
片方の手ではロッドを握り、もう片方の手はリールのハンドルを、ノブをつまんでいる。
僕ら釣り人は、その両手を通じて魚を感じ、アプローチし、コンタクトする。ハンドルは釣り道具の中の最重要パーツのひとつだ。
●文・写真:丹律章
センドウタカシ(せんどう・たかし)
千藤卓 a.k.a ニンジャ/1974年鳥取生まれ、愛知在住。プロアングラー。
2023年よりドライブのテスターを務める。テレビの釣り番組や釣り雑誌などへの出演のほか、平谷湖フィッシングスポットと日進総合運動公園プールフィッシングでインストラクターを兼務する。
profile
佐藤潤弥(さとう・じゅんや)
1992年神奈川生まれ、神奈川在住。
カラーズインターナショナルでドライブF部門を担当する。
2016年第16回トラウトキングエキスパートシリーズ第3戦優勝。
2021年ベリーパーク王禅寺年間優勝。
2021年フィッシングフィールド中津川カップ年間総合優勝。
2023年2024年須川フィッシングパーク・ファイナル戦二連覇。
リールのハンドルに求めるもの
ハンドルこそがリールの心臓だ
タックルを複数本用意するエリアの釣りでは、ハイエンドのリールを揃えるのは経済的に負担が大きい。ハンドルの交換だけで釣りが大きく変化するというのは、平均的アングラーにとって朗報だろう。
千藤「エリアの釣りを始めた頃は、リールに付いている純正のものをそのまま使っていて、今の純正はそれなりに軽いのである程度の満足感は得ていたんですが、ある時友人からドライブのハンドルを借りて使ってみたら、ハンドルだけでこんなに変わるんだと衝撃を受けたんです。自分の使っていたリールは高級品ではなかったんですが、ハンドルを、言い方悪いですけどたかがハンドル一個変えるだけで、リールが別物になるんです。それでハンドルを全部ドライブのものに変えていった。そういう感じです。
ハンドルに求めるものというと、軽さと剛性ということになるんですが、僕の場合はまずは体感ありきでカスタムハンドルの素晴らしさを知ってしまったということろです」
――ドライブのハンドルを使うと、釣りのどの部分が変わるのでしょう。
千藤「自分が何をやっているか、手元で分かるようになります。感度の良さですね。それと、軽さゆえの安定性っていうんでしょうかね。重いものを回すにはある程度の力が必要で、それが軽いものなら一定に回転させるときのブレがとても小さくなる。軽いものならカーボンとかあるんですけど、ガタが出てしまうものもある。それがやはりアルミという剛性の高い素材で、構造上もきっちり組んであると、ブレが極めて小さくなります」
佐藤「パーツはアルミの削り出しで、それをネジで組み上げてありますので、構造上とても剛性感の高いものになります。最近のテクニックで言えばミノーのマジックジャークとか、速い動きを何度も繰り返すようなアクションに関してはかなり耐性があると思います」
千藤「ハンドルの中には、試合中に折れてしまうものもあるんですよ。激しい動きを繰り返していると折れるっていう経験をした人も何人もいて。それがアルミの削り出しだと、まず考えられない。その安心感がある」
佐藤「千藤さんがうちのハンドルを使った時に、フィーリングとしてオフセットの効果を感じたんだと思うんです。ハンドルは付け根の部分から、斜めに軸が出てノブにつながっているわけですけど、スピニングリールはベイルアームが回転しますから、それと干渉しないようにデザインしなければならない。純正のハンドルは、このクリアランスをかなり大きめに取っているんです。軸がより開いている」
千藤「そうそう」
佐藤「ハンドルが開けば開くほど、重心が外に向くので、脇が空いているようなフィーリングになります。逆に近ければ近いほど、一体感が出てリーリングの安定感も増します。剛性、軽さとともに、この距離感も大きいかなと」
千藤「僕は海の釣りをする時に安価なリールを使うんです。塩水なのでいろいろありますから。それにこのハンドルを付けると本当によく分かる。高級リールはそもそもポテンシャルが高いけれど、安いリールになればなるほどハンドルを変えたときの違いが如実に分かります」
ノブの重要度
シリコン・ラウンド・ノブ
ノブを変えただけで釣りは変わる。滑りにくい形状とシリコン素材を採用したことで、添えているだけで指が残る。
佐藤「釣り人が触る部分ってノブじゃないですか。極端な話、ノブを変えただけでもフィーリングは変わります。操作感も違ってきますし。ノブだけ単体販売もしていますが、ノブだけ変える人も結構いますよ」
千藤「僕は丸ノブまだ使ってなくて、平ノブ限定になるんですが、平ノブは厚さがとても重要で厚いほうが力が入れやすいけど微調整が効きにくい、逆に薄いと力は込めにくいけど微調整が効く。エリアはフィネスの釣りですから、より微調整が効く方が使いやすい。それと、マイクロスプーンのようなライトな釣りをする時に、より多くの情報が伝わってくるのも薄いノブですね。まあ、厚いノブが好きな人もいますから人それぞれの部分もあるんですが」
佐藤「薄い方が細かい釣りができるとは思います。エリアはノブをつまむ釣りですから」
――ラウンドも細いほうが使いやすいわけですか。
千藤「僕はラウンドノブが好きじゃなかったんです。それはドライブのラウンドノブみたいな絶妙な細さのノブが市場に存在しなかったから」
佐藤「以前は、太かったり逆に細すぎたり、素材が滑ったり。そういうラウンドノブしかなかったですね」
千藤「平ノブはたまに握り損ねることがあるんです。平ノブの平らな面じゃなくて角をつまもうとしたり。丸ノブはそういうことがないでしょうね。どこから持っても一緒だと。今日初めて触ったんですが、今、丸ノブに非常にときめいているんです」
佐藤「丸ノブは滑るっていう意見がとても多くて、そこはクリアしなければならない問題でした。それを解決したのが先端が少し膨らんだこの形状と、シリコンという素材です」
――シリコンはノブの素材としてベストな選択でしょうか。
佐藤「以前はアルミのノブとかも作っていたんですが、如何せん冷たい。冬の釣りですから。以前ウチのハンドルに標準装備されていた樹脂もありますけど、これもツルツルしてグリップ性は良くない。だから…正確にはシリコーンっていうんですが、これは現時点では、非常にグリップ性能に優れていて最強だと思います」
千葉 卓 TACLE DATA
①放流
フリップやシェイクなどで誘いを入れることも多いので、繊細な動作が行いやすいシングルハンドル。また、確実にフッキング・パワーを伝えたいので、ハンドル長は45mmです。
45mm
ハンドル:エアーステア45mm(ドライブ)
ロッド:アルチザン・コンペティション AATS-61ML/S(エバーグリーンインターナショナル)
リール:ルビアス2004(DAIWA)
ライン:アップグレードX4・0.2号(エックスブレイド)
リーダー:エリアナイロンハード0.5号(エックスブレイド)
②ミノー
操作系の釣りでは、細かい操作のやり易いシングルハンドルを使用します。不意に出たバイトや巻きアワセになった際もしっかりとフックを貫通させたいのでパワーのある45mm。
45mm
ハンドル:エアーステア45mm(ドライブ)
ロッド:アルチザン・コンペティション AATS-62MH/R(エバーグリーンインターナショナル)
リール:バリスティックFWLT2500S-CXH(DAIWA)
ライン:S-PETクリア・0.4号(エックスブレイド)
リーダー:アップジーリーダー V12 ハード・0.6号(エックスブレイド)
③オールマイティ
今後変わる可能性も無くはないですが、現状、エリアを始めた時から使い慣れている40mmのシングルハンドルを基準と考えています。巻きの釣りの比重が大きいですが、操作系もカバーできます。
40mm
ハンドル:エアーステア40mm(ドライブ)
ロッド:アルチザン・コンペティション AATS-61MLST/F(エバーグリーンインターナショナル)
リール:プレッソ2025C(DAIWA)
ライン:S-PETクリア・0.3号(エックスブレイド)
リーダー:アップジーリーダー V12 ハード・0.6号(エックスブレイド)
④クランク
元々はシングルでしたが、巻きの安定感やフッキング初期のパワーロスの少なさを体感し、ダブルに変更しました。フルサイズクランクは75mm、小型クランクは65mmを選択します。
75mm
ハンドル:エアードライブW75mm(ドライブ)
ロッド:アルチザン・コンペティション AATS-61L/RF(エバーグリーンインターナショナル)
リール:プレッソ2025C(DAIWA)
ライン:S-PETクリア・0.3号(エックスブレイド)
リーダー:アップジーリーダー V12 ハード・0.6号(エックスブレイド)
⑤マイクロスプーン、マイクロクランク
繊細な操作を求められるマイクロスプーンの釣りでは、38mmのシングルハンドルを使用します。トーナメントなどでロッドの本数が限られる時はスモールクランクも併用します。
38mm
ハンドル:エアーステア38mm(ドライブ)
ロッド:アルチザン・コンペティション AATS-61UL/R(エバーグリーンインターナショナル)
リール:プレッソ1025C(DAIWA)
ライン:S-PETクリア・0.25号(エックスブレイド)
リーダー:アップジーリーダー V12 ハード・0.5号(エックスブレイド)
佐藤潤弥 TACKLE DATA
①0.6g〜1.5gのスプーン
放流ではなくニュートラルの魚をスプーンで狙うタックルなので、ゆっくり巻きやすい38mm、フリップや早巻きなどフレキシブルにアクションがしやすいようにシングルハンドルを採用。
38mm
ハンドル:エアーステア38mm(ドライブ)
ロッド:グランデージ55(アピア)
ライン:エステル0.3号
リーダー:フロロカーボン0.6号(30cm程度)
②放流&ボトム&ミノー
放流の手返しやトルクを重視して①のタックルよりややトルクを上げるイメージで40mmを選択。操作系の釣りは強くアワせることが多いので、メインラインとリーダーともに号数を上げている。
40mm
ハンドル:エアーステア40mm(ドライブ)
ロッド:TREVALISM KABIN 506CS-tip(ブリーデン)
ライン:エステル0.35号
リーダー:フロロカーボン0.8号(30cm程度)
③フィネスクランク
2g前後の比較的小さいクランクを巻く際に使用するクランク専用タックル。最初から最後まで一定に巻くクランクの釣りには、基本ダブルハンドルのみのセッティングになる。
65mm
ハンドル:エアードライブW 65mm(ドライブ)
ロッド:テトラワークス・リアクト50(デュオ)
ライン:エステル0.3号
リーダー:フロロカーボン0.6号(30cm程度)
④3gオーバーのクランク
サイズの大きいクランクは引き抵抗も大きいため、少しトルクを出すために75mmのダブルハンドルをセッティング。ボトムノックは根掛かりリスクもあるのでリーダーのみ号数を上げて対応。
75mm
ハンドル:エアードライブW 75mm(ドライブ)
ロッド:TREVALISM KABIN 410CS-tip(ブリーデン)
ライン:エステル0.3号
リーダー:フロロカーボン0.8号(30cm程度)
取材協力
足柄キャスティングエリア
神奈川県西部に位置し、都心からのアクセスも抜群の管理釣り場。
所在地:〒250-0136 神奈川県南足柄市矢倉沢1682
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