日本を代表する繊維メーカーとして1951年の創業以来、あらゆる糸を作り続ける「ゴーセン」。糸一筋に歩み続けた同社はこれまでに釣り糸をはじめ、ラケットスポーツのガットや車両用繊維資材、電気資材、工業資材など多岐に渡る分野の糸で我々の暮らしを支え続けてきた。そんな70年もの糸の歴史をもつゴーセンから「原点回帰」となるフィッシングラインがリリースされた。その名は『ROOTS(ルーツ)』。昨年のPEx4に引き続き、今年は新たに8本編みのPEx8が登場。8本編みの特性を改めてゴーセンフィッシング開発部に教えて頂いた。
ROOTS(ルーツ)PEx8【ゴーセン】
釣種を選ばずマルチに使えるハイコスパPEに8本編みが登場!
高強力ポリエチレン原糸を使い、国内自社工場で製造する安心のクオリティが自慢のルーツに2021年度8本編みモデルがラインナップ。サイズ毎に強度、感度、耐摩耗性、耐久性のベストバランスを追求した設計でルアー、エサ釣り問わずPEライン4号までのタックルを使う位幅広い釣種に対応する
【スペック】
●ラインナップ:マルチカラー150m巻き0.6~2号、200m巻き0.6~3号、300m巻き0.6号~4号、ライトグリーン150m巻き0.6~2号、200m巻き0.6~2号
●価格:オープン
昨年リリースされたルーツPEx4の詳細記事はこちら
8本編みと4本編み、それぞれの違いと必要性とは?
編集部「御社の『原点回帰』であるPEライン『ROOTS(ルーツ)』にこの度8本編みモデルが加わることとなりましたが、改めて4本編みのPEのラインとの違いを教えて下さい」
ゴーセンフィッシング開発部「8本編みと4本編みの大きな違いは、ライン表面のなめらかさ。編み込んであるフィラメント(単糸)が多くなることでキャスティングした際にもガイド抵抗が少なく、飛距離が伸び、糸鳴りがしないことです」
ゴーセンフィッシング開発部「また原糸を4本編み以上に密に編み込んでいるので構造上強力は高くなります。さらに感度も上がります。
ただデメリットもあって、スムースな風合いであるがゆえに、初心者がノットを組んだ際に、しっかりと締め込まないと抜けてしまうことがあります。また原糸が細いため擦れなどに弱い。値段も4本編みよりも高価なものが多いです」
編集部「では4本編みの特徴とは?」
ゴーセンフィッシング開発部「4本編みは原糸が太くなることにより、擦れに強い。またラインの表面はフィラメントが少ない分なめらかではないのですが、そのためライン表面上に細かい凹凸があるので、ノットを組んだ際にしっかりとホールドされるので抜けにくい。そして何より安価です」
ゴーセンフィッシング開発部「デメリットとしてはなめらかでない分、キャスティングした際のガイド抵抗が大きく、またそれに伴う飛距離の低下、糸鳴り。そして感度も8本編みよりも劣ります」
編集部「強さや扱いやすさ、さらには感度やコスト感を考えるとそれぞれメリットやデメリットは出てくるんですね。現在の釣りにおけるPEラインの市場において8本編みの必要性はどれほど高まっているのでしょうか?」
ゴーセンフィッシング開発部「今まで8本編みPEラインは高価であるという点で中々選ばれにくかったのですが、近年各社ラインメーカーともにコストダウンされ、リーズナブルな4本編みの価格に近づきつつあります。最近ではコスパ重視でPEラインを選んでいたユーザーの方々も、スムースで安定感のある8本編みを使用される方もどんどん増えて需要は高まっています」
編集部「PEラインが普及されはじめて20年、10年前まではかなり高価だった8本編みもだいぶリーズナブルになってきたんですね。そんな8本編みのPEの中でも注目なのが『ルーツPEx8』ということですね!」
PEラインにおける「3つの課題」を克服し、トラブルレスを実現!
編集部「では今回リリースされる『ルーツPEx8』の特徴を教えて下さい!」
ゴーセンフィッシング開発部「コンセプトとしてこのルーツというのが汎用性の高いPEラインで、ビギナーからエキスパートまでどの層のアングラーでも扱いやすくてトラブルが少なくなるように設計しています。我々ゴーセンの企業理念として『1本の糸から豊かな暮らしを想像する』というモットーがあります。釣りという遊びの中でラインは大きな責任があると考えています。糸のトラブルでお客様の大切な時間を奪ってはいけない、ゴーセンの理念に沿いながら、トラブルなく安心して使って頂けるということで『ROOTS(ルーツ)』という商品名になっております」
ゴーセンフィッシング開発部「また、これまでに弊社がPEラインを作り続けてきた中で、ユーザーからも多くの声を頂きました。その中でも特に下記の3項目を解消することこそが、ルーツには必要ではないかと考えたのです」
- 高切れ(ショック切れ)の軽減
- 摩擦切れ(根ズレ)軽減
- 色落ち、バックラッシュの軽減
ゴーセンフィッシング開発部「トラブルをクリアするための設計としてまず注目したのが『高切れ』。これに対しては高密度で編み込む『MPX製法』、テンションを高めて編み込む『HDX製法』という2つの大きなアプローチをしています。MPX製法は原糸を高密度に組み上げることで衝撃吸収性をアップしています。HDX製法はPE原糸をたわみなく正確に組み上げることで、編み込まれている構造を安定化させ、糸本来の強力を発揮することができます」
ゴーセンフィッシング開発部「毛利元就『3本の矢の教え』のように、3本しっかり束ねられている矢は中々折れない。高切れをするラインは正しい張力で組まれていない、複数本編み込まれていても力を発揮しているのはその中の数本だったりと組みのバランスがズレているんですね。なのでしっかりと糸を丁寧に正確に組み上げているのがルーツxPE8の特徴のひとつです。
次に『摩擦切れ』。よく根ズレに対して擦れて切れるというのは多いトラブルなのですが、それに対してのアプローチが『GT加工』となります。
PE原糸はそのまま使っても糸の力はでなくて、PE素材を鍛えることで強度や耐熱性を高めることが出来るんです。GT加工にすることにより、原糸が鍛えられ、耐摩耗性もアップします。この点が海外製の糸の違いで、これが出来るかどうかによって糸メーカーの実力が変わります!
耐熱性を上げる理由としては糸切れの原因のほとんどは熱による摩擦切れです。PEは溶けやすい糸で、ライターであぶってみればわかりますが、すぐに切れてしまいます。GT加工では耐熱性もしっかり高めています。また細番手ほどフィラメントを強いものを選び、かつ補強も行っております」
ゴーセンフィッシング開発部「3つ目に『色落ちやバックラッシュの軽減』についてですが、元々PEは色が染まらない繊維ですので樹脂に色の含量を入れてコーティングすることで色をつけています。
PE自体樹脂がつきにくくて剥がれやすい、よって色落ちしてしまう。ラインメーカーにとっては永遠の課題でもあったわけなんですが、弊社が長年実験を重ねていった結果、色落ちしにくい樹脂を見つけました。
しかしそれでも長く使用していると剥がれてしまうので、PEの表面を樹脂が付きやすいよう改質処理を組み合わせています。他と比べても落ちにくさはトップクラスだと思います」
ゴーセンフィッシング開発部「また仕上げにはシリコンコーティングを施しており、静電気が起きにくくすることで釣りはじめのバックラッシュを大幅におさえております。もともとバックラッシュも静電気による摩擦が大きな原因なのでシリコンコーティングで帯電を軽減させています。
この3つをルーツPEx4と同じく、サイズ毎に設計することでトラブルの解消へと繋げています。量産化やコストダウンのことを考えると、全サイズ同じ設計で作ったほうが効率がよいのですが、それをやるとどこかのサイズから歪が出てきてしまう。0.6号は良かったけど、3号は全然良くなかったなど。弊社ではサイズが違えば別商品になると考えていて、1サイズごとに最適な設定で作っているのでどの釣種においても高いパフォーマンスを実現することが可能です」
ルーツPEx8は幅広い釣種に対応する「自由度」が高いハイコスパPEライン!
編集部「ハイクオリティなオールマイティPEラインとしてリリースされるルーツPEx8ですが、御社からリリースされている既存のPEのラインとの違いを教えて頂けますでしょうか?」
ゴーセンフィッシング開発部「ルーツPEx8はおっしゃるとおり、オールマイティなベーシックPEラインになります。他の専用PEラインはパラメーターをジャンルや魚種別に大きく振っています。例えばライトゲーム用であれば、より感度に特化した設計で作っているので、ビギナーの方が使うというよりは、ある程度やり込んだアングラーさんに向けた仕上がりになっています」
編集部「なるほど、『この魚種にはこの特性がいい』みたいなものがあれば教えて下さい」
ゴーセンフィッシング開発部「例えばシーバスでいうのなら、遠投性が重視されるシーンが多いので、4本編みよりも8本編みのほうが良かったりしますね。また、キャスト回数が多くなることを考えれば、柔らかいとどうしてもティップへの絡みなども多くなるので、ライン自体の硬さが必要にもなってくるかと思います。また、エギングもシャクったときの糸鳴りや飛距離の点において、8本編みのほうが好まれています」
ゴーセンフィッシング開発部「弊社としてラインは様々な特性のバランスを底上げすることが大事と考えております。アングラーそれぞれが求めるPEラインは10人10色だと思っていますので。その中でもルーツPEx8は自由度が高いラインであるかなと思います。ルーツの特設サイトでは釣種別の対応表もありますので是非そちらも参考にしていただければと!」
釣種別をの対応表を見ると、ショアのみならず、オフショアの釣りにも対応可能。8本編みならではの特性を持ちつつも、ビギナーにも手が届きやすく、使いやすいのが『ルーツPEx8』なのだ。
次回はいよいよルアマガプラス編集部員がルーツPEx8を実釣にてインプレッション!果たして釣果を上げることができるのか!? そちらも乞うご期待!
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