先日発表された論文にて、ブルーギルの生態がまた少し解明された。淡水の様々な水域で見かけるブルーギルが、これだけあちこちに生息しているには産卵時期の特徴に一因があるようだ。
●文:ルアマガプラス編集部
実験内容とわかったこと
筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所・ピーターソン マイルズ イサオ氏は、ブルーギルの産卵時期に見られる巣の集まり(コロニー)に関して、野尻湖(長野県)にて水中ビデオによる行動観察と保護オス駆除実験を行った。
まずブルーギルの巣を計数したところ、その多くがコロニーを形成していたという。しかしながら35%の巣は集団ではなく単独で存在していたとか。
またバス同様、オスのブルーギルが巣を守る行動をとる(卵に水流を送る、巣の周囲を旋回する、捕食者を追い払うなど)ことは知られているが、実験ではその巣からオスのブルーギルを排除。
その結果、30分間の間に守るオスのいなくなった巣の卵を狙った魚が4種確認された。その内訳はブルーギル、スモールマウスバス、ラージマウスバス、ウグイなのだが、実に93.3%がブルーギルであったという。また、コロニー内に別のオスのブルーギルが残っている状態では、卵を食べられる割合は低く、狙いに来る魚も少ない。さらに、積極的にオスに守られていた巣は排除後も卵を食べられにくいことがわかった。
敵の少ないブルーギル
この実験の結果から、ブルーギルはコロニーを作ることで他の魚種から卵を狙われにくい状態を作っていることがわかった。
一方、卵を捕食するのが同種のブルーギルがほとんどであることから、コロニーに属さないで巣を作ることにもメリットがあるのだろう。
ブルーギルは他の魚種によって卵を食べられにくいため繁殖行動を成功させやすく、そのことが多くのフィールドに定着している要因のひとつといえそうだ。
掲載論文
【題名】 Male guarding behavior and brood predators of invasive Bluegill (Lepomis macrochirus) in a Japanese Lake
(日本の湖における外来魚ブルーギル (Lepomis macrochirus)のネスト防衛行動と卵捕食者)
【著者名】Miles I Peterson(筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所),Satoshi Kitano(長野県環境保全研究所)
【掲載誌】 North American Journal of Fisheries Management
【DOI】 10.1002/nafm.10976
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