先日、メガバスの伊東由樹さんが通算24回目となるグッドデザイン賞を受賞した。今回の作品はロッドの「オロチX10」とルアーの「ゴーラム」。それぞれどんなアイテムで、どこが評価されたのか?伊東社長自らの言葉で解説をお願いした。まずは天然由来の素材を使用した世界初のロッド「オロチX10」。
●文:ルアマガプラス編集部
オロチX10(メガバス)
CO2の排出量を減らせる素材
伊東「釣具を製造するとなると、環境にそぐわない物質がどうしても排出されてしまいます。でも釣るための道具を作っているわけですから、魚たちが住まう地球環境のことを考えると性能を追い求めるだけでは本末転倒。そこにはジレンマがありました。かつてメガバスはその最たる例としてソフトベイトがあったことからVIOSの開発に取り組みました」
時代に先行する形で環境悪化を憂い、環境負荷に対するアクションを起こしてきたメガバス。
そして新たに取り組んだのがロッドだった。
伊東「ロッドを作る際にはCO2がかなり排出されます。例えば素材となるカーボンファイバーを製造する工程もそうですし、釜でシャフトを焼く燃焼工程においても排出されます。となると、ロッド制作における環境負荷の軽減もまた、メガバスとして取り組むべき課題のひとつとなります」
オロチX 10はまさしくそんな背景の元で生み出されたのだ。
伊東「化学繊維の使用量が減ればそれだけCO2の排出量を減らすことができる。そこで天然由来の素材と置き換えることでたどり着き、大幅なCO2削減を実現したんです」
天然由来素材「セルロースミクロフィブリル」は同量のカーボンと置き換えることで約95%ものCO2削減につながるという。
伊東「しかもそれでいて20%軽量化、耐衝撃性能20%向上、制振性能30%向上となります。つまりより軽く、より強く、よりしゃきっとしたロッドが作れるわけです」
だがしかし、自然由来だからこその難点ももちろん、ある。
大義、性能、そこにデザインが加わる
伊東「実はこの自然由来でなおかつ強い素材というのは、カーレースの世界で使われていたんです。軽いし強いですからね。ただひとつだけ難点があって、天然由来なものですから、繊維の方向が数学的な配列にはならないのです。その点、カーボンは綺麗に並ぶので、美しい柄としても表現されていますよね」。
レーシーな雰囲気を出すアイコン、というイメージのあるカーボンは、一般的な柄として浸透している印象さえある。
伊東「対するオーガニックファイバーの見た目は、パターンというよりもただただナチュラルな模様になってしまいます。車のパーツであれば、その上に塗装をガッツリ塗ったりステッカーを貼ってしまえば気にならないでしょう。ですがロッドはそうもいきません。せっかく軽く仕上げているのにベタ塗りしてしまったら本末転倒ですよね。だからこそオロチX10はごく薄く、色を乗せる程度に抑えているんです」
もちろんそこにもかなりの塗装技術が必要となる。
伊東「一見すると黒に見えますが実は違います。オーガニックファイバーに薄い色を塗り重ねることでこの深みのある色になっているんです。ロッドとしての性能をつきつめたあと、最後の最後に時間をかけたのが、実はこの工程だったりします。これなくしてはグッドデザイン賞はなかったでしょうね」
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