MACCA(読み:マッカ)という名の聖剣が誕生して早6年。今や3シリーズ、全25モデルを数えるまでに至った人気バスロッドとして、世に広く知られているだろう。当企画は全4回に渡り、同ロッドがなぜ今注目されているのかを紐解いていく。初回はマッカの生みの親にしてハイドアップ代表の吉田秀雄さんが登場だ。
【Profile】
吉田秀雄(よしだ・ひでお)
国内最高峰トーナメント・JBワールドシリーズ(現トップ50)初年度の1997年から、実に23年に渡り最前線の現場で活躍。2019年を以って勇退の後、その溢れる経験値は自身が主宰するハイドアップの製品へフィードバック。現在は霞ヶ浦・WBSを主戦場とするコンペティターとして現役だ。
全8本で全てが完結するオリジナル! 通称『青マッカ』の超ポテンシャル
吉田「バスフィッシングって、いつの間にか難しくなり過ぎていた。そんな感じがするんです」
ハイドアップ代表・吉田秀雄さんは冒頭から、現代のバスフィッシング事情にいきなりの警鐘を鳴らす。
吉田「必要な竿を、必要な数だけ。迷いなく、ドンズバで釣りができれば、釣りがもっと楽しくなると思うんです」
ホーム琵琶湖で腕を磨き、最高峰シリーズのトップランカーとして名を連ね、国内屈指のトーナメントプロとして20年超の歳月が経過した2015年のこと。吉田さんはバスフィッシング界に新たな風を吹かせるべく、オリジナルロッドシリーズを開発した。
それが『MACCA』(読み:マッカ)。
現在では派生シリーズも存在するため、そのオリジナルシリーズは印象的なロゴとコンセプトカラーから、いつしか『青マッカ』と呼ばれるようになったのは知られるところだ。
吉田「この8本があれば、西でも東でも、広大な水系でも少規模なため池でも、どんなフィールドでも対応できる。いつでもどこでも、この8本。もう迷うことはない」
ロゴには『8 for the pride』の文字。8色の星が日本全国の全方位へと飛び立った。バスフィッシングの本質をすべてのアングラーへと届けるために。
「気持ち良く、投げやすい」 基本にして王道の究極コンセプト
吉田「マッカのコンセプトとして根本にあるのが、どんなキャスト方法でも『気持ち良く、投げやすい』ということ。サイドからでも、アンダーのピッチングでも、もちろんオーバーヘッドのフルキャストでも」
これが全8モデルに共通する『青マッカ』の基本コンセプト。
1990年代から自身が理想とする数々の開発モデルを手掛けてきた吉田さん。長年の集大成的結論がそこにある。
吉田「釣り方を絞り込んだ特殊なモデルも作ってきました。しかし、それだけが竿じゃない。初めて青マッカでルアーを投げた瞬間、誰もに『なぜこんな気持ち良いんですか?』と言ってもらえる。その言葉が青マッカの全てを物語っていると言ってもいい」
ルアーの荷重をしっかりとブランクが受け止め、遥か彼方へ、思い通りのコースへと弾き出す。どんなアングラーのどんなキャストにも抜かりなくアジャストするのが、青マッカというバスロッドなのだ。
吉田「代表作ですか? 8本全て…ですが(笑)、私が特に最初に手にして欲しいと思うモデルは2本存在します」
それが『HUMC-71M+』と『HUMC-610MH+』なのだという。
まずは前者から、その類稀なるポテンシャルをご解説いただくことにしよう。
HUMC-71M+:多段階可変テーパーが実現する全コンディション対応ブランク
『HUMC-71M+』。
モデル名を読み解くと、ベイトキャスティングモデル(=C)で、全長は7ft1in(=約2.16m)。パワーランクはミディアム・プラス(=M+)で、ミディアムとミディアムヘビーの中間クラスと考えていい。
吉田「ひとことで言うなら、各種のHUクランクやスピナーベイト、チャター系を始めとしたクランキングに抜群の相性を見せる1本です」
吉田さんの主宰するハイドアップ本社が琵琶湖畔に立地するため、西日本発信のタックルメーカーというイメージは強いかもしれない。となれば、このクランキングモデルもウィード攻略が主目的になるのか。否、異なる。
クランクベイトのトリプルフックが捕らえたウィードトップを切って回避すべく、ソフトなティップと張りのあるベリー〜バットというセクション分けのF(ファスト)テーパーではない。ましてや最初からブランク全体が曲がり続けるグラス素材でもない。
吉田「曲がりしろを先端だけに集中させたわけではなく、多段階に曲がっていくレギュラーテーパーに仕上げることに成功しました」
吉田さんは、71M+のテーパーを人間の腕に例えて、以下のようにわかりやすく解説してくれた。
吉田「最初に何かに当たった時は手首だけがすぐに曲がる。そこまではFテーパーと同じ。ところがひとたび魚が掛かれば、手首に続き肘も曲がり始め、さらには肩も曲がっていく」
荷重に応じて、ブランクは多段階かつスムーズに曲がり、バイトがあれば魚の口を弾かずしっかりと乗せる、食い込ませる。またブランクが発揮する存分なパワーが大型にも主導権を与えず、難なく仕留めることも可能だ。
71M+を始めとした、この画期的なテーパーは、いわば『多段階可変テーパー』と呼んでもいい。
この独自のテーパーは、リトリーブからファイトまでの間に優位性を発揮するだけではない。アングラーの動作で初期段階となるキャスト時にも大きなアドバンテージを与えているのだ。
軽量級から重量級までを網羅した突き抜けるキャストフィール
吉田「荷重に応じて、段階を踏んで曲がっていくテーパーは、キャストフィーリングを大きく左右する」
先に吉田さんは青マッカの基本コンセプトとして『気持ち良く、投げやすい』と語ったが、その大きな要因となるのが、その『多段階可変テーパー』だった。
吉田「いろんなウェイトのルアーを乗せて投げやすい。軽いルアーであれば先端だけを曲げて弾き出し、中量級であればベリーを、そして重量級であればバットまで」
『HUMC-71M+』の対応ルアーリストを見ると、スピナーベイトやチャター系の他に、クランクベイトのHU-70・150・200・300・400と表記がある。
最軽量のHU-70は約8.6gだが、最重量のHU-400に至っては長く幅広なリップを伴って実に約17.5g。各モデルの2〜3桁の数字は潜行深度(cm)を意味するが、シャローからディープまでの多彩なクランクに対応することがわかるだろう。
吉田「(極端な例を除き)どんなサイズ、どんなウェイトもしっかりと乗せて飛ばすことができる」
この突き抜けるフィーリングを一度でも体感したアングラーは『青マッカ』の魔力に陶酔。他では味わえない、攻守に優れたブランクの虜となることは想像に難くないだろう。
またソフトなティップセクションは、ルアー本来のアクションを妨げることなく最大限の持ち味を発揮。超軽量かつ高感度なチタンSiCガイドが、ティップ部のポテンシャルを後押ししている。
一方のベリー〜バット部にはステンレスSiCをセミマイクロガイド仕様でオリジナルセッティング。強靭かつ最適なトータルバランスが絶妙なテーパーデザインに貢献しているのも確かだ。
細部に至るまで妥協なく設計し尽くされた『HUMC-71M+』。それはこのモデルに限らず、マッカ全てのモデルに共通することは言うまでもない。
次回は、もう1本の『青マッカ』登竜門的モデル、『HUMC-610MH+』について語っていただくことにしよう。