クセがなくトラブルが少ないナイロンラインは、一般的にはど真ん中で使用できるラインといえる。そんなナイロンを「特化した特定の状況下」で使用するエリアトラウト絶対王者・伊藤雄大さんの最新ナイロン戦略とは? エリアゲームが進化した現代だからこそ今一度『ナイロンライン』について、よ~く考えてみよう!
●文:ルアーマガジン編集部
伊藤雄大さんのプロフィール
伊藤雄大(いとう・ゆうだい)
ベルベットアーツ代表。バリバス、リヴァイブ・フィールドテスター。686アンバサダー。
トーナメントにおける圧倒的な強さから『絶対王者』の異名を持つプロアングラー。驚異の釣行日数に支えられた、現場主義の高純度『理論』は説得力の塊。
「繊細なエリアゲーム」をわかりやすく解説してくれる姿勢に定評がある。
伊藤雄大戦略の約9割はエステルラインが担っている! だからこそナイロンラインの位置付けは重要
ラインを見ずにいかにして高精度にアタリを取るか
ロッドを斜めのポジションにして、ロッドとラインに角度を付けた構え方。伊藤雄大さんのベーシック・フォームといえる。このフォームを基軸として、雄大さんは数々の全国区の激戦を勝ち抜いてきた。何に重きを置くか? によってアングラーのフォームは決まるのかもしれない。
ロッドとラインに角度を付けて、アタリがあったら、そのまま無理なくキレイにダウンフッキングに持ち込む。つまりは、雄大さんは自らにとって、自然にアワセられることに『重き』を置いて、現在のベーシック・フォームに至ったといえる。
「この構え方だとラインが見えにくいです」と雄大さんは言う。全方向において完璧な答えなど存在しない。何かに『重き』を置くということは、同時に何かを『犠牲』にするという選択でもある。
雄大さんは『ラインの視認性』を犠牲にして、自然体で無理なくフッキングに持ち込めるスタイル(フォーム)を選択した。見えにくいラインを無理に見るのではなく、ティップの僅かな入りと、手元に伝わる感覚を『軸』にして、雄大さんはアタリを感知している。
「このスタイルで、極限までアワセの精度を高めたいです。ラインを見ないスタイルで、精度を上げていくためにはエステルの感度は必要です」と、ここまでが、雄大さんのメインスタイル。なのだが……雄大さんのメインスタイルをサイドで支えている大事な存在がある。それこそが雄大さん流のナイロン戦術。決してメインではない。
だからこそ『ここぞ』という場面において、圧倒的なパフォーマンスを発揮する伊藤雄大流ナイロン戦略。今回の企画はそんなお話。
まずは一般的なナイロンラインの概念から解説
伊藤「ナイロンラインは一般的な感覚では、ど真ん中のラインです。クセがなく、トラブルも少なく、エリアゲームにおいてメインで使用できるラインです。ナイロンラインで、スプーニングを楽しむ方もいれば、クランクベイトを楽しむ方もいます。ナイロンにはオールマイティに楽しめる幅の広さがあります」
伊藤「さらに言いますと、エリアゲームを極限まで突き詰めて、その日、そのとき、その場所のトラウトにズレなくピッタリと寄り添った釣りを展開することによって『いいアタリ』が出せる技術が身に付けば、ナイロンラインは最高の相棒となり得ます。特にナイロンラインの3lbは、いつも自分が言うように、エリアの教科書があったら掲載したいほどのベーシックなラインです」
伊藤「と……いうのが一般論です。その前提を踏まえていただいた上で、自分は少し特殊な位置付けでナイロンラインを使用しています。そんな自分流のナイロン活用術をご紹介させていただきます」
伊藤雄大のメインラインはエステル! だがそのメインをサイドで支えている大切な存在こそが『ナイロンライン』なのだ!
伊藤雄大がナイロンラインを使用するシチュエーションとは?
張り詰めるけど伸びきりはしない!
巻き抵抗が大きい『ハイウエイトスプーン』、もしくは『フルサイズクランベイト』使用時。さらには巻き速度が速い展開のとき。これらの状況時には、ラインが張り詰めた状態になりやすい。ラインが張り詰めるので、ナイロンラインでも十分な感度を得ることができる。
伊藤「前述の状況で、エステルラインのシステムを組むと、緊張感が過剰に出てしまい『逃げ』と『遊び』が無くなってしまうため、アタリがあっても上手くノラないケースが出てきます」
ここで重要なのは、前述の大型ルアーを巻くときに、『ラインが張り詰めた状態』になるということ。『張りつめ』はするが、決して『伸びきる』訳ではない。
ハイウエイトスプーン
巻き抵抗が大きいルアーを使うとき主にハイウエイトスプーンを使用して放流ゲームを行うとき。このときの雄大さんの主力スプーンは『フォルテ2.1g』『フォルテ2.5g(プロト)』『ノアボス3.5g』など。
フルサイズクランクベイト
いわゆるフルサイズ系のクランクベイト。ボディサイズが大きくて、リップが受ける水抵抗も大きいクランクベイト。具体的にはディープクラピーやRCシケイダーなど。
速い巻き展開のときトラウトの動きが速くて、ルアーの巻きスピードが速いときには「ライン」が張り詰めた状態になるのでナイロンラインを使用するのが伊藤雄大流。
伊藤「ハイウエイトスプーンやフルサイズクランクを巻いたくらいで、ナロインラインの伸縮性がフル稼働して『伸びきる』ということはまずあり得ません。あくまでも『張り詰めて』いるだけなので、トラウトがバイト、もしくはファイトしたときの負荷によって、初めてナイロン特有の伸縮性が発動されます。その結果、ファイト中にトラウトが首を振ったときも、ナイロンラインがクッションの役割を果たしてくれるためバレにくくなります」
伊藤雄大さんがスーパートラウトエリアマスターリミテッドSVG(ナイロン)を愛用している理由とは?
伊藤「SVGナイロンはナイロンラインにしては『初期伸度』が低い感覚があります。ナイロン特有の伸縮性が発動されるトリガーとなる負荷が高めに設定されている印象です。ルアーテンションくらいでは伸びきらないのはもちろんのこと、バイトのときも『コツコツ』という微妙なアタリでは本格的な伸縮性は発動されずに、『ドンッ』と入り込むバイトのときに一瞬、伸縮性が発動される感覚があります。そして、その後のファイトでは伸縮性が助けてくれます。さらにSVGナイロンはキメが整っていて、太さが高精度に均一なので、ルアー回収時にガイドの抜け感が圧倒的にスムーズです。キャスト時のガイド抜け感もスムーズです。全動作においてラインによる淀みを一切感じない貴重なラインです」
- ナイロンラインにしては『初期伸度』が低い
- キメが細かく太さが高精度に均一
- 全動作におけるラインによる淀みを一切感じない
水中へと入り込む力が強いナイロンライン!
伊藤雄大さんをはじめとした『バリバス』と契約しているプロスタッフ&フィールドテスターたちによる、現場の意見と、バリバス社独自のライン開発技術を駆使して、現在『新コンセプト』のナイロンラインの開発が進んでいる。
通常のナイロンラインのキャスト後の動向を分析すると……
- キャスト後、ラインが接水するまで、ある程度の時間を要する。
- 接水したライン部分は、しばらくの間、水面に浮いている。
- その後、ルアーの自重、もしくは抵抗に引っ張られて、水面に浮いていたラインの先端部分から、少しずつ水中へと引き込まれていく。
伊藤「つまり通常のナイロンラインは、ティップから接水地点までのラインの弛み。さらに水面に浮いている部分。そして、水面からルアーへと向かい、水中に垂れ込んでいる部分。という具合に2回カーブを描く軌道になります。こうした弛み(スラック)がナイロンラインの利点となることも多々あります。この利点を活かした釣り方やメソッドもたくさんあるのも事実なので、こうしたナイロンの特性もとても大切なのは間違いありません」
伊藤「という前提を踏まえた上で、ナイロン特有の弛みによるスラックをもう少し減らすことによって、できるようになる釣り方が存在するのも事実です。今、自分たちが研究しているナイロンは、ナイロン特有の弛みを極力取り除く方向の新タイプのナイロンラインです」
具体的には、通常のナイロンよりも水に入り込もうとする力が働きやすい。比較的早い段階で水中へとラインが入っていく親水性が高いナイロンライン。
伊藤「同じ飛距離を飛ばしても、出ているラインの総量が少なくなります。通常のナイロンよりもティップとルアーが直線に近い状態で結ばれるイメージです。余分なスラックが出ない分、高い感度を得ることが可能です。ナイロンの素材自体が持ち得る『初期伸度』や『特性』は、SVGナイロンと近い感覚がありますが、コーティングの違いによって、親水性はかなり違います。新ナイロンが完成することによって、SVGナイロンとの使い分けが可能になり、より幅広いアプローチができます。今まで獲れなかったトラウトが獲れるようになります」
新ナイロンラインのコンセプトは「親水性ナイロン」
今、新しいコンセプトの新ナイロンラインを研究中です!
新コンセプトナイロンとSVGナイロンの利点!
【SVGナイロンの利点】ラインの浮力を利用して、ルアーを上方向へ引き上げる力がある。そのため、重たいルアーを沖へ投げたときも、比較的ゆっくりと巻くことができる。
【新コンセプトナイロンの利点】ナイロンラインにしてはルアーとアングラーの間にラインスラックが出づらく、感度を活かした釣りが展開できる。だが……素材はあくまでもナイロンなので、ナイロン独自の伸縮性の恩恵も存分に受けられる。
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