群馬県内の渓流をホームグラウンドとする高橋雄一郎さんは、シーズン初期に必ず訪れるフィールドがある。それが今回紹介するイワナの溪。待ちきれず、他県の2月早期解禁河川に浮気もするが、やっぱりシーズンインの本命はこの場所で。長い禁漁期間を経て、愛くるしいイワナたちの顔を見るために、釣友と2人で林道を突き進む。今回は渓流釣りで気をつけなければならないクマ対策やアイテムもご紹介する。
●文:ルアーマガジン・リバー編集部
今回の渓流遡行を楽しんだお2人
新井仁(あらい・ひとし)
2015年にトラウトルアーを始めてから、年間釣行数は毎年200日を優に超える! 経験値も非常に高く、地元利根川水系に通い込み、1年中トラウトを追い求めるフィッシングバム(写真左)。
高橋雄一郎(たかはし・ゆういちろう)
「WILD-1」フィッシング・ストアアドバイザー。普段は高崎店勤務。渓流歴は32年で、エサ釣り・フライを経て現在はルアーが中心。トラウトフィッシングをこよなく愛し、春は渓流・本流、夏は源流、秋は本流・湖、冬は本流というルーティーンを毎年楽しんでいる。このほか、カヤックフィッシングなどソルト、そしてサーフィンを楽しむ(写真右)。
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山岳渓流の釣りは道具の準備も大切
【熊対策】人間が野生生物のテリトリーに入っていることを忘れずに
「野生動物のテリトリーに入り遊んでいる」という意識は常に持つべき。その上で、熊対策もしっかり行う。熊鈴に関しては、渓流で出会うアングラーの9割はぶら下げている感覚だが、熊スプレーは意外と持っていない人が多い。いざというときにあると安心なアイテムだ。少し高価なものになってしまうが持っているのが良いだろう。野生動物のテリトリーに入って遊んでいるという意識は常に持って対策することが大事。
入渓する直前に大きな音で周辺に知らせる
火薬玉が破裂することで、大きな音が出せるピストルのおもちゃ。熊よけというよりは、僕らが彼らのテリトリーに入ることを知らせる合図だ。
【スリング】高巻き&へつりで大活躍の便利アイテム
道路沿いの渓流であっても、「高巻き」や「へつり」などを行う場合がある。そうしたシーンで安全に遡行するためにおすすめなのが「スリング」だ。わかりやすく言えば『輪っか状』のクライミングギアのひとつなのだが、今や僕たちの渓流釣りでは必須アイテムにもなっている。重くないし、現在使用しているスリングの22kN(約2.2t)と、強度も十分。場所も取らないのでカラビナとセットで持ち込んでいて、使用する際にはザックから取り出して肩にかけておく。
写真のように太めの木に巻いて急斜面などの高巻き、へつりをサポートしてくれる。ここ数年で渓流入門者の方も多くなってきているので、安全のために、こうしたアイテムの使い方を勉強した上で持ち込むことで、万が一にも備えられる。まずは、最寄りのアウトドアショップ(できればワイルドワンへ!)に相談していただきたい!
山で食べるカップ麺はなんでうまいのか?
さてさて、釣りの方はと言えば、好調に釣れて20cm前後のイワナが連発。さらに、相方も尺に迫る良型岩魚をキャッチすることができた。このイワナは黄色が強く丸々と太ったきれいな個体。リリースする時も勢いがあった。
この時期はこのように回復しているものから真っ黒なものまで、個体差があるのも面白い。
この日の気温は、早朝が0℃で午前中の段階で15℃くらいまで上昇。10時にはすでにポカポカ陽気になり、歩いているだけで汗ばむほどだ。春~初夏にかけては、こうした朝と昼の気温差が激しい日が多くなる。とくに、歩いてエントリーする沢などでは、車にすぐ戻ることもできないので、レイヤリングには常に気を遣うようにしている。
今回持ち込んだのは30Lほどのザックで、中にはウエアを出し入れできるスペースとそこに簡単にアクセスできるジッパーがついている。そのほか、ザックの中には食料やバーナーセット、緊急時のクライミングギア(スリング等)などを詰め込んであり、サイドには破損防止のケースに入れたロッドが固定できるようになっている。行き帰りはリールも収納できるスペースを残してある。
渓流釣りを楽しく安全に楽しむためには、道具のチョイスも結構重要になるのだ。このあたりのポイントは写真のキャプションにて詳細をお伝えするとして、夢中で釣り上がっていたらお昼をとっくに過ぎていた。今まで気づかなかったが、どうりで腹ペコのはずだ。
「そろそろ飯食って戻りますか!」とザックを下ろし飯の支度をそそくさと始める。
といっても、日帰り釣行の場合は手の込んだものを作らず「カップ~とおにぎり」が定番。でも、山で食べるカップ麺てなんでこんなに旨いのか……毎度このメニューなのに、食うたびに「ウマッ!」と口ずさんでしまう。恐らく山に入れば何を食べても旨いのだろう。
そして〆はコーヒー。これも格別。釣りの時間をできるだけ多くとりたいところだが、この食事から締めのコーヒーまでの流れは絶対に譲れない。
1尾は1尾と、小さな魚でも喜べる仲間との釣りは、ラフで楽しいものだ。
普段はそのまま釣り上がることもあるが、まだ早期であること、さらに結構な距離を歩いてきたので車に戻る時間を考え、駐車スペースに戻ることにした。時間と気持ちに余裕を持つことも、渓流を楽しむうえで重要なポイントのひとつ。時間ギリギリの釣行は事故や遭難の恐れもあるし、夏場などは急な天候の変化など不安要素が多いのもこの釣りを楽しむためのポイントでもある。帰りの運転も加味して、余計に早めの撤収を心がけるべきだろう。
相方が釣り上げた黄色の強い、丸々と太った個体。早くからエサをしっかりとることができていたのだろう。釣れる魚の個体差があるのも早春の渓流ならではだ。
渓流釣りを楽しむためには、色々と準備が必要だったり考えることが多いものの、楽しい山のアクティビティがたくさん詰まっている最高の遊び。だからこそ、花粉症が辛くても溪に分け入るし、長い距離を歩くのも苦痛にならない。
タックルデータ
高橋さんのタックル
項目 | タックル |
---|---|
ロッド | アングロ&カンパニー・パラゴンPR493 |
リール | アブ・カーディナル33CDL |
ライン | シマノ・ピットブル12 0.6号、フロロリーダー 6lb |
ルアー | アルボル・アルボル50S&45S、フォレスト・iFish5S バスデイ・もののふ35S、ティモン・トリコロールバイブ50 |
新井さんのタックル
項目 | タックル |
---|---|
ロッド | イトウクラフト・EXC510PUL |
リール | アブ・カーディナル33CDL |
ライン | シマノ・ピットブル8+ 0.6号、フロロリーダー6lb |
ルアー | イトウクラフト・ボウイ50S、デュオ・リュウキ50S |
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※本記事は”ルアーマガジンリバー”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。