ハイドアップが輩出する人気バスロッド・MACCA(読み:マッカ)の魅力を紐解く当企画。第2回目は、再び同社代表の吉田秀雄さんが登場する。前回の名作クランキングロッド『HUMC-71M+』に引き続き、今回は『HUMC-610MH+』について、その詳細を解説していただくことにしよう。
【Profile】
吉田秀雄(よしだ・ひでお)
国内最高峰トーナメント・JBワールドシリーズ(現トップ50)初年度の1997年から、実に23年に渡り最前線の現場で活躍。2019年を以って勇退の後、その溢れる経験値は自身が主宰するハイドアップの製品へフィードバック。現在は霞ヶ浦・WBSを主戦場とするコンペティターとして現役だ。
『HUMC-71M+』に関して語っていただいた前回の記事はコチラ!
ハイドアップ創立10周年の節目! 全方位を視野に入れた開発体制へ
ハイドアップのオリジナルバスロッド『青マッカ』が登場して6年目、同社の創設から数えて今年2021年で実に10周年を迎える。
代表の吉田秀雄さんはこの10年という節目に、ここで新たな決意を表明する。
吉田「これまで弊社はどちらかというと、ボートアングラーを始めとした上級者向けのプロダクトが多い、そんなイメージが強かったかもしれません。もちろん従来通りのコンセプトは継承しながらも、現在はカテゴリーを問わず、陸っぱりアングラーを始めとした新たなユーザー目線でのモノ作りにも注力し始めています」
大きな転換期としての今年、同社は様々なカテゴリーで様々な取り組みを見せていることは知られるところだろう。
近年ではソルトウォーター界に進出。ソルト専用の『HUエヌグリーディー』を始め、既存の人気モデルとして知られるHUミノーやスタッガーワイドなどハードソフト問わずソルト向けカラーを揃え、各地で認知度を高めている。
またバスフィッシング界では今、陸っぱりの救世主として登場した超絶ド遠投を可能にする『スタッガーローラ2.6イin』が巷で大いなる話題を呼んでいる。前人未到の対岸へ、その高比重かつほぼ飛行時無抵抗の球状体が余裕の到達。不意を突かれたニュートラルなバスが思わず口を使うことは必至だろう。
吉田「実はロッドに関しても、新たなシリーズを開発中です。そうです、陸っぱり向けのシリーズです」
何と、マッカに新たなシリーズが! 当サイトで初めてのリークとなる新シリーズは、既にテストを開始して順調な仕上がりを見せているのだという。その詳細はまたいずれお届けしたい。
吉田「今回解説する『HU-610MH+』は、青マッカの中でも最後発となる8モデル目。現在の弊社の展開へと続く兆しを見せていたモデルでもあります」
レングスは誰もが熱望するロクテン。しかし、パワーは定番のMではなく、MH+へと設定したのはなぜだったのか。
そこには、ハイドアップ代表の吉田さんならではのシャープな目線が輝いている。
HUMC-610MH+:全長は定番のロクテンだがMではなくMH+である理由
吉田「今から5〜6年前と言えば、ルアーウェイトの基準が徐々に変化しつつある時期だったことを記憶している方も多いと思います」
全国的にフィールドが過密化する一方で、個体の大型化も比較的顕著になっていった時期のこと。対して、使用するルアーは一部を除いてフィネス化することはなく、むしろ大型化や重量級化が進んでいったのも事実だ。
加えて、琵琶湖という日本最大のバスフィールドがさらに注目を集めていった。特大の個体を相手にウィードや魚礁など難攻不落なストラクチャーで戦う必要性も高まっていた時期だった。
吉田「Mではパワーが足りない。もはやMH、いやさらに強いMH+でようやく国内の全てのフィールドと対等に戦える。そんな思いで開発を着手しました」
パワーが増せば、扱えるルアーの幅は重量級限定で狭まると考えるのは早合点。ハイドアップがそう単純なモデルを仕上げることはない。
吉田「同じMHパワークラスのロッドに『HUMC-67MH』があります。こちらと比較してみると、その差がわかりやすいと思います」。
はたして2本のロッドにどんな差異が存在するのだろうか。
『曲がる=強い』というロッドの本質 『デジーノ×ハイドアップ』の本気
吉田「67MHが素うどんだとしたら、610MH+はトッピング全部盛り。そう言ったら、わかりやすいですか?(笑)」
「例えるなら」と前置きして、吉田さんはこう明快な結論を述べた。
610MH+に比べ、3in短い67MHはブランクに張りを持ち、俊敏な操作を要求される釣りにマッチするモデル。例えば、テクニカルな操作が必要なジャークベイトやトップウォーター、またリニアなレスポンスが求められるフットボールジグでも優れた操作性を発揮する。
その一方、610MH+は同様のルアーにも対応しながら、さらに幅の広いルアーにもマッチするのだという。これが全部盛りの所以だ。
公式サイトの使用ルアー&リグ表記では、スコーンリグ、スイムベイト、ジグ、スピナーベイト、テキサスリグ、ヘビーダウンショットリグと実に多彩。硬軟問わず、多くのアングラーが求める釣りはほぼ網羅している。
吉田「長くなった分、ティップがしなやかに感じます。とはいえ、ベリー〜バットは荷重に応じて曲がり込みつつも存分なパワーを発揮。そうです、レギュラーテーパーに仕上げています」
前回解説した『HUMC-71M+』にも通ずる、多段階可変テーパーを顕著に感じ取ることができるもう1本がこのモデルなのだ。
吉田「現代フィールドで使用頻度の高い、重め強めのルアーの数々がこの1本で対応可能です。ボートはもちろん、竿を持ち歩く数に限りがある陸っぱりでは特に重宝するモデルです」
パワーバーサタイルと簡単にひと括りにすべきモデルではない。研ぎ澄まされたテーパーが成せる強いアドバンテージだ。
吉田「『曲がる竿』の優位性です。荷重に応じて曲がってくれるからこそ、気持ちの良い飛びを体感でき、ファイトでは魚を無駄に暴れさせることなく安心して獲り込める。それが『DESIGNO』(デジーノ)ブランクの、そして『マッカ』の本領なんですよ」
開発協力メーカーを明らかにしないブランドも多い中で、敢えて明言することを選んだハイドアップ代表。すべてのマッカは『曲がる=強い』を形にするデジーノ協力モデルだ。
吉田「テーパーの設計次第で、竿は無限の可能性が広がります。デジーノを軸にハイドアップの思想を盛り込むことで、ボートではもちろん、陸っぱりでも多大なる威力を発揮してくれるはずです」
次なる時代のバスフィッシングがここから始まっていく。
『青マッカ』『赤マッカ』そして『赤マッカ シグネイチャー』へ
ここまでは吉田さんにオリジナルシリーズである通称『青マッカ』の2モデルについてご解説いただいた。当企画の前回冒頭でもお伝えした通り、マッカには現在、同シリーズを含め計3シリーズが存在することはご存知だろう。
それが『レッドシリーズ』(=赤マッカ)と『レッド シグネイチャー』(=赤マッカ シグネイチャー)。共にその文字通り、ブランクカラーを象徴する通称だ。
吉田「『赤マッカ』は、青マッカでは補えない特殊用途を目的としたシリーズ。あれば有利、なくては絶対不利となるシリーズです」
ショートロッドやグラスモデルに、パンチング用最強モデルまでも加え、2ピースや5ピースさえもラインナップした全9モデル。青マッカの基本コンセプトを受け継ぎながらも、釣法や使用用途に応じたユーザーの要望に応えるシリーズモデルだ。
もう一方の『赤マッカ シグネイチャー』とはどんなシリーズなのか。
吉田「ウチ(=ハイドアップ)のプロスタッフ、永野総一朗と武田栄喜が、日々戦う現場からフィードバックされたノウハウを注ぎ込んだモデルたち。現在は、研ぎ澄まされた全8モデルが揃っています」
8モデルでゲームが完結するオリジナルの青マッカと同数まで、既にラインナップを増やした『赤マッカ シグネイチャー』。赤マッカ両シリーズは、今後さらに充実度を増していく模様だ。
今季は永野さん開発による4&5モデル目がリリース。武田さん開発モデルも既に2モデルが存在する上に、新たなるモデルのテストもスタートしたようだ。
吉田「『赤マッカ シグネイチャー』の武田&永野モデルに関しても、それぞれ聞いてみてください」
次回も見逃せそうにない。ぜひお楽しみに。