歯が鋭い魚に穴を空けられる!? それでも安全な釣り用『SUP』の選び方

宮古島在住の宇田和志さんが最高の釣り体験のためのヒントを与えてくれる連載『釣りと黄金郷』。魅力的な釣りのメソッドから、釣りに行くからこそ出会える感動まで、読めばきっと釣りの理想郷に近づけるはず…!今回はSUPフィッシングにぴったりなSUPの選び方!この夏にSUPデビューを考えているなら必見です!

文と写真:宇田和志

宇田和志
うだ・かずし/愛する釣りの魅力を宮古島から発信するフィッシングクリエーター。「 Eldorado 」にてアングラー向けのシルバーネックレスを手掛ける傍ら、ブログやYoutubeなど各種SNSを通して「釣りを通して人生をさらに楽しくする」を応援する。海外釣行にも力を入れており、その様子にも注目だ。

3月下旬。

宮古島では毎年この時期になると冬の間ずっと吹いていた強い北風が風向きを変え南風になり、気候も暖かくなってくる。SUPフィッシングのシーズン到来だ。

魚釣りに特化したSUP

一言でSUPと言っても様々なタイプのものがある。

スピードを出すのが得意なタイプ、安定性を重視するタイプ、サーフィンができるタイプなどなど、様々な素材や形状のSUPの中から用途や目的に合わせて自分にとって最適なものを選ぶ必要がある。

私がいつも使ってるSUPはSOUYU STICKというメーカーのADVENTURE 10’10”というモデル。

このSUPには以下2つの大きな特徴がある。

・インフレータブル(空気で膨らませて使う)
・釣りに特化したデザイン

この2つの特徴について、それぞれメリットとデメリットをご紹介したい。

インフレータブルSUPのメリット・デメリット

まずは「空気で膨らませて使う」ということがこのSUPの最大の特徴と言っていいだろう。

空気で膨らまして使うSUPのことをインフレータブルSUPと言う。

使わない時は空気を抜いて小さく折りたたむことができるため庭や倉庫などSUPを保管しておく場所がない家や、ワンルームのアパートなどでもコンパクトに保管することができる。

さらに軽自動車のような小さな車でも釣り場までの運搬が楽にできるし、飛行機を使った遠征釣行だって可能だ。

そしてハードボードのSUPに比べて圧倒的に重量が軽いので水辺までの持ち運びが楽なのも利点の一つ。

小さく折りたたんで釣り場まで持っていき現地で空気を入れて使うことができるというのは、保管・運搬・移動の際に大きなアドバンテージになってくる。

ここまで読んでいただいたあなたは、もしかしたらこんなことを考えていないだろうか。

「空気で膨らますって…本当に大丈夫なの?」

空気で膨らますと聞くと浮き輪のようにボヨンボヨンした感じを想像する人も多いと思うが、インフレータブルタイプのSUPは非常に強い空気圧まで耐えられるように設計されており、既定の空気圧をかけるとまるで板に乗っているのと錯覚するぐらい固くなる。とは言え、どうしてもパンクする可能性がゼロではないということがインフレータブルSUPの最大のデメリットと言えるだろう。

尖った岩や珊瑚に擦れて穴が開く、釣った魚のヒレが刺さって穴が開く、釣り針が刺さって穴が開く。

こういった事故は私にも経験がある。

SUPフィッシングを初めて4年が経つが、この4年間で穴が開いて空気が抜けた回数は3回。ランディングやリリース時に釣った魚のヒレが刺さって小さな穴が開いたという事故が2回、ダツという鋭いキバを持つ魚を釣った際にキバが刺さって穴が開いたという事故が1回。

いずれも小さな穴で済んだため一気に空気が失くなってしまうほどの事故ではなくその都度ボンドで補修して今も問題なく使えているが、海の上にいる時になんらかの原因で大きな穴が空いてしまった場合は沈没するリスクがゼロではない。

釣りに特化したフィッシングSUPのメリット・デメリット

私が使っているADVENTUREというモデルのSUPは初めから魚釣りをすることを前提として設計されているフィッシングSUPというカテゴリーに属する。

まずメインの気室に加えて両サイドにアウトリガーというサイドフロートのようなものがあり、これによって安定感が大幅に増す。

よほどの大波でもこない限り人間が落ちることはあってもSUP自体がひっくり返ってしまうということはほぼほぼ無いと言っていいだろう。

そしてこのアウトリガーはメインの気室を守ってくれるという側面もある。

私が過去に3回、魚のヒレやキバで穴を開けられたのは全部このサイドの部分なのだ。

穴が開く時は大体魚をランディングする時とリリースする時。

アウトリガーがあることによってランディング時に魚がメインの気室に触れることがないため、最悪穴が開いてしまったとしても沈没するまでの被害は防げるという安心感がある。

そしてフィッシングSUPにはロッドホルダーが付属され、取り付けるためのベースもあらかじめ設置されていることが多い。ロッドホルダーを取り付ければ竿1本、小さなカバン1つで気軽に釣りに行くことができる。

ただ、逆にこういった装備がデメリットと感じる方はいるかもしれない。

まずはアウトリガー(サイドフロート)の存在。

圧倒的な安定感を得るかわりにスピードが落ちる。

アウトリガーが付いていない一般的なSUPに比べると誰が漕いでも実感するほどスピードは落ちる。そして横幅が広くなることによって立ち上がって漕ぐ際に少し漕ぎにくくなるというデメリットも。

フィッシングSUPはあくまで釣り専用。

一般的なSUP遊び(立ち上がってクルージング等)がしたいのであればまったくもって不向きなのだ。

そしてロッドホルダーに関しても、取り付けのベースの位置が固定されているためロッドホルダーの取付位置を自由に選べないという見方もある。

そのためSUPフィッシングアングラーは買い物かごやクーラーボックスなどを改造してロッドホルダーを自分で作り、好きな位置に固定できるようにしているのをよく目にする。

これからSUPフィッシングを始めたい方へ

これからSUPフィッシングを始めてみたいと思った時に、まず最初に必要になるのがSUP選び。SUPにはたくさんの選択肢がある。

機能性・利便性・安全性・デザイン・価格帯などなど…悩むことは多いが、SUPで釣りをしたい場合にまずは大きく2つの選択をしてみてほしい。

・インフレータブル or ハードボード
・釣り専用設計 or SUP遊びもできる

一般的なタイプからこの選択をするだけでかなり絞ることができる。そのうえでデザインや価格帯などで比較検討してみてください。

SUPはボートや遊漁船などに比べると気軽に沖に出れて、おかっぱりに比べて確実に釣果が上がる。

立ち上がってキャスティングできたり、少し疲れたら横になって休憩することだってできる。(※SUPで眠ることは絶対にやめてほしい)

さらにカヤックやゴムボートに比べて準備・片付けが非常に楽だし、再乗艇が簡単なので途中で海に入って泳いでみたり…といういろんな楽しみ方がある本当に楽しいアクティビティだ。

これから始めようかなと考えている方の参考になりましたら嬉しいです。

※本記事は”ルアマガプラス”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。