
●写真・文:立川 宏
松本幸雄さんのプロフィール
松本幸雄(まつもと・さちお)
ロデオクラフト・スーパーバイザー。バリバス・フィールドスタッフ。タレックス・モニター。オプトさいとう・フィールドテスター。伝説的エリアロッド『ホワイトウルフ』シリーズ開発者。エリアトラウトに限らず、ルアーで狙える魚種の壁を独自の理論と経験値で突破する日本屈指のプロアングラー。誰からの影響も受けていない個性的な釣りスタイルが人気を集めている。現在、最も影響力が強いエキスパートのひとりである
エリアゲームの可能性を一気に広げたナイロンショックリーダー『スーパートラウトエリアショックリーダーSVG2ナイロン』。特殊製法[SVG]により超高強度を実現。バリバス独自のスムーステックコート(STC)により吸水性を大幅カット。そのため高浮力を保持できる。0.4号、0.5号、0.6号、0.7号。
夏はナイロンショックリーダーの使用率が上がる!
2025年4月に登場して以来、エリアトラウト戦略の多様化に貢献しているナイロンショックリーダー(バリバス スーパートラウトエリアショックリーダーSVG2[ナイロン]/以下SVGショックリーダー)。
そしてナイロンショックリーダーは、来たるべき【夏】になると使用率が高くなる!と、松本幸雄さん(ロデオクラフト)は言う。
松本さんがナイロンショックリーダーを組むのは、メインラインがエステルのときが多い。その際のエステルラインは主に3択。
- スーパートラウトエリアスーパーエステル
- RCマイスターエステル(ロデオクラフト)
- スーパートラウトエリアES2エステルナチュラル(バリバス)
松本「スーパーエステルとRCマイスターエステルは共に、エステルラインらしいエステルです。性質が近いので今回は混乱を避けるために、以下の説明ではスーパーエステルに統一しますね。
一方ES2はエステルにしては、しなやかで柔らかさもあります。非常に扱いやすいエステルラインです」。
まずはメインラインである、エステルライン(スーパーエステルとES2)の松本流の使い分けからスタート。
松本「ここはシンプルに行きますね。操作優先のときにはスーパーエステルです。つまり小技を入れたいときですね。
一方、巻きの変化で釣りたいとき、且つミスも減らしたい。そんなときにはES2をセレクトします」。
ナイロンショックリーダーの使いどころは?
前述の2タイプのエステルラインに対して、松本さんが、フロロカーボンではなく、ナイロンショックリーダーを組むのはどんなときか?
松本「簡単に言うと浮かせたいときです。この場合、浮かせたいのはルアーではなくライン(リーダー)の方です」。
リーダーを浮かせることによって、リーダーに水が噛みやすくなり抵抗感が出る。その結果、重たいスプーンでも、フロロリーダー使用時よりも、一段階スローに巻くことができる。
松本「この違いはとても大きいです。もっとも分かりやすい例が水面直下のスプーンのバジング。バジングはフロロリーダーだと、慣れない方はやりにくさを感じると思いますが、ナイロンリーダーにすると簡単にできます」。
スプーンに限らす、クランクベイトでもナインロリーダーの恩恵は大きいという。
松本「クランクベイトの場合は、ナイロンリーダー特有のクッション性に助けられるシチュエーションが多いです。具体的には、クランクベイトを高速リトリーブするときです。この場合はナイロンリーダーのクッション性が欲しいです。
または、いまいちフッキングが決まらないとき。そんなときにナイロンリーダーに変えるだけで、フックが残りやすくなることがあります。わずかなズレを詰めるときに、ナイロンリーダー特有のクッション性が役に立ちます」。
上記の状況が、松本さんがナイロンリーダーを使用するときの具体例(厳密には、この他の状況もある)。特徴としては、いずれも【やや特殊】な状況といえる。
松本「今でも王道のリーダーはフロロカーボンです。ナイロンリーダーは確かに特殊な状況を突破するためのアイテムですが、これから来る【夏】は、まさに特殊な状況のオンパレード。特殊な状況が続く夏場は、ナイロンリーダーがメインリーダーになることが多いです」。
来たるべき【夏】にそなえて、松本流のナイロンリーダーの基準セッティングをレクチャー。
松本「自分の場合は、0.4号クラスの細いナイロンリーダーを使う場合は、長めに取ります。平均2ヒロくらいです。細い場合は水を噛みにくいので、その分を長さで補っています。
一方0.6号クラスの太めのナイロンリーダーを使う場合は、60~80cmです。太い方が水を噛みやすく抵抗感も出やすいので、短くていいという判断です。いずれにしてもフロロリーダーよりは長くしています。
夏場はナロインリーダーがメインになりますが、万能ではないので、フロロリーダーとナイロンリーダー、両タイプを適材適所で使い分けるのがオススメです」。
ナイロンリーダー? フロロリーダー? 使い分け実践編
ここからは、中級者以上のアングラーに向けた、実践編のはなし。松本さんは具体的に、全国区のエリアトーナメントの最前線で、どのようにナイロンリーダーとフロロリーダーを使い分けているのか? 舞台は第24回トラウトキング選手権大会・エキスパートシリーズ。
毎年全3戦開催されるエキスパートシリーズは、各地の予選を勝ち上がった選手と、前年度の成績上位者(シード選手)のみに、参加が許されている、いわゆるトップカテゴリーの大会。そんなエキスパートシリーズで、今年注目を集めたルアーがある。
それはドリフトスピン0.7グラム(ロデオクラフト)。
エキスパートシリーズ第2戦・フィッシングクラブジョイバレー戦において、松本さんは全ての状況を、ドリフトスピン0.7グラムのみで戦い抜いて優勝した。その事実が示すように、今年はドリフトスピンが注目を集めた大会となった。
今年のエスキパートシリーズで、松本さんがドリフトスピン0.7グラムを主軸に据えたのが、前述の【第2戦・ジョイバレー】と、【第3戦・フィッシングサンクチュアリ】。
上記2大会で、松本さんは同じドリフトスピン0.7グラムを使うにあたり、リーダーを使い分けている。
松本「ジョイバレー戦では、フロロリーダーを使ってドリフトスピン0.7グラムを巻きました」。
この日、上目のレンジに浮いているトラウトは回遊しているトラウトだった。この日の回遊系のトラウトは、目の前にくれば比較的イージーに釣れる状況。つまり、この日浮いているトラウトは、勝負のカギを握るタイプのトラウトではなかった。勝負のカギは回遊が来ていないタイミングに、いかにして釣るか?
松本「あの日、自分はドリフトスピン0.7グラムを使って、下方向にトラウトを集めていました。下に集めたトラウトに対して、ドリフトスピン0.7グラムが浮かないように、きっちりと操作するために、フロロリーダーの比重を利用しました。通常よりも細いフロロリーダーを、通常よりも長くセットして、沈みやすくして使いました。
一方、第3戦のサンクチュアリ戦では、同じドリフトスピン0.7グラムを、ナイロンリーダーで使いました。サンクチュアリの場合は、勝敗のカギを握る残存トラウト(放流から時間が経過しているトラウト)が、上のレンジに溜まる傾向があります。この場合はナイロンリーダーでないと釣りにくいです。
このように同じルアーを使う場合でも、状況に応じてマッチするリーダーは変化します。だからこそ、フロロとナイロン2タイプのリーダーを用意しておくことが大切です。
リーダーの違いだけで、釣果は驚くほど変化します。
今年の夏も暑くなるかもしれませんが、暑さに負けずに、エリアゲームを目一杯楽しんでくださいませ」。
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