釣り糸をはじめ、テニスやバトミントンなどのラケットスポーツのガット、さらには車両用繊維資材や電気資材、工業資材などあらゆる糸を作り続けている日本を代表する繊維メーカーである「GOSEN(ゴーセン)」。そんな同社からこの度、コストパフォーマンスに優れたハイクオリティPEラインがリリース。同社の原点回帰を志向したこの新ラインについて、開発者インタビューも交えてご紹介します。
創業から70年、ゴーセンの“原点回帰”新釣り糸「ROOTS(ルーツ)」
「ROOTS」の特徴
高強力ポリエチレン原糸による4本編組設計により、ラインのサイズごとに、強度や感度、耐摩耗性、耐久性におけるベストバランスを追求。ショア、オフショアのルアーフィッシングはもちろん、エサ釣りなどにも使用でき、あらゆるフィールドや釣法、魚種に対応した幅広いラインナップを持つマルチパーパスPEラインとなっています。
「ROOTS」のスペック表
長さ | 号数 | カラー | 価格 |
---|---|---|---|
100m巻 | 0.8、1、1.5、2 | マルチカラー | オープン |
150m巻 | 0.6、0.8、1、1.2、1.5、2 | マルチカラー 、ライトグリーン | オープン |
200m巻 | 0.4、0.5、0.6、0.8、1、1.2、1.5、2、3 | マルチカラー、ライトグリーン | オープン |
300m巻 | 0.4、0.5、0.6、0.8、1、1.2、1.5、2、3、4 | マルチカラー | オープン |
「ROOTS」開発者インタビュー
今回この新進気鋭の新たなPEライン「ROOTS(ルーツ)」のさらなる詳細を、ルアマガプラス編集部がゴーセンフィッシング開発部に色々と聞いてきちゃいました!
「ROOTS」のネーミングに込められたゴーセンの存在感
――今回ルーツをリリースしたきっかけを教えてください!
ゴーセンフィッシング開発部「元々我々ゴーセンは、PEラインを1980年代から40年近く製造している繊維メーカーなのですが、製品のクオリティを追求する一方で、ブランドづくりがおろそかになっており、PEラインを製造しているメーカーというイメージをあまり持たれていない部分がありました。
今回新たにブランディングをし直すとともに『PEライン=ゴーセン』ということをしっかりと押し出すためにも、最も普及している商品『ドンペペ』をリニューアルし、我々のPEラインにおける技術力をしっかりと周知させたいと思いリリースするに至りました。また我々ゴーセンの根幹のひとつである商品が『PEライン』であるので、それを表現する意味も含めて商品名も「ルーツ」というネーミングにしました」
「ROOTS」は「ドンペペ」を母体とした原点回帰の新ライン
――ドンペペと言えば船釣りやオフショア用ルアーラインとしてコスパに優れた大ヒット商品ですが、今回のルーツはそのリニューアルにあたるんですね!
ゴーセンフィッシング開発部「はい、仰る通りでこれまのドンペペは船釣り用のラインとして多くのお客様にご好評をいただいておりました。これに変わるルーツでは、船釣りだけではなく、ショアのソルトルアーはもちろん、ルアーフィッシング全般からエサ釣りにおいても使用していただけるように、パッケージデザインからラインカラーや号数のラインナップなど大きく刷新いたしました」
「ROOTS」の特徴とは?
目指したのは使いやすさ
――ルーツのWebサイトを見ると、『PEラインにおけるサイズ毎の強度、感度、耐摩耗性、耐久性など「ベストバランス」を追求しており、あらゆるフィールドに対応』と記載されていますが、その点をより詳しく教えていただけないでしょうか?
ゴーセンフィッシング開発部「Webサイトでは『ベストバランス』と少し抽象的な表現をしているのですが、我々が目指しているのが、ルーツは様々なジャンルの釣りで使用できるPEラインですので、まず『トラブルが少なくて安心して使っていただける』というところが大きな理念としてあります」
ゴーセンフィッシング開発部「ではどういった所がベストバランスかというと、現在様々なPEラインが市場にあって、強度が強いものや感度に優れたもの、コストが安いもの、比重が高いもの、色々あるのですが、どれかにパラメーターをふってしまうと、どれかの特性が失われる部分もあるんです」
――バランスの良さを求めたんですね
ゴーセンフィッシング開発部「感度を上げすぎると、高切れしてしまったり、強度を上げすぎるととハリが強くなってしまい、横風に弱くなってしまうなど、どこかを尖らせるのではなくてトータルでPEラインの良さを損なわないように扱いやすいPEラインにするというイメージです。具体的な特徴を挙げますと、組みピッチ、しなやかな風合い、使用するマテリアルの厳選が大きな特徴となります」
「ROOTS」のしなやかな強さの秘密「組みピッチ」って何?
――組みピッチとは一体……?
ゴーセンフィッシング開発部「組みピッチというと皆さん聞き慣れない言葉かと思いますが、1インチ(2.54cm)間の編み込みの数になります。我々繊維業界では1インチ間を20ヤマとか30ヤマといった言葉で表現するんですが、ヤマが多い程ピッチが細かくなります」
「ROOTS」はバランスを良くするために組ピッチを細かくしている
ゴーセンフィッシング開発部「ルーツは概ね一般的なPEラインよりもピッチが10~30%程度多い=細かいピッチに設計しています。ではなぜピッチが細かくなるとバランスが良くなるかと言いますと、まずピッチが上がることのメリットとしてショック切れや摩擦切れの軽減、色落ちがしにくくななるという3点が挙げられます。ただ、ピッチを上げすぎると良いことばかりではなくて、強力が落ちたりなどのデメリットもあるので、その点を抜いて、バランスの良いところの設定することで先述した3点がよくなるんです。
――単純に細かくすればいいというわけでもないんですね。
ゴーセンフィッシング開発部「ピッチを上げるとショック切れがなぜ減るのかというと、PEラインはもともと原糸自体が非常に伸びにくい糸なんです。糸が張って直線的になるとダイレクトに衝撃を受けて高切れのような形で切れてしまいます。ピッチが多いと構造的な理由で伸縮性が付与され、ある程度荷重(ショック)があったときにショックリーダーのように、構造上の収縮で高切れを抑えられるのです」
――なるほどわかりやすいですね。
ゴーセンフィッシング開発部「ピッチを少なくさせるとPEラインが直線的になるので、感度は上がるのですが、余裕がなくなりダイレクトに衝撃を受けて切れてしまったり、トラブルが起きたりしてしまうんです。そのようなことを減らすためにも、PEラインの感度を損なうことなく伸縮性を高めているんです」
――ピッチの細かさで感度と耐衝撃性を調整しているんですね。
ピッチを細かくすることで、横からの摩擦耐性を強化している
ゴーセンフィッシング開発部「続いて摩擦についてですが、PEラインは長さ方向の摩擦には強いんですが、横からの摩擦には弱いんですね。PE自体が細かいフィラメントの集合体なので1本1本が細くて、横から亀裂が入ると簡単に切れてしまうんです。そしてピッチが少ないとフィラメント自体がまとまっていないんです」
――ピッチを細かくすることで糸がまとまった状態を維持しやすくしているということですか。
ゴーセンフィッシング開発部「はい。例えるなら絞った雑巾のようにギュッと締まっているのではなく、ふわっと1本1本の線が組まれている状態で、バラけやすく、摩擦があった際にも1本1本に直接ダメージが加わり切れてしまうというような状態です。ルーツは密ピッチにすることで、糸表面の解像度が高く、ラインの表面が点ではなく、面でガードできるような状態で摩擦に対しての対抗性を高めています」
ピッチを細かくすると、糸の色落ちにも強くなる
ゴーセンフィッシング開発部「さらに色落ちについてですが、そもそもPEラインは染料では全く色が付かない繊維なんです。なのでPEに色を付けるとなると、PEと相性の良い樹脂に顔料を混ぜ込むという形が当社のPEラインの色の付け方になります。密ピッチになると樹脂がより細かく糸に浸透するようになり、糸のコーティングの落ちも大幅に減少するようになるんです」
しなやか、かつソフトな風合いのPEライン!
――ルーツはPEラインの中でもどのような風合いに仕上げているのですか?
ゴーセンフィッシング開発部「PEラインの中には感度UPやガイドがらみの軽減を狙って風合いを硬くしたものも多く存在しますが、取り扱いに慣れていないと糸グセの発生やバックラッシュなどのトラブルも多くなります。ルーツでは密ピッチかつ、初心者~上級者までどなたでも取り扱いしやすいようソフトな風合いを損なわないよう手掛けております。糸が硬いと糸グセが出やすくなってしまったり、空気抵抗を生むことにもなります。ルーツは密ピッチかつ、誰でも扱いやすいようにソフトな風合いを損なわないように手掛けています」
ゴーセンフィッシング開発部「ルーツも製作するにあたり、ゴーセンPEラインの伝統であるソフトな風合いは守りながらもコストパフォーマンスに優れたラインに仕上がるよう苦心して作り上げました。海外のユーザーの方々からも、日本のPEラインが非常に人気なんですが、やはりその理由はソフトさなんですよね」
「ROOTS」のPEマテリアルについて
――ルーツはマテリアルにも大きなこだわりがあるとお聞きしたのですが……?
ゴーセンフィッシング開発部「原材料のスペックも大切ですが、より原材料となるPE原糸をメーカーでどう鍛え上げ、どう加工するかというところが重要です**。もちろんそのままの強力だけではPEラインとして全く成立しません。その原糸から加工することで強力やスペックがを調整します」
PEラインはサイズごとに調整されている
ゴーセンフィッシング開発部「弊社の糸では各サイズや様々な用途に合わせて、最適な糸質に加工していってるんです。例えば細い糸ならば切れやすかったりするので少し硬めで摩擦に強いものを選んだり、使っているファイバーを変えたりと細いものほど少し固めに加工する。逆に太いPEであれば硬めで強いものだとゴワついたりするので、しなやかで柔らかなフィラメントを選択し加工すると。もともとPEラインの設計の思想としてはサイズひとつひとつが作り込まれた製品でないといけないんです。全部同じ条件で各サイズ作ったりするとどこかで必ず歪が出てしまいます」
――なるほど! 号数ごとの対象魚種やカテゴリーに合わせて作り込まれているんですね!
ゴーセンフィッシング開発部「そうですね。サイズごとに最適な設計を考えて作るようにしているのがゴーセンの釣糸における70年の基本思想になります。今回ルーツはその点もしっかりと守って作り込まれています」
既存でリリースされている他のPEラインとの違い
ルアー用PE「CAST」シリーズとの違いは?
――現在ルアーフィッシング全般で使用できるPEラインとして『CAST-4』や『CAST-8』といった商品もリリースされているのですが、ルーツとの違いはどのような点にあるのでしょうか?
ゴーセンフィッシング開発部「確かにパッケージの雰囲気は似てますよね(笑)。ですが、CAST-4、CAST-8はコーティング樹脂を粘度が硬いものを採用しており、キャストを何度繰り返してもヘタらない、キャスティングに特化した設計になっています。なのでルーツよりも断然コシがあって風合いが硬めのPEラインなんですよ」
ソルトルアー用PE「剛戦X」シリーズとの違いは?
――なるほど! あともう1点お伺いしたいのが、ゴーセンさんのソルトルアー用PEラインといえば、定番の『剛戦X』シリーズも有名ですが、その違いも教えていただけますでしょうか?
ゴーセンフィッシング開発部「剛戦Xシリーズはリリースした時期がPEラインが普及したタイミングで、PEラインを使ったルアーフィッシングをしてみようというユーザーに向けて作られた商品です。ルーツのコンセプトにも近い、トラブルを回避するためにバランスを重視した設計で作られたPEラインですね」
ゴーセンフィッシング開発部「実はハリのあるPEラインがキャスティングにおいて必ずしも有利であるかというとそうではないんです。硬いとなるとそこでどうしても抵抗が生まれてしまい、ロッドによってはキャスト時にガイド当たってしまったりして飛距離に差が出てくることもあります。ですがソフトなPEラインであれば抵抗が少なく、ガイドへの干渉も少ないためスムーズに糸を放出できます。
飛距離に特化した「砂紋」で得た技術が「ROOTS」にも活かされている
ゴーセンフィッシング開発部「弊社の投釣り専用PEラインでベストセラーにもなっている『砂紋(さもん)』というシリーズがあります。こちらは飛距離に特化するべく改良を試みた商品なのですが、ルーツと同じく、ソフトな風合いと組みピッチを細かくすることによって、糸自体に柔軟性をもたせると、キャスト時の抵抗も少なくなることが分かったのです」
――なるほど、ルーツにはゴーセンPEラインがこれまで培ってきた伝統と技術がしっかりと継承されているんですね!
いよいよ涼しくなり、本格的な秋の海釣りハイシーズン突入! 青物からイカ、シーバスや根魚、投釣りやサビキなどたくさんの釣り物が楽しめ、釣りデビューにもうってつけなこの時期。
あらゆる釣りに対応しながらも、釣り初心者にも使いやすく、コストパフォーマンスに優れたPEライン「ROOTS(ルーツ)」。是非とも試してみてはいかがでしょうか。