テンリュウの『Rayz(レイズ)』シリーズは、渓流からサクラマスまで幅広いトラウトフィッシングに対応したロッドシリーズだが、今回はサクラマスモデルに注目! 開発を手掛けた佐藤雄一さんと共に、彼のホームグラウンドでもある宮城県北上川で実釣インプレッションを敢行しました。ダイナミックなサクラマスの釣りに挑む、エキスパートの緻密な戦略。必見です!
佐藤雄一さんのプロフィール
【Profile】
佐藤雄一(さとう・ゆういち)
1962年宮城生まれ、石巻市在住。テンリュウのフィールドスタッフを務める。地元の北上川水系を中心に、各地のサクラマスフィールドに足繁く通う本流のエキスパート。トラウトはもちろんソルトルアーも得意しており地元のフィッシング倶楽部「石巻シーバスフリーク」の代表も務めている。
実釣フィールドは太平洋側を代表するサクラマス河川「北上川(宮城県)」
北上川は岩手県の内陸を源に発し、宮城県で太平洋に注ぐ大本流です。
最初に河口があったのが石巻市なのですが、洪水による災害を防ぐため昭和初期に放水路として「新北上川」が作られ、石巻市の北東に位置する追波湾へと流れ込んでいます。つまり、北上川には河口が2つあるということになりますね。
もちろんどちらも流れ込むのは太平洋側になりますが、それぞれの河口は直線距離で20km以上離れています。
佐藤「北から太平洋を回遊してきたサクラマスが川へと上ってくるわけですから、より北に河口がある追波の方が、遡上数は多いんです。もちろん旧北(石巻に河口がある旧北上川は「きゅうきた」とも呼ばれる)にも遡上するので、私自身、追波でも旧北でも釣りをします。15年前の旧北なら、要所要所を10投ぐらいずつ打つ感じでランガンできたのですが、ここ10年数年くらいで釣り場としてメジャーになってきて、人がちらほらいるのでそれも難しくなりました」
佐藤さんは、40年近く前に友人たちと共に、手探り状態から北上川の開拓を始めました。長年通う中でパターンを見つけ、サクラマスをキャッチし、メソッドをアップデートし続けてきました。
佐藤「堰下200mは禁漁区に指定されていて、その下流は左岸右岸とも釣りになります。足元はゴロタで、他のサクラマス釣り場の様に、フェルトソールのウェーダーと背中にぶら下げるタイプのサクラマスネットで問題はありませんが、さらに下流の飯野川橋周辺がちょっと特殊なんです」
川は橋周辺で左にカーブするので、左岸はインサイドでサクラマスの遡上ルートから外れ釣りにならないそうです。釣り場は右岸に限定されます。
佐藤「足場はいいんですが、水面まで距離があって水面までの斜面にコケが生えていて滑るんです。釣りをする分には問題ないんですが、魚をランディングしようと斜面を下りるには、スパイクソールが必要なんですよ。それが難しければ、通常のランディングネットではすくいにくいので、磯ダモを用意するか、ですね」
柄の長い磯ダモなら護岸の上から魚をすくうことができますし、斜面を降りてすくうなら磯ブーツなどのスパイクシューズが必要になってくるとのことです。
佐藤「初めてこの川に来た人の中には、フェルトソールのウェーダーで斜面を降りようとして、コケで滑って落水というのは何度か見かけます(笑)」
佐藤さんは、北上川のヒットパターンから特徴までを熟知する、まさにスーパーロコアングラーです。そんな彼が、4年もの歳月をかけて開発したのが今回インプレッションしてもらった『Rayz(レイズ)』シリーズのサクラマスモデルになります。
大河川を攻略するための『Rayz RZ912S-H シルバースケール』
【スペック】
- 全長:9ft1in
- 継ぎ数:2
- アクション:レギュラー
- 仕舞寸法:142cm
- ルアー重量:最大30g
- ライン:最大1.2号
- 自重:151g
- 価格:64,350円(税込)
『Rayz(レイズ)』は、テンリュウのトラウトロッドシリーズになります。初代モデルがリリースされたのは2012年で、そこから渓流、中本流、サクラマス等、幅広いトラウトルアーのジャンルに対応したモデルが続々ラインナップされていきました。『Rayz spectra(スペクトラ)』『Rayz integral(インテグラル)』などの派生モデルも存在しています。
シリーズの中でも佐藤さんが開発に大きく携わったのが、もちろんサクラマスモデルです。
佐藤「現在、主軸として使用しているのが9ft1inモデルですね。北上川のような大河川の攻略に特化させるべく開発に着手しました。かつて8ft7inモデルが存在していて、これもこれで非常に評価の高い1本でした。
また、サクラマス向けのレングスは、栃木県の中禅寺湖や北海道などでの釣りに流用するユーザーが多いと聞きます。
追波は場所を移動せずに釣りをすることが多いので、ミノー用とかスプーン用とか複数本釣り場に持ち込めますから、9ft1inを使う価値はあると思います」
9ft1inはどんな方向性のロッドになるでしょう?
佐藤「8ft7inはテーパーがきつく、ややピーキーなアクションでしたが、9ft1inは長さを生かした緩やかなテーパーで、1日振っても疲れないロッドになります。北上川だけでなく、例えば秋田県の米代川など、サクラマスのいる大河川ならどこでも通用するロッドだと思います」
オールラウンドに使える『Rayz RZ842S-MMH シルバースケール』
【スペック】
- 全長:8ft4in
- 継ぎ数:2
- アクション:レギュラー
- 仕舞寸法:130cm
- ルアー重量:最大25g
- ライン:最大1.0号(PE)
- 自重:135g
- 価格:61,050円(税込)
9ft1inモデルを主軸にしつつ、シチュエーション別に使い分けているのが、こちらの8ft4inモデルです。
佐藤「どちらかと言えばミノー寄りのセッティングにしています。対象が大型のため、バットパワーはもちろん持たせているのですが、繊細なティップを採用し、ティップ部分の追従性を高めたこと、さらにガイドの径を大きくしたのが特徴的な部分になります」
ガイドの径を大きくしたのはなぜでしょう?
佐藤「北上川のようなトローンとした川でなく、流れのある河川では張りのあるPEラインではルアーが水に馴染みにくいシチュエーションもあります。そんなシーンで使用するのがナイロンライン。水馴染みを優先したナイロンラインの使用を踏まえて、ガイドの径も大きめに設定しました」
使用できるラインのタイプも非常に幅広いモデルのようです。
佐藤「8g前後くらいのミノーから、スプーンは25gくらいまでを想定していますが、メインはミノーですので、シャローエリアで軽快なプラッギングが楽しめると思います」
また、北上川のシャローエリアはもちろん、砂礫などの堆積で日々浅くなっている日本海側の河川などでも活躍する1本でもあるそうです。
佐藤「あとは、取り回しに優れているので、水面に近い釣り場や、小規模河川などのピンスポット撃ちなどにも最適なモデルとなります」
クラッチ操作で差をつける『Rayz RZ842B-MMH シルバースケール』
【スペック】
- 全長:8ft4in
- 継ぎ数:2
- アクション:レギュラー
- 仕舞寸法:130cm
- ルアー重量:最大25g
- ライン:最大1.0号(PE)
- 自重:145g
- 価格:65,450円(税込)
こちらは『Rayz RZ842S-MMH シルバースケール』を元に設計したベイトロッドです。
佐藤「ベイトロッドということで、やはり利点はクラッチ操作になるでしょう。キャストして流れに乗せながらのドリフトの釣りを得意としています」
ドリフトの釣りとは?
佐藤「リトリーブの釣りとは異なり、ルアーを流れに同調させるように扱う手法です。スピニングタックルでももちろん対応できはするのですが、クラッチが使えるベイトタックルはそれが行いやすいんです」
ドリフトの釣りは、流れを切るのではなく、上流から下流にルアーを送り込みながら、流れに同調させるように行います。その際、クラッチを使える利点はのひとつにレンジキープのしやすさが挙げられます。上流側から下流側まで広い範囲を探りやすいのも特徴ですね。
佐藤「スピニングモデルよりパワーを持たせているので、10g前後のミノーから、最大25gまでのスプーンやメタルジグまで対応していますし、ラインの太さにかかわらず、飛距離を出すことも可能です」
ベイトロッドということで太いラインが巻けるのも特徴のひとつ。
佐藤「細いPEでもいいのですが、たとえば小規模河川でブッシュが連続するような場所では、ピンスポットを撃っていくことになりますから、細いラインではトラブルも多くなります。そのために私は22lbの太いナイロンラインを組み合わせて使っています。もちろん、ラインの太さにかかわらず飛距離が出せますよ」
佐藤さんがサクラマス釣りで使用しているロッドはここまで紹介してきた3機種となり、河川やその時々のシチュエーションに合わせて使い分けることで、北上川だけでなく様々なフィールドで釣果を叩き出しているのです。
ダイナミックなサクラマス釣りだからこそ、より緻密な細分化したロッドチョイスを心がけることで、さらなる1尾に出会えるはずです!
コスメにもこだわる『Rayz(レイズ)』シリーズ
西陣織カーボン
京都西陣で発祥した平安時代より続く、伝統的な絹織物の技術。それを取り入れたのが、こちらのパーツ。カーボン繊維を織り上げる織元の技術と、繊維をパイプ状へと仕上げる同社の技術が合わさり、釣竿のデザインに一層の深みを帯びている。
実釣取材後にキャッチ!
今年は全国的にサクラマスの釣果が奮わず、北上川も例外ではないようです。
佐藤「代表的な河川からの釣果報告も非常に少ない年で、毎年数の出る北上川でも例年の3分の1といったところですね」
そんな状況下でも佐藤さんは、今年もコンスタントに釣果をあげていて、実釣取材が行われた直前にも1本キャッチしていていました。ただ、2日間に渡り行われた取材当日は残念ながらノーフィッシュ。遡上のタイミングも重要な本流釣りの難しさを実感させられた釣行となりました。
しかしながら、取材が終了した1週間後に吉報が寄せられたのです!
佐藤「これまで、取材では高確率でキャッチしていたので悔しくて、なんとかキャッチしましたよ!」
佐藤さんから送られてきた動画には、サクラマスとのファイトからランディングまでがしっかり撮影されていました。さすがエキスパートですね!
【参考タックルデータ】
- ロッド:Rayz RZ912S-H シルバースケール(テンリュウ)
- リール:ステラC3000XG(シマノ)
- ライン:スーパートラウトアドバンス マックスパワーPE0.8号(バリバス)
- リーダー: ビッグトラウトショックリーダー14lb(バリバス)
- ルアー:バンジーショット30g(バスデイ )