳴くような声で一言。「嘘だと言ってくれ….. 」ですよ。ホントびっくりー!
津本さん、ごめん。軍門に下るわ。こっちのほうが美味しい♡(素直・忖度なし)
カツオ新世紀始まる。まず、超イケてるマグロですか?という食感と味わい。ですが、それは一瞬で過ぎ去り、カツオであることを主張するのです。この戸惑い、この味。紛うことなきカツオ。旨味が無い? 否、カツオとしての旨味は一片にこれでもかと凝縮されています。ああ、涙で前が見えない。母さん。これはカツオだわ。紛れもないカツオだけど、いままでのカツオじゃないんだわ….。
津本「これ、ある意味、スーパーでならぶようなカツオを仕立てただけやからね(ちゃんと選んでるけど)。どうしても、カツオって魚屋に入ってきた状態で2〜3日ぐらいたってるんよね。生きてる状態から締めて処理できる釣り人のカツオなら、もっと、もっと美味しいよ」
津本式恐るべし! そしてその素材をきっちり活かす、ゆう心さん恐るべし!
そうそう、津本式の凄いところは完全な血抜きを魚が死んだ状態からもできることなんですよね。これって画期的だって、大学の先生も言ってました〜。
ブリの味がブリブリなんです。いやホント。大げさじゃないってば。
さて、お次は??
黒木「ブリですね。熟成19日ですね。今度は塩ポン酢で食べてみてください」
ブリと言えば、数いる青物系の魚でも、ブラインドで食べたら、ああブリね。とわかるぐらい特徴的な旨さを持つ魚ではありますが、どないなもんでしょ。と、パクリ。
これはあれです。口に入れてひと噛みした瞬間ですよ。目を見開いて裏声で叫びますよ。「Fantastic!!!」。BURI OF BURI。ブリブリ。なんならバンド名はブリブリにしますわ。
ブリ味がぐわっと口の中を駆け巡り、舌の細胞ひとつひとつに、ブリですよー。ブリなんですってばー。と優しく。いや、本気でノックする。。。。ああ、これはアカンやつや。
ポン酢で食べてと言われはしましたが、そのまま何も浸さずにもう一片食べてみました。酷すぎる。酷すぎるよ。こんなの食べたら、口が美味しい口になっちゃって、普通のが食べれなくなっちゃうよ….。帰ったら強制的にカップ麺でいつもの味覚に戻さなきゃ。メタボを維持できなくなっちゃうよ….。
と、まぁ冗談が過ぎますが、撮った写真を見たらその味がそのまま口の中に戻ってきてしまう、強烈な味覚記憶を呼び覚ます、そんな一品なのであります。いや、本を出すから贔屓とかじゃなくて、もう僕は自分のために、津本式の本をつくるんだ。ごめんよ。みんなのためじゃないんだ。
カンパチ熟成8ヶ月の衝撃。口の中で「無くなる」アナゴ。
ブリは隣の席に座っていた、釣りを始めたというお姉さんたちも驚愕していた模様。お姉さん。釣りを初めたのなら釣った魚を津本式で締めてくださいよ! さておき、お次は?
黒木「カンパチ熟成8ヶ月です」
へー、次は8ヶ月かぁ。なるほどなるほど。…….。8ヶ月??? 産まれて8ヶ月じゃなくて熟成8ヶ月??? WHY? じゃぱにーずぴーぽー、ゆう心タイショー、何言ってるんですかぁ? とまぁ、こちらの熟成の秘密はここから10000万字読ませることになるので本に譲りますが、ちょっと異次元です。違う世界線に入った、新しい食なんですよ。
横で撮影していたカメラマンが、これを食べた瞬間に「生ハム….生ハムだこれ….」と驚嘆の感想を漏らしていました。いや、生ハムと評するのはどうかと思うのです。コレはえーっと、ああ、語彙が少なくて表現できない…。生ハムじゃないんです。でも魚ハムとかいうのも安直な気がするんです。魚の旨味薄造り? いや、しっくりこない。だめだ、著名なグルメライター殿、この役を譲ります。どなたか食べて、レポってください(仕事放棄)。
そして、ある意味熟成の極み。アナゴ寿司。
黒木「先日、完成したんです。熟成アナゴ寿司の完成形です」
ん、なんでアナゴは手渡しなんですか?
黒木「食べたらわかりますよ」
では、いただきます。
ファッ!?
いま、何が起こったかわからないです。え? よく、お肉が溶けるようだーとか、とろける~。って表現することがありますよね。こちら、口に入れると、アナゴが無くなるんです。いや、アナゴのあの味と旨味と風味を爆発させながら!!
もう、必殺技を初っ端から放たれていて、味覚が限界です!(程よく味を変える料理を実際にはいくつか挟んでくださっています)。格闘ゲームのコンボで言うと、大小大大中大大大小大の連続攻撃。もう、もう、これ以上、口をおかしくしないでくださいっ!(いい意味で)。
マグロ熟成19日! もうきりがない、極上の連続攻撃。最後にします。
最後に紹介するのはマグロ熟成19日。もう、表現の限界に来ています。極上のチャーシュー?? これは口の中で脂と旨味がとろけて広がり静かに爆ぜます。そして、マグロが回遊します。ああ、カンパチ熟成8ヶ月もそうですが、確かに日本酒や焼酎とアワセられれば、それは古事記に出てくる神々の召します食べ物に高まると言って過言ではないでしょう。
そう、この一品があれば、それをエサに(こら)、イザナミであろうがイザナギであろうが支配出来る気すらします「カミサマ、カミサマ、こちらの熟成マグロをお納めしますので、私の願いを聞いてください」と。あ、モノの例えです。
と。津本式のポテンシャルを推し量ることのできる、素晴らしいお店を紹介いただいたわけですが、なんとこちらの熟成技術の基本を、2020年春に発売予定の「津本式」本にて収録決定。そんな秘伝、教えてもらってもいいんでしょうか? というお話です。
ハイ、ホントに大げさじゃなく素晴らしいお店です。ディナーコースでも7000〜8000円前後(ご確認ください)。ランチもかなりリーズナブルな値段設定になっている「ゆう心」さん。肩肘張らずに津本式とゆう心さんの熟成の技が味わえる名店です。高い、美味しいはあたりまえ。こちらは、手の届く範囲で極上が味わえますぞ!