突然喰いついてきた海外初フィッシュ
しばらくすると雨も止み、気晴らしに投げていたミノーに突然何かが食いつきました。かなり強烈な引きなので私はチャドーを思い浮かべましたが、上がってきたのは鯉によく似た魚。鱗は大きく、一枚一枚がはっきり主張しており、鰭は綺麗なオレンジ色に発色しています。この魚はカスープと呼ばれているらしく、魚食性の強いコイ科の魚です。
チャドーではありませんでしたが、自身初の海外フィッシュは60㎝越えのカスープ。否が応でも期待値は上がります。しかし、この魚を最後に、最終日までチャドーからのコンタクトはありませんでした。
最終日に出た!念願のチャドー!
最終日、あまりの釣れなさに半ば諦めていた私ですが、沈黙は突然破られます。投げていたプロペラルアーがいきなり水柱とともに水中へ引きずり込まれました。間違いなくチャドーでしたが、あまりに突然すぎる襲撃になすすべなく、すぐにフックからハズれてしまいました。
千載一遇のチャンスをものにできなかった悔しさがあふれ出てきますが、それでも魚からのコンタクトで集中力を取り戻した私は黙々とルアーを投げ続け、ついにその時がやってきました。
パラララッと水上を進むプロペラルアーに再びボンッと水柱が立ったのです。今度はしっかりフックアップしましたが、驚いたのは一瞬の引きの強さでした。雷魚とはよく言ったもので、ギュンッ!と突然ダッシュするものですから、こちらとしてはそのたびに口からフックがハズれるのではないかと気が気でなりません。
ようやく網に納まった時は嬉しさとともにアドレナリンが噴き出て、しばらく叫んでいました。結局キャッチしたチャドーは一本のみでしたが、ネイティブフィールドの難しさと、それを乗り超えた時の達成感をどうやら私は忘れることができないらしく、この10年間欠かさず釣り旅を継続しているのだと思います。
水上小屋での生活は?
水上小屋でのメイン食材は基本的に釣れた魚か、網で取った魚がメインでした。全料理に言えることですが、とにかく辛いのと、ほとんどの料理にパクチーやナンプラーなどのエスニック系食材がふんだんに使われています。
バンコクのような都会であれば、それらを避けた料理だけで生活もできるでしょうが、基本的に海外では田舎に行けば行くほどその国の料理の傾向が強くなるように思います。私は今でこそパクチーもナンプラーも大好物ですが、初めて口にしたときは中々慣れるまでに時間がかかりました。
また夜になると虫の数が物凄いです。追い払うことは不可能なので、諦めて虫入りのご飯を気にせず食べるか、絶食するかの2択を強いられます。ここでの経験をしたおかげで、私は今となっては虫だろうがゲテモノだろうが、奥地で体調を壊さないためならなんでも食べられるようになったのかと思っています。
気になるお風呂とトイレは?
お風呂はもちろん湖。トイレももちろん湖です。住人曰く、排泄物は沈むから大丈夫なんだそうな。「郷に入らば郷に従え」という言葉がありますし、それでなくとも灼熱で大汗を掻いたかと思えばスコールでずぶ濡れになり、それが湿度・温度の高い気温でゆっくり乾いていくものですから、中々不快です。私はそれらを両天秤にかけた結果、毎日水上小屋から湖に飛び込んでいました。真水に飛び込むのは案外気持ちの良いものです。
水上小屋は釣り人にとってパラダイス
このような生活をしつつ、暇があれば釣り竿を出します。水上小屋の近くにいる魚たちは、水上小屋から捨てられる残飯や明かりに集まってくる虫を食べているので、餌には全く困りません。ダラダラしながらブッコミ釣りでワラゴアッツーなどのナマズのアタリを待つのもよし。
目視できるインディアンナイフフィッシュやマーブルゴビーをひたすら釣るのもよし。と、釣り人にとってはパラダイスのような空間こそが、水上小屋なのです。
タイの真骨頂は釣り堀文化!
さて、ここまではタイの奥地、カオレムダムでの生活をご紹介しましたが、実はタイにはネイティブフィールドに勝るとも劣らない素晴らしい釣り文化があります。それは各地にある釣り堀です。
例えばカオレムダムのような場所に行くとなると、旅行の片手間では中々難しいですし、短期間で無理やり行っても時間的に満足する釣りはできないかもしれません。ですがバンコクには、手軽に気軽に海外の魚を釣ることができる釣り堀も多く存在します。例えば私が訪れたパイロット111という釣り堀は、かなり安価な料金で入場でき、タイ国内の魚が放流されている池で釣りをすることができます。
ここではバラマンディやチャドーの他にも、スポッテッドナイフフィッシュやアジアンレッドテール、プラーサワイなどを釣ることができます。
100kg以上のオオナマズを狙えるブンサムランフィッシングパーク
また、ブンサムランフィッシングパークでは100kg以上にもなるメコンオオナマズを狙うことができます。基本的にレストランも併設してありますし、ブンサムランに至ってはコテージのような戸建ての空間を借りて、お酒を嗜みながら釣りを楽しむこともできるのです。
当時の私はコテージを借りるのはおろか、お酒一杯買うことすらできませんでしたが、そのうち再訪して、昔を懐かしみながらメコンオオナマズを釣りたいものです。(ちなみにブンサムランは新しくなって場所も変わったようなので、久々に行かれる方は要チェックです。)
日本からも行きやすいタイをぜひ海外釣行の候補に!
以上が私の初めての海外釣行でした。冒頭でバックパッカーの聖地だの、観光地がたくさんあるだのと書いていたのに、そのほとんどに行くことができなかった私ですが、今となっては本当に初めての海外釣行がタイでよかったと思います。
最近は物価も上がり、ものによっては日本とあまり変わらないのでは?とも言われておりますが、やはり日本から近いという地理条件は、往復時間でも航空券代でもアフリカや南米よりはるかに行きやすいです。もし私の記事を見て海外の釣りに興味が湧いたなら、タイという選択肢を是非、検討してみて下さい。自信を持ってオススメできるフィールドです。
アングラープロフィール
前野 慎太郎(まえの・しんたろう)
20カ国超!海外遠征を繰り返し「自分だけしか見たことのない景色や魚」を求め、秘境を探しさすらう。地元広島河川のシーバスを始め、国内でもあらゆる釣りにチャレンジ。TULALAフィールドスタッフにして、Routesシリーズ開発担当。XBRAIDサークルメンバー
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