2021年、第2世代へとフルモデルチェンジを果たしたDAIWAバスロッドの最高峰『STEEZ』(読み:スティーズ)。名機ひしめくラインナップの中でもひときわ異彩を放っているのが、「Shore Competition(=SC、ショアコンペティション)」と呼ぶ“陸の競技仕様”。ここでは最多陸王・川村光大郎さんが磨き上げた21SC最新モデルの1本を解説する。
【Profile】
川村光大郎(かわむら・こうたろう)
初代陸王にして、18・レジェンド・20と4度もの栄冠を勝ち獲った最強陸王。自身のスタイルを研ぎ澄ますべく立ち上げたSTEEZ・SCシリーズは、21発表の2モデル(21LIGHTNING66、21FIREFLASH)で第1章が完結した。
現代が求めるクランキングを完遂すべく登場したSCベイト
川村「陸という限られた条件の中で、釣り勝てる竿。いわば“攻めのバーサタイル”。自分の釣りを5本で完結したい」
2016年にスタートした陸のスペシャリティロッド、STEEZ SCシリーズ。16FIREWOLF、18KINGVIPER、19SC WEREWOLFと時代を揺るがす3本の名竿を築き上げてきたのは、そう、最強陸王・川村光大郎さん。そんな川村さんが次なるモデルとして見据えたのがここで解説する『STEEZ SC C66ML-G “LIGHTNING66”』だ。
艇とは異なり、持ち運べる本数が限られる陸というステージ。野を駆け抜け、道無き道を進み、辿り着いた先でもう後戻りはできない。目の前に広がるシチュエーションに対して、如何に己の独創力を発揮できるか。
川村光大郎さんが言う「攻めのバーサタイル」とは、そんな局面で最大限の手駒を繰り出せる相棒を意味する。ありきたりのバーサタイルではない。投げる・誘う・獲る。すべてにおいて最高峰を追求するのがSCシリーズなのだ。
川村「ところが、バーサタイルロッドにおいて、最も対応しにくいルアーのひとつがクランクベイト。ワームに求められる要素を追求すれば、巻きとは相反するブランクが形作られてしまう」
ワームの釣りでは鋭い弾道でリグを飛ばし、微かな水中の変化をも感じて掛けるべく、ブランクには反発力が求められる。
一方の巻きにおいては、その反発力が仇となり、バスがバイトして反転した際に食い込ませるまでの間を作りにくい。
川村「バーサタイルには組み込む余地がない。SC全5本の1本として、どうしても『ライトニング66』が必要だった」
川村さんが求めた巻きロッドの開発が始まった。
食い込みの良いグラスティップを低弾性カーボンにコンポジット
川村「巻きロッドを開発する上で、ブランク素材の選択肢は3つ。最初から決め付けずに、すべてをテストした」
まずはグラス素材。柔軟性に富み、クランクを初めとした引き抵抗の強い巻き物に対してブランクが吸収力を保ち、アングラーの負担を軽減。ところが、現代において巻きの主軸のひとつ「波動を抑えたシャッドクランクでは手元に振動を伝えにくい」結果となった。
次に低弾性カーボン。Low Modulusと呼ばれるDAIWA独自のテクノロジーは、シャッドクランクで投げにも巻きにも抜群の相性を見せた。ところが「引き抵抗の強いクランクではブランクが負け気味になる」のだという。
2年の歳月を経て、最終結論として浮上したのが、グラスコンポジットだった。
SVFグラスのしなやかなティップを持ち、ベリー〜バットには前述のLow Modulusをセッティング。しなやかなティップは存分な食い込みを見せた後、全体的に反発力を抑えた組み合わせがより曲がり込む。
グラスティップが受けた振動は手元のカーボンが増幅して、手元へと明確に伝達。レギュラークラスのクランクベイトはもちろん、シャッドクランクへの対応力も高めたのだ。
川村「乗りの良さ、バレにくさは及第点。ただし、それだけが巻きロッドに求められる条件ではない」
川村さんがライトニング66に求めたさらなる条件とは何か。
「巻きは食い込みだけではない。キャストの正確性も大切な要素」
川村「単に反発力を落として、食い込みの良さを高めただけではない。巻きにおいて絶対条件となるキャストアキュラシーを突き詰めた」
キャストの正確性はワームの釣りだけに求められる要素ではない。
川村「むしろワームやジグはスナッグレス性が高く、多少のキャストミスに大きな影響はない。対して、クランクを始めとしたトリプルフックがむき出しのルアーこそ、精度の高いキャストが求められる」
SVFグラスとLow Modulusのコンビネーションは、X45フルシールドで最外層から全身を締め上げ、ブランクの軸ブレを抑制。シャープかつアキュラシー性に優れたキャストを実現するモデルへと昇華した。
川村「いわば、一見しなやかなブランクに背骨が入った。この構造による恩恵は大きい」
対応ルアーはシャッドクランクを初めとした小型から、レギュラークラスはもちろん、2ozクラスの羽根モノも網羅。ルアーウェイトは3.5〜21gに設定。
川村「多少オーバーしても問題ない。なぜならそれがグラス、そして低弾性カーボンの懐の深さだから」
全長は6ft6inに設定。時にダブルハンドで遠投、時にシングルでコントロールキャストを両立するレングスに仕上がった。
すべてにおいて最高峰妥協なきSCシリーズ
川村さんのこだわりはブランクのみではない。すべてのディテールに妥協はない。
グリップは従来のSTEEZで採用されてきたセパレートのEVAではなく、コルク素材のストレートを採用。やや短め、かつエンドはラウンドタイプを採用して、軽快なキャストを実現すると共に身体への干渉を軽減。
リールシートは新型エアビームシートを採用。自然に握り込みやすく、指の移動も容易なトリガーは川村さんの発案。STEEZ第2世代全モデルに共通するパーツとなった。
さらには、ブランクもまたブラックではなく、「粘り強さ」をイメージした“川村ブラウン”へとカラーリング。
川村「ひと目で、そのロッドの特性までもがわかるモデルにしたかった」
車内ではシックなブラウンでその時を待ち、ひとたび太陽光を浴びれば艶かしい輝きを放って類稀なるポテンシャルを発揮。そんなイメージが湧き上がる。
巻きの究極ロッド『ライトニング66』。現代の巻きを象徴する1本がここにある。
【川村さんのおすすめセッティング】
- ロッド:STEEZ SC C66ML-G LIGHTN
- ING66
- リール:STEEZ SV TW1016SV-HL or STEEZ CT SV TW700SHL
- ライン:STEEZフロロ type-フィネス10lb〜type-モンスター14lb
ライトニング66に組み合わせるのは、STEEZオリジナルのギア比6.3とCTの7.1。ハンドル1回転67cmと66cmで、自身の巻き感に合わせたセレクト。
川村「CTは10lbを組み、シャッドクランクとの相性が抜群」
ラインは12lbを軸に、カバー絡みは14lbも。