近年のオフショアフィッシングは、ライトタックルの進化でSLJやタイラバなど人気が集まっています。手軽に様々なターゲットを狙える様になったことで、入門者であってもタックルの操作さえ覚えてしまえば楽しめます。そうした中で稀に大物が掛かってしまう事は良くある事で、ロッドは曲がりラインを引き出されバラシてしまったという方も多く、もっとパワーのあるタックルが欲しいとなった方からの問い合わせを沢山受けています。
そこで今回は、近海ジギング(日帰り出来る範囲)での花形でもある青物をターゲットにしたタックルを説明したいと思います。
【Profile】
舟木雄一(ふなき・ゆういち)
ロッドメーカーの天龍で製品開発および広報を担当。ショア、オフショア問わず、幅広いジャンルをこなすアングラーでもある。
「今度、〇〇釣りに行くが、何を用意すれば良いのか?」という質問に対する解答
タックルの選び方に関してよく質問される「〇〇に釣りに行くけど何を用意すれば良いのか?」という内容ですが、下記の3点にテーマを絞ると、およその目安が見えてきます。
・ターゲットサイズ(ラインの太さに関係)
・ジグのウェイト(水深や潮流に関係)
・船の流し方(ラインの角度に関係)
例を挙げると…。
「三重県の在住の方がジギングで青物を狙いたい」
という事であれば、近い場所であれば伊勢湾がフィールドとなり、ターゲットはブリ狙いになります。三重県側の遊漁船に乗ることを想定すると、志摩半島の沖がメインフィールドで、水深20~80mほどの海域で狙うことになります。
船はドテラ流し(風や潮流に任せて船を流す)で探ることが多く、斜めにジグを引いて来ることになります。浅い場所ではキャストして広く探ることも考えられます。ロッドはスピニングタイプが主体で、6フィート前後の長さで3番程度のパワーを選択。ジグウエイトは、浅場で120g程度から深場や風が強い状況だと200グラムくらいが使用の頻度が多くなります。
ラインは、PE2~3号(リーダー35~40ポンドを5m)といった具合でしょうか。これより細いラインだと、隣の方との距離が近い場合オマツリ(編注:釣り糸や仕掛けが絡んでしまうこと)して切れてしまう場合も考えられます。
タックル(釣り具)は、トータルのバランスが重要!
上記のターゲット、ジグウェイト、ラインの太さが見えてくると、ロッドやリールの選択となります。案外ここから迷う方多い様で「ロッドの硬さは?」「何番のリールがバランス良いの?」「ラインは何号?」「リーダーは何号(ポンド?)」などなど…。
先ずは釣具店のスタッフや、乗船しようと思っている船長に聞いてみるのが一番です。しかし…こんな世の中なので、なかなか直接聞くのも難しいという方も多いかと思いますので基準を例に挙げてみます。おそらく近海ジギングでは下記の様な内容で、ほとんどのエリアをカバー出来るかと思います。
【実釣条件】
ターゲット:ブリ
水深:100mまで
探る方向:バーチカル(垂直)
潮流:1ノット程度
上記条件の場合、タックル選択の基準はラインの強度によって下記の通り。
基準1
ライン PE2号 | リーダー8号(30lb)、ジグウェイト100~150g |
---|---|
ロッド | 3番パワークラス |
スピニングリール | SW4000番(シマノ)、3500番(DAIWA) |
ベイトリール | 1000番(シマノ)、10番(DAIWA) |
基準2
ライン PE2号 | リーダー10号(35~40lb)、ジグウェイト120~180g |
---|---|
ロッド | 4番パワークラス |
スピニングリール | SW6000番(シマノ)、4000番(DAIWA) |
ベイトリール | 1500番(シマノ)、15番(DAIWA) |
基準3
ライン PE2号 | リーダー12号(40~50lb)、ジグウェイト150~200g |
---|---|
ロッド | 5番パワークラス |
スピニングリール | SW8000番(シマノ)、5000番(DAIWA) |
ベイトリール | 2000番(シマノ)、35番(DAIWA) |
さらにロッドを絞り込む
近海ジギング向けのロッドで、TENRYUでは『ジグザム』シリーズが対象となってきます。
シリーズは大きく分けて3種に分かれ、価格の違いだけでなく用途やスキルに合わせて選択が分かれます。
【3種の違い】
これからジギングを始めたいという方にはバージョンIIIがお勧めで、全体的に張りがあるのでジグをジャークしたのが手に伝わり易く、中弾性カーボンを主体なのでネバリ強さも同時に感じられるのが特徴です。
ある程度の経験者であれば、ジグの挙動などがイメージ出来る様になってくると、操作感よりはシャクリを軽く出来る様になるディープライダーが扱い易く感じてくると思います。
そして、地域の特性など釣り方など特定の条件でスペシャルな部分だけを抽出して仕上げたのが、ドラッグフォースとなります。外房でのヒラマサ狙い、瀬戸内のブリ狙い…など特定の条件化で最高の性能を発揮する様に仕上げています。
『ジグザム バージョンIII』
近海ジギングのスタンダード。感度が高く入門者向きの仕上がり。
ブランク:中弾性カーボンでネバリを出しつつ、少し張りを強くしてジグの操作性をアップ。
ガイド:ステンレスフレーム、SiCリング。
『ジグザム ディープライダー』
汎用性を高め、基本性能を磨き上げた、もう1つのフラッグシップシリーズ。
ブランク:曲がりを重視した低反発アクションが特徴。反面少しだけ感度は弱く、ジャーク時には軽い操作でティップが走り、軽快なジグ操作が可能。
ガイド:チタン+ステン(ティップ部はチタン、バットにステンといった具合)SiCリング。
『ジグザム ドラッグフォース』
地域別のターゲットに合わせた、特化型モデルを中心に構成したフラッグシップシリーズ
ブランク:全身にC.N.T素材をコンポジットしてシリーズ中、最高ランクのネバリ強さを実現。機種によって高弾性カーボンのモデルや、グラス100%のモデルなど多彩。
ガイド:チタンフレーム(一部ステンレスも有り)SiCリングのタイプを採用。
グリップ:4軸カーボンのパイプをリールシート部に採用。
ジギングはアングラーの操作次第で、釣果が大きく変わる釣りです。そのため、選択する道具選びから使用する際のバランスが、釣果として如実に表れてきます。たとえフラッグシップのタックルで揃えたとしても、用途とターゲットがミスマッチでは全くアタリを捉えることが出来ない事も多々あります。
天龍を含め各社が、これだけ多くのジギングロッドを出しているのは、アングラーの個性に合ったロッドを選ぶ必要が有るからなのです。
経験で良くあるのが、隣の方がバンバン釣れていて、同じ様に操作しているのにアタリが無い…というのは、タックルが何かズレてしまっているのが多いのです。
ロッドは、ジグに動きを与えるために非常に重要な役割を担うので、先に挙げたターゲットやジグウェイトから始めり、選択するロッドによって釣り方は幾通りものパターンがあります。
私も一通りの経験をしてきましたが、まだまだ発見ばかりがあります。先ずは基準を定めて、狙いに合わせたタックル選択、使い方をマスターして欲しいと思います。