一般社団法人日本釣用品工業会がLOVE BLUE 事業で取り組まれている「内水面釣り場拡大」。その活動のひとつ「ワカサギ釣り」の支援が各地で活発に行わている。事業開始から7年でその支援は20箇所以上に及んでいるという。今回はそんな支援を受けた団体の一つ、魚沼漁業協同組合の例を紹介する。
●文:ルアマガプラス編集部
資源の底上げを目指し、 ワカサギ増殖を安定化研究機関等と連携し豊かな湖が蘇える
「LOVE BLUEで支援いただいてワカサギを増やしてから、 ワカサギ釣りのリピーターが増えました!」
そう強く語っていただいたのは、 新潟県魚沼市の奥只見湖を管轄する魚沼漁業協同組合員であり、湖畔で貸ボート&宿泊施設「奥只見山荘」を営む星 隼人さん。
「奥只見湖では、これまでも継続してワカサギ増殖を行ってきましたが、 2020年度から本事業の支援でソーラーワカサギふ化装置を導入しました。効果的な放流が上手く進んでいるようで、ワカサギ釣りは釣果がとても安定しています。9 月からワカサギ釣りの本格シーズンに入るんですが、他店からの情報では、新潟県の釣り人にとってワカサギはお隣の福島県や長野県に出掛けて釣りに行くターゲットだったものが、この奥只見湖でもとても良く釣れるようになったことで、 ワカサギ釣りの穴場として評判なんです。貸ボート店によってはワカサギ釣りのリピーターが約 3 割増えた、というお声もいただいてい ます」
LOVE BLUE事業で奥只見湖へ支援したワカサギ増殖資機材は、本事業によって長野県水産試験場が開発した「ソーラーワカ サギふ化装置」。
山間の湖等、電源の無い場所でも設置・稼働が可能で、可搬型で移動も出来ることから、使用後に倉庫等へ保管も OK となっている。
設置場所に制限のある奥只見湖のようなダム湖でも大活躍。さらに魚沼漁協では、新潟県内水面水産試験場及び長野県水産試験場と連携しながら、ソーラーワカサギふ化装置の稼働や受精卵の確保等、ワカサギ釣りとワカサギ資源の向上に向けた取組みを続けている。その効果によって、秋から本格化するワカサギ釣りでの好調につながっている。
ワカサギ増殖の専門家が集う会合へ出向き増殖技術の向上に努める魚沼漁業協同組合
奥只見湖を管轄する魚沼漁業協同組合のワカサギ増殖担当としてご尽力いただいている奥只見山荘の星隼人さん。同湖におけるワカサギ増殖の安定化に向け、とても熱心な取組みを続けている。
同湖は豪雪地帯で、例年秋から翌年4 月下旬頃までは深い雪に閉ざされる上、平野部の釣り場と季節の進み具合が大きく異なることから、大きくずれ込んだタイミングでワカサギの増殖作業が始まる。
しかも昨今の不安定なワカサギ放流用受精卵の出荷状況から、残念ながら 2023 年度は放流が出来ない事態となってしまった。
こうした地域的な特殊性をカバーする為、星さんは 2023年11 月に開催された水産研究者等の情報交換の場である「ワカサギに学ぶ会」へ出席し、ワカサギ増殖の知見を深めると共に、新たなワカサギ卵の産地の関係者へも挨拶に回る等、真剣に奥只見湖の未来を見据えた活動に取り組まれている。
「新潟県 内水面水産試験場の協力も得ながら、ワカサギ卵の産地も広がりまして、産地の皆さんのご協力もあって2024年は無事に放流出来ました!この秋には大きく育ったワカサギ釣りを楽しんでいただけると思います。もっともっと、奥只見湖のワカサギ釣りがアツくなるように、がんばります!」
ワカサギ資源の底上げにより“聖地復活”へ
28年ぶりに 70 ㎝の大イワナが登場!
奥只見湖におけるワカサギ増殖の安定化は、同湖にとても大きな副産物的効果を生んでいるとのご報告 もいただきました 。それが、かつては“ゲームフィッシングの聖地”と呼ばれた、奥只見湖の幻のターゲット、大イワナや サクラマスの釣果。
「これまで奥只見湖では、釣り人の皆さんで構成される 『奥只見の魚を守る会』が中心となって、イワナやサクラマスの発眼卵放流や湖のクリーン作戦等、資源回復を目指した活動を長年継続していただいております。そして、これらの魚を支えるワカサギの存在はとても重要、ということも実感としてありました。 LOVE BLUEの支援後、それまでは見掛けなかったワカサギの群れが、湖岸沿いや流れ込みに真っ黒な帯になって見られるようになったんです!そして、これまではイワナやサクラマスの釣果は 1 桁が普通だったのが、頻繁に2 桁釣果に恵まれる人が増え、しかも 50 ㎝を超えるサイズが本当に良く釣られています。2022年4 月にはなんと、28年ぶりに70 ㎝の大イワナが釣れました。これは本当に快挙と言えるものです。ワカサギ増殖の充実が、ワカサギだけじゃない豊かな奥只見湖の復活にとても大きく貢献していることは、7 軒ある貸ボート店の共通認識です。奥只見湖の未来へ向け、豊かな釣り場を残していく一助として、LOVE BLUE事業には、とても感謝しています」
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