人の目から見てもわからない、不思議なパワーを秘めた『I字系』。ハイプレッシャー下のバスが驚くくらい簡単に口を使ったり、なにもないところからワラワラとデカバスが集まってきたり…。その性能にさらに磨きをかけ、また異質とも言える特徴を持った次世代I字系がエバーグリーンの『ルーフェン』だ。今回はその特徴から使い方、シークレットテクを、吉川永遠さんが解説してくれたぞ。
若き『トップ50』トーナメンターのシークレットテクが明かされる!?
【Profile】
吉川永遠(よしかわ・とわ)
奈良県出身。若干22歳にして、JBトップ50に参戦。初戦となった遠賀川でも最終日に進出するなど、その実力は折り紙付きの若きエバーグリーンプロスタッフ。ホームフィールドである津風呂湖には中学生の頃からレンタルボート釣行で通い込み、高校進学後にはチャプターにも参戦している。表層の釣りと魚探を駆使した釣りが好き。今回紹介する『ルーフェン』は1年前からプロトモデルを使用。
1年使い込んだ吉川さんが明かすルーフェンの実力とは?
ファクト ルーフェン(エバーグリーン)
【Spec】
●全長:7cm
●重さ:3.6g
●タイプ:フローティング
●潜行レンジ:水面~水面直下
●リングサイズ:#1(フックアイ)
●フックサイズ:EGトレブルマジック(フッ素コート)#8
●価格:1,650円(税込)
『ファクト ルーフェン』の基礎情報は開発者である福島健さんの記事でチェック!
引波が今までのI字系と違う!?
I字系と言えば、水面直下をスーッと引いてくることで、派手なアクションはなくともバスを不思議と引きつけるルアー。
しかし『ルーフェン』は、従来のそれらとは少し異なる特徴があるのだという。
吉川「毛筆テールが生み出す波紋というか、引波が独特なんです。どういうことかといいますと、他のI字系ルアーに比べて水面に起こるモヤモヤがより長い時間残るんです」
水面や水面直下をルアーが通ると水面が盛り上がるように動くが、その継続時間が長いのだ。
そしてその効果は、ライブスコープでバスの動きを見ることで実感できたとか。
吉川「ルーフェンを引いているときに、明らかにこれまでよりも深いレンジの魚が反応しているのがわかったんです。感覚的には、水深3mラインにいる魚を表層まで引っ張り上げて喰わせられますね」
毛筆テールという唯一無二の武器を手にしたルーフェンは、これまでのI字系プラグよりもさらに広範囲から魚を引き寄せられるようなのだ。
キャスタビリティに優れる上にトラブルレス、拡張性も!
I字系といえば軽量プラグが故に、そのキャスタビリティも大きなポイントとなる。
ルーフェンはどうなのか?
吉川「飛行姿勢が安定していてよく飛びますよ。それとフックの位置が絶妙で、ラインに絡むことがほとんどありません」
いくらよく飛んでも、フックがラインを拾ってはそのキャストは無駄になる。トラブルレスであるということはキャストをより有効なものにしてくれるわけだ。
またルーフェンは拡張性の高さという点においても特徴的であるといえる。
吉川「フックは通常、お腹のトレブルが一つですが、ボディ最後尾にもアイがあるので、そこにフックを取り付けることができます。とくに#10くらいのダブルフックがオススメなのですが、テールをついばむような超ショートバイトも捉えることが可能になりますよ」
なお、テールにフックを付けるとゆっくり沈むようになり、水面や水面直下だけでなく、水面下30cm程度までを引くことができるそうだ。
吉川「ただしその際には、フロントのフックやスプリットリングも少し大きめのものに変えて水平に近い水中姿勢をキープ、ルーフェン本来の泳ぎを損なわないようにしています」
具体的な使い方
タックルはPEスピニング
吉川「タックルはPEラインを使ったスピニングです。ロッドはフェイズ PCSS-65L+ スピットファイア(エバーグリーン)で、PEライン0.4号に5lbのフロロカーボンラインを1mくらいリーダーとしてFGノットで結束します。FGノットなら、リーダーがガイドを通るときにもヌケが良いですよ」
また吉川さんは、ルアーとの結束はスナップを使用せず、ラインアイに直結するのだという。
吉川「スナップを使うと、意図しない動きのブレが生じてしまうんですよね。それを避けるために、リーダーはルーフェンのアイに直接結びます。ノットはお好みで良いと思いますが、端糸はしっかり短くしておきましょう」
I字系の基本と喰わせの秘訣
吉川「基本的には使い方は普通のI字系と大きな違いはありません。ベイトが多く集まりそうな場所、例えば水通しのいい岬周りなどでロングキャストし、毛筆テールを使った波紋を水面に出して巻いてきます。また、バスが水面まで出きらないと感じれば少し沈めたりもします。引波が立たないレンジを引いていても毛筆テールはピリピリ細かく振動しているので、ルーフェンは沈めて引いても良いですね」
そしてここでルーフェンのキャスタビリティの良さが重要になってくる。
吉川「ルアーの進行方向にボートやアングラーが見えてしまうとバスが逃げてしまうことがあるので、距離を取ったアプローチが必要になってきます。ルーフェンならロングキャストしやすいので、バスとアングラーの距離を保ちやすく、バスの視界にボートやアングラーが入らないようなアプローチがしやすいんですよ。また、チェイスがあった時に距離があれば、色々と喰わせの誘いを入れる時間があるので、そういった点でもルーフェンのキャスタビリティは有効に働いてくれます」
一方、ルーフェンを使う上で注意すべき点もある。
吉川「ルーフェンの引波を活かすために、水面に浮かんだラインによる引波や波紋をなるべく出さないように注意したいです。そのためにはラインが一直線になるようにラインメンディングをしっかり行い、ラインで水を動かさないようにして引いてきましょう。また、例え水深の深い場所にいるバスであっても、目線の上にラインが見えるのを嫌がることは多いので、バスのポジションをイメージし、ラインがバスの真上を通らないようなトレースコースでルアーを引いてくることも重要です」
不慣れな人にはイメージ湧きにくいI字系のリトリーブスピードだが、ルーフェンはどうなのだろうか。
吉川「ルーフェンの場合は、水面に引波が出る一番遅い速度で巻くのが基本になります。そしてチェイスがあれば、そこから口を使わせるためにさらに遅い波紋が出ないスピードに、ときにはドリフトで漂わせるような速度まで落としていくこともあります」
このスピード変化のさせかたにこそ、I字系ルアーを喰わせるための秘訣があると吉川さんは語る。
吉川「バスがルアーの後ろに付いて来たのを見てリトリーブスピードを落とす人は多いと思います。でもこれだと仕掛けるにはもう遅い。結局バスとルアーの距離が縮まらないことが多いんです。もっと早い段階、バスがルアーを追い始めた瞬間から徐々にリトリーブスピードを落とすことができれば、自然とルアーに追いつかせて口を使わせやすくなります。なので、そのタイミングに気付けるようにしっかりと水面、水中を見ることが重要になります」
とはいえ、リトリーブスピードを遅くするだけが全てというわけでもないらしい。
吉川「そういったタイミングで逆にリトリーブスピードを速くすることもします。また、リールは巻かず、ボートを動かすことでルアーとバスと距離を保ち続けることもあります。そのへんはその時の魚の反応次第にもなってきますので色々と試してみるしかありませんが、ロングキャストできるルアーでバスのチェイスにいち早く気付くことができれば、1キャストでも2パターン以上の誘いができて、よりその日にベストなパターンを見極めやすくなります」
リーダーでレンジを調整!?
基本的に水面で使うルーフェンだが、より良い釣果のために、数cm単位でレンジを刻むこともあるという。
吉川「リアフックを取り付けたりウエイトを貼ったりしてレンジ調整をする方法もありますが、ラインの重さを利用することで微妙に泳ぐレンジを変える方法があります。タックルを紹介した際にリーダーはフロロカーボン5lbを1mとしましたが、これはあくまで基準。リーダーの太さと長さを変えてレンジを調整するんですよ」
フロロカーボンラインのリーダーは太いと重く、細いと軽い。また長いと重く、短いと軽い。これを利用するのだという。
吉川「例えば、水面から2~3cmのレンジを泳がせたいならリーダーを6lbにして、といった具合です。僅かな差ではありますが、これで釣果が劇的に変わることもあるんです」
アフターから初夏が狙い目!
吉川「ルーフェンが有効な季節はズバリ、アフタースポーンから初夏にかけてです」
ルーフェンはコンパクトなシルエットでゆっくりとしたスピードで使うルアー。小さい虫やエビ、小魚など、遊泳力が低い小さな生物がバスのメインベイトとなる時期に有効なのだ。
吉川「ベイトフィッシュが大型化する傾向にあるタイミングは、他にもっと効くルアーがあると思います。ただ、水面付近に小型のベイトフィッシュが群れている状況であれば、季節にかかわらず有効ですね。また、表層系ルアーのため、水温の影響でベイトフィッシュが深い水深にしかいないような時期は苦手です。でも、そんな時用にイチオシの使い方があるんです!」
本当に明かすの!? マル秘テク『ルーフェンキャロ』
すでに1年ルーフェンを使い込んだ吉川さんは、驚くべき使い方を発見したのだという。
吉川「シャッドをキャロライナリグで使うじゃないですか。あれのルーフェンバージョンです」
その使い方を見つけたのは、昨年の入鹿池でのことだった。
吉川「真夏のことです。魚探で水深7~8mにベイトの群れとバスが写ったんですが、普通の釣りでは反応しない。唯一、ルアーを回収するときにバイトがあったくらい。そこで、この群れの中を回収するぐらいの高速で引ける方法を探したんです」
そこでルーフェンのキャロを試したところ、これが大当たりだったそうだ。
吉川「使い方は、高速で巻いてピタッと止めてを繰り返す感じでした。シャッドキャロも試したのですが、リップによる水押しを嫌っていたようで反応が悪かったんです。でも、ルーフェンなら、キレイにI字系らしく水を動かしすぎずに泳ぎ、なおかつ速巻きでもバランスを崩さなかったんでばっちりハマりました!」
通常は表層で使うルーフェンも、この方法を使えばもっと深いレンジに対応するわけだ。
『ルーフェン』絶賛発売中!
多彩な使い方ができるルーフェンだが、実は吉川さんもまだトーナメントでは大きな結果を出していないのだという。
吉川「昨年はルーフェンが手元に来てからのトーナメントがコロナの影響で軒並みなくなってしまいまして(笑)。なので、これからのシーズンのトーナメントで本格的にルーフェンを使うのは今年が初。楽しみです!」