海流変化で魚の生息域に変化が起きている! 今まで釣れなかった高級魚や超大型魚が身近で釣れるようになるかも!?

ここ最近、日本各地の海でそれまでに見られなかった魚が釣れたという情報を目にすることが増えてきた。要因には様々なものが有ると考えられるが、そのひとつに黒潮系の暖水の北上が挙げられている。この記事では、Nature of Kagoshima からオンライン出版された、三陸沖で捕らえられた暖水性魚類に関する論文を紹介したい。

●文:ルアマガプラス編集部

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石巻魚市場で調査を実施

国立研究開発法人 水産研究・教育機構の櫻井慎大氏らは、親潮の冷たい海水の流量低下と黒潮系の温かい海水の北上による、宮城県三陸沖ではそれまで見られなかった温かい海水を好む魚(暖水性魚類)の増加を把握するための調査を行った。

調査は国内最大級の地方卸売市場である「石巻市水産地方卸売市場」にて2021年9月から2023年10月までの期間に実施。定期的な魚市場への水揚げ物の観察により、採集された暖水性魚類の同定(生物の種類や名称を分類学的に判別すること)や精密な測定を行っている。

関東以南の人気ターゲットが三陸沖に出現!?

調査の結果、櫻井氏らは九州南岸をはじめとする南日本を中心に分布する暖水性魚類であるイトヒキヒメ、ミナミクルマダイ、アカアマダイ、オオニベを確認。いずれも宮城県初記録となる。

なかでもアカアマダイとオオニベは釣り人にも馴染み深い魚。

ルアーで釣れたアマダイ

アカアマダイは「甘鯛」の名で知られる船釣りの人気魚種であり、砂底のエリアで天秤仕掛けなどで釣るのが一般的。近年はルアーによる狙い方も確立されつつある。

櫻井氏らの論文によれば、アカアマダイは調査中に2匹確認されており、さらにそれ以外にも定期的に水揚げされているという。

日本記録のオオニベ

オオニベは宮崎県のサーフなどで人気のターゲットであり、ときに1メートルも超える大型魚。今回記録された個体も、重さ3.8kg,全長73cm以上であったという。

本来の分布域は南日本が中心とされていたが、近年は神奈川県、千葉県外房エリア、茨城県から福島県にかけての常磐房総海域におていても水揚げされており、その生息域に関しては再検討する必要があると論文では述べられている。

このオオニベと、先に紹介したイトヒキヒメとミナミクルマダイの確認は、一般的に知られている生息域の北限を大幅に更新することになるのだとか。

人気の魚種がより広い地域で楽しめることになれば、喜ぶ地元アングラーも多いだろう。

しかしときにはその背景で起きている事象に目を向けることもまた、自然の中で遊ばせてもらっている釣り人として大切なことなのかもしれない。

掲載論文

【題名】宮城県から得られた北限記録を含む暖水性魚類4 種の写真に基づく記録
【著者名】櫻井慎大(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所)/増田義男(宮城県水産技術総合センター)/時岡 駿(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所)/冨樫博幸(国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所)

【掲載誌】Nature of Kagoshima Vol. 50

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