
JB40周年記念パーティにおいて、山下茂会長から取り組みのスタートが発表され、招待客に記念として配布された生分解性素材でできたJBルアー。そのときにお披露目され、2024年3月22日にSDGsまなび館とともに開所したのが生分解性釣具・生活用品研究所だ。その当初から研究や開発、生産を任されているのが、研究員の荒岡天樂さんだ。1年が経過した今、その研究開発はどのように進んでいるのか。研究開発の今についてお話を伺った。
●文:ルアマガプラス編集部
荒岡天樂
あらおか・てんがく 2003年生まれの22歳。長野県下諏訪町出身。総合学園ヒューマンアカデミーフィッシングカレッジ富士河口湖校のルアービルダー専攻で学ぶ。「入試の時に、生分解性のルアーを作っていきたいという話をしていたのですが、その後山下会長がそういうことを始められるということになり、トントン拍子に話が進みました」。
勉強するところからはじまって仕事を任される立場に
山下会長は、湖底清掃や湖岸清掃で出る釣りのゴミや、魚の胃の中からワームが出てくることに対するショックと責任についてよく口にされています。団体や業界としてよくないイメージが付いてしまうことを心配され、なんとかしなければという気持ちで設立されました。生分解性素材の研究から、ルアーなどの開発や生産方法を確立するための研究所です。
就業当初は『射出成形機ってなに?』くらいのレベルでした。最初はデザインも形を作るのが精一杯だったのが、射出成形しやすいかたちを考えるというように作業の効率を含めてやれるようになり、技
術的にも成長したと感じます。また電話一本で有名メーカー社長とつながる22歳はなかなかいないと思いますので、恵まれた環境にいると感じます。素材の会社とのやりとりとかも多いですし。また上や横だけでなく、下とのつながりもできて、本当に充実しています。学生のときに想像もできなかったようなことが今はどんどんできるようになって、やってみろって任せてもらえるのがやっぱり嬉しいです。それが本当に良い経験になりますので。だから仕事が楽しいですね。
JBルアーも進歩。その背景に素材や接着など研究の成果が
パーティで配布したものは、記念ルアーという位置づけで作った初期型で、生分解性素材のマタビーと籾殻を混ぜ合わせた茶色いものでした。実際にヒューマンの学生が使って、動くし釣れるということでテスト販売されましたが、そこから素材は変わっていきました。
接着の部分もあまり強くなく、リップも曲げられるぐらい柔らかかったものが、現状では透明で強度もあるものになり、接着剤も変わっています。実際、場内で強度テストをしてみて、砕けるにしてもリップだけが折れたり、接着が関係ないところから割れていますので、だいぶ進歩したなというのはありますね。
あと、何よりもソフト素材へのチャレンジ。ワームに近いものができてきたりとかもしています。その経験から僕自身も技術が上がったなと思います。
吟味やトライを重ね生分解性素材の実用性の研究と実証を続けている
研究所としてやっていることは、まず新しい素材を見つけてくるということ。それを仕入れて、射出成形機で製造できるものなのか、どうすれば使えるのかなどをテストします。中には使えないものもあり、接着できない素材などもありますので。金型にフィットする素材というのもあると感じますし、逆に金型に応じて素材が変わるのもありだと思います。適材適所という感じですね。逆にこの素材なら金型はこうした方がいい、というケースもあります。スタートアップのときに、実際作るとなったら全面的にこちらの技術を提供して、問題なくルアーを作るところまでサポートしていければと思っていますので、金型やその先の接着に関するアドバイス、塗装の相談などもですね。現在は研究所内に塗装の設備がないので外注していますが、スタートアップであればどうするかも考えられます。そしてパッケージをして売り出すところまで。このようなところが今後の流れになっていくかと思います。
既存のメーカーさんに素材を提供した場合、新しい素材がうまく射出できなかったら、工場がストップしてしまってロスになり、多大な損害が出る可能性もあります。この研究所はそうならないようにサポートすることも役割なのかもと考えています。こちらとしては、既存のメーカーに素材を使っていただくのが一番のゴール地点だったりもしますが、まずは生分解性ルアーを広めること。この素材で作ったルアーは問題ないよ、ということを周りに認知していただけるような企画、大会とかからですね。1年かかってようやくそういうことが見えるところまできました。
この春3名の学生がインターンとして就業
総合学園ヒューマンアカデミーフィッシングカレッジ富士河口湖校で、荒岡さんのCADなどの
授業を受けた3DCADデザイン専攻の2年生3名が、3月よりインターンとして研究所に所属
している。
竹田虎汰郎さん
たけだ・こたろう 北海道出身。2003年生まれ。21歳。地元ではロックフィッシュやトラウトの釣りを楽しんでいた
加藤和真さん
かとう・かずま 静岡県出身。1998年生まれの26歳。サーフのヒラメなどを静岡の遠州から伊豆までのエリアへ出掛ける。
稲木雷牙さん
いなぎ・らいが 埼玉県出身。2006年生まれ。19歳。2026年度から同研究所への就職が決まっている。
現在担当していることや今後の抱負、環境についての意識の変化についてうかがった。
稲木「ほかの2名より早くここで仕事をし始めました。最近は成形機の操作や、プラグのバリ取りな。射出の細かい修正が自分でできるようになりました。素晴らしい環境でしっかりと勉強をして、将来的には起業して自立できたらと考えています。この先も釣りに関わっていくなら、生分解性のルアーは欠かせない問題になってくるんじゃないかなと思っています。テストの際も根掛かりなどしないよう慎重にやらなければと、意識は変わりましたね」
加藤「ここで学んだことを活かせる仕事、企業に就職したいと考えています。今は稲木さんの補佐的
なことをやっています。危険なことが多いので、気をつけなきゃいけないと感じました。釣り場には
ワームとかが落ちているので、それが生分解性になればいいなと思います」
竹田「実際に成形機での射出やワームの素材を溶かす準備の作業、袋詰めなどをしています。自
分で試行錯誤して研究していくという、研究職の面白さも感じます。ゆくゆくはメーカーを立ち上げたいので、その糧になればと考えています。例えば機械のホースのように形状を維持しなければならないものは通常の素材、スプーンやフォークのように捨てるものだったら生分解性で、といったように素材の使い分けを考えたりするようになりました」
環境に対する意識を持ちながら、将来のビジョンに向かって仕事をする。頼もしい皆さんの活躍に期待したい。
スクープ!いよいよFeco+の製品が全国で発売開始に!
JB LURE スケルトン
JB LURE アヤヤ
JB LURE ワカサギ
GACHAKIN イエロー
SADA FLAT ワカサギ
WANI REO グリーン
WANI REO カーキ
YAMA NEZUMI ホワイト
KIRERUYO グリーン
MILLION SHAD レッド
生分解性釣具・生活用品研究所
富士山館の一角にあるのが生分解性釣具・生活用品研究所。素材の研究とともに、現在のアイテムの生産もここで行われている。
青い機械が製造のメインとなっている住友重機械工業の射出成形機。左の緑の機械がルーダーバンビという、素材を混ぜてペレットにしているリペレット機。
CADのソフトはライノセラスを使用。左側にあるのは木などの素材を加工できる掘削機。
体験プログラムとして生分解性ルアーの組立ができる。体験しているのはヒューマンフィッシングカレッジの学生とOBで、左から鹿嶌太郎(かしまたろう)さん、丹羽真魚(にわまお)さん、長峯充哉(ながみねあつや)さん。
SDGsまなび館
展示が充実し団体が楽しむ場としても機能
SDGsを学ぶことができ、いろいろな体験ができる施設として昨年3月にオープンしたSDGsまなび館。この一年の経過について、取締役で施設リーダーの中村龍一(なかむらりゅういち)さんにお話を伺った。
中村「まなび館には、SDGsのパネル展示に加え、企業などの取り組みを紹介するブースを設けました。ふじさん館は現在、富士吉田市出身の家具職人、小山田利男氏の作品を展示する昭和レトロ家具展となっております。来場者としては、特に学校の林間学校などで関東や静岡から団体でお越しいただきました。体験プログラムではバイオマス含有ルアーの組み立て、ミニ苔テラリウム、裏山の間伐材で作ったプランターに多肉植物を植える体験の人気の3つが柱です。河口湖で実際に釣りをしていただくフィッシング体験も好評で、釣りに関わるプロがサポートいたしますので、ほとんどの子供達に釣っていただくことができております。これからも皆様のお知恵を拝借しながらアップデートして、より多くの方に集まっていただける施設にしていきたいと考えております」。
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町大石2790-6
入館料:大人(高校生以上)1000円、小・中学生800円、4才~ 6才300円※半額サービス実施中、体験は別途料金
アクセス:東京駅からの高速バス(1日1往復)、河口湖駅からのバス運行中
STARTUP TOURNAMENTを開催!
2025年6月29日(日)/7月27日(日)
会場:河口湖大池公園(山梨県)
参加料は無料! 誰でも楽しめるバイオマス含有ルアーの釣り大会を開催! 岸釣りでもボートでもOK。魚種問わず1番重い魚を釣り上げた方にはなんと50万円分のJCB商品券をプレゼント。特別賞として、大きさ問わず釣り上げた魚1匹ごとに1000円分のJCB商品券がもらえるぞ。
※Feco+製品のみ使用可能。
前回の連載
釣り人が出す水中ごみ削減のため、2030年までに生分解性ルアーの完全移行を目指す日本バスプロ協会。今回は、米国バスマスターオープンに参戦中の青木唯と、今季JBトップ50への昇格を果たした藤川温大が河口[…]
- 1
- 2