近年、モバイル系ロッドの開発にも積極的に取り組むベイトロッド専門メーカーのフィッシュマン。本記事では新作「ビームスエクスパン7.10LHTS」と「BC4 8.0MH」に着目。開発に参加した同社フィールドテスターの西村さんのコメントを交えながら両モデルの特性や活用法を紹介します。
【Profile】
西村 均(にしむら・ひとし)
ベイトロッド専門メーカー、フィッシュマンのフィールドテスター。1gのジグヘッドリグからビッグベイトまでルアー釣りはすべてベイトタックルでこなすエキスパート。源流からオフショアまで釣りの造詣は深く、ベイトタックルに関する豊富な知識と経験を持つ。
ベイトロッド専門メーカー、フィッシュマンが作るロッドとは
ベイトロッド専門メーカーのフィッシュマンが、ロッド作りで一番に掲げるコンセプトが「0(ゼロ)バックラッシュ」。全機種がキャスト時にリールのスプール上で発生するライントラブルを回避し、気持ち良く振り抜ける調子に設計されています。その根源となるのが美しいベンディングカーブ。きれいに曲がるからトラブルレスで投げやすく、飛距離が出て、キャスト精度も上がるというわけです。魚の引きを吸収し止めてファイトを楽しめるのもきれいに曲がるからこそ。このコンセプトは今回紹介する2機種にも受け継がれているはず。フィールドでどんな顔を見せるのか? 気になるところです。
アジからサーモンまで幅広い魚種に対応するビームスエクスパン7.10LHTS
ビームスシリーズはUL~MLクラスの比較的ライトなロッドをラインナップ。その中でビームスエクスパン4.3LTSに続く、フィッシュマン第2弾のテレスコ(振出)ロッドがビームスエクスパン7.10LHTSです。全長239cmで仕舞寸法は59cmとコンパクト。適合ルアーは6~28gで、このクラスのルアーを使う釣りに幅広く対応しますが、西村さんはカナダのサーモンフィッシングでもビームスエクスパン7.10LHTSをテストしたそうです。
西村「流れの太い河川で25lbクラスのキングサーモンと問題なくファイトできます。普段、良く使うのはメタルジグによるアジングやクロダイのトップウォーターゲーム、港湾部のシーバスなど。テレスコなので利便性が高い。地元で気軽に釣りを楽しみたいときに重宝します」
LHパワーで幅広い魚種をカバー。フィッシュマンの『曲がり』も楽しめる
ビームスエクスパン7.10LHTSのパワー表記はLH。ティップ側はライトでベリーからバットにかけてはヘビーという味付けです。アジからサーモンまでカバーする汎用性は、このパワー設定にあるようです。
西村「LHパワーはティップ側を使って軽いルアーが投げやすい。でも単なる先調子ではなく、キャスト時やファイト時に負荷がかるときれいに曲がる。5本継のテレスコで、まんまフィッシュマンの調子です。レングスに関しても開発当初は7ft8inでしたが、サーモンなどでテストして、もう少し長いほうが魚をかけて曲げたときのタメが効くな、と。軽いルアーも投げやすくなるので7ft10inに落ち着きました。もう一つ、サーモンをかけて限界まで試してみましたけど、先に2号のPEがバチーン! と切れてしまいました。テレスコは破断しやすいという常識が覆されました」
現場での機動力が釣りをエクスパンションする
テレスコロッドのビームスエクスパン7.10LHTSは、コンパクトさによる優れた携行性も大きな特長です。
西村「海外遠征のときはスーツケースに入れてます。長いロッドケースを預けて追加料金をとられることもありません(笑)。LCCの機内持ち込みが可能な仕舞寸法ですからね。ただ交通機関を使っての移動中は、一般的なマルチピースロッドとモバイル性でそこまで大きな差はないと思います。現場でその差が開きます」
テレスコはロッドを継ぐ手間がないから準備が手早くでき、実釣中はガイドにラインを通したまま縮めて移動が可能。釣り場で優れた機動力と利便性を発揮します。
西村「僕は、春先に枯れアシを分け入る支流のサクラマスや、磯の壁を伝い歩くようなロックフィッシュのランガンにもエクスパン7.10LHTSを使います。悪路を進むときほど両手が空いたほうが歩きやすいし、安全です。エクスパン7.10LHTSは、現場でガイドにラインを通したまま背中に背負って移動できますからね。エクスパンは拡大や伸長、展開の意味を持つ英語のexpansionから名付けられていますが、ロッドが伸びるという意味だけでなく、ターゲットや釣り方、フィールドなど釣りの展開を広げる、という意味も込められています」
Fishman Beams Xpan7.10LHTS
【スペック】
- 全長:239cm
- 自重:未定
- 継数(本):5
- 仕舞寸法:59cm
- ルアー:6~28g
- ライン:PE1~3号
- 価格:未定
- 発売:2022年春頃予定
BC4 8.0MHは汎用性と感度にこだわったスーツケースに入る8ft
BC4は、4ピースロッドをラインナップするシリーズ。BC4 8.0MHはシリーズ中2番目に長いレングスの8ftで、パワーはMHに設定されています。その狙いは、ずばり汎用性の高さです。身近なシーバスにロックフィッシュ。イトウにサーモン、ターポン、大型トレバリーなど海外の大型魚も視野に入れて開発されたパックロッドです。このBC4 8.0MHの開発テストに携わった西村さんが、一番に驚いたのが感度だそうです。
西村「BC4 8.0MHもスーツケースに入れてカナダに持ち込みました。サーモンで体験したんですが、川でスプーンを流すとコンコンコンッと川底の石の頂点に当たる。モソッと一瞬異質の感触があって、それがサーモンのアタリです。そのモソッという一瞬を逃すと放してしまいますが、BC4 8.0MHは不明瞭なアタリがしっかりとれる。4ピースですけど感度は、フィッシュマンのロッドの中でトップクラスだと僕は感じています」
フグが突くのがわかる感度性能と、根魚を引き剥がすバットパワー
優れた汎用性が特長のBC4 8.0MHですが、それは適合ルアーウェイトにも表れています。8~55gと幅広く、100mm前後のシーバスミノーからフィッシュマンのビッグジョイントミノー、コークにも対応します。
西村「僕がBC4 8.0MHを一番使うのは、キジハタなどのロックフィッシュゲーム。感度が良いから10g前後のシンカーを付けたワームを水深10数mの底に落として、ボトムタッチが明確にわかります。フグに突かれているのもわかります。あと低負荷時はパリッと張りがあるので、軽いリグが繊細にしやすい。でもキャスト時や魚がかかるとグーッとベリーまできれいに曲がる。フィッシュマンのロッドらしい調子に仕上げてあります」
西村 「グリップの付け根から約22cm上まではバットに強靭な高弾性カーボンを装備し、不意の大型魚とのファイトに負けないパワーも備えています。ロックフィッシュゲームでは、BC4 8.0MHのバットパワーとベイトリールの力強い巻き取りで、かけた根魚に主導権を与えずボトムから引き離すことができます」
グリップエンドまで実釣性能を追求。2ピースに戻れなくなる完成度
感度とパワーを備えた8ftのMH。国内外を問わず、幅広いターゲットが狙えるのは間違いなさそうです。
西村「用途としてはメインロッドにもなるし、ビームスエクスパン7.10LHTSのように現場でのモバイル性を活かした使い方もできます。畳めばバックパックやライフベストの背中にさせる長さですからね。そういう意味でも僕は磯で使うことが多い。移動が楽ですから。磯ではメタルジグも使いますが、BC4 8.0MHはシャクるのも楽です」
その秘密はBC4 8.0MH独自のグリップ形状にあるようです。
西村「BC4シリーズの8.0MHより短いモデルは、リアグリップが後端に向けて太くなるテーパーがかかっています。BC4 8.0MHは、リアグリップのエンド部にわずかですがテーパーをかけない部分を設けています。そのためシャクリや大型魚とのファイトで、リアグリップを脇挟みしてもグリップエンドがフィットして脇が痛くなりにくい。あと力を込めてキャストするときもグリップを握り込みやすいです」
4ピースのパックロッドですが細部まで機能的にデザインされ、メインロッドとして使える完成度。モバイル性の高さは、自宅など保管場所の省スペース化にもつながります。ビームスエクスパン7.10LHTSも含めて、こういうロッドが出てくると間違いなく釣りの幅が広がります。一度手にして2ピースに戻れなくなっても編集部は一切責任は持てませんのであしからず!
Fishman BC4 8.0MH
【スペック】
- 全長:244cm
- マテリアル:4軸カーボン
- ガイド:Kガイドチタン+ステンレス
- 自重:228g
- 継数(本):4
- 仕舞寸法:65cm
- ルアー:8~55g
- ライン:PE1~4号
- 価格:64,900円(税込)