
今回は、フライフィッシングで使用するリールの役割を解説しましす。実はフライリールというアイテムも結構、特殊といえば特殊です。特に渓流のフライフィッシングにおけるリールの役割は単純明快。あの太いフライラインを収納しておく収納庫なんです。
●文:ルアマガプラス編集部(深谷真)
無くてもどうにかなるけれど、無くてはならないもの。それがフライリール
ちょっと金物工作できる人であれば、自分で設計して削って作れるレベルでシンプルな機構なのがフライリールです。
禅問答みたいな見出しですが、フライフィッシングのリールの役割を正しく理解している人であれば、言っていることは理解いただけるかと思います。
結論を言うと、フライリールはフライラインを邪魔にならないように収納しておくための入れ物でしかありません。言い切ってしまうと多少は問題はあるのですが、少なくとも渓流域で使用するフライリールは、効率よくフライラインを収納しておく入れ物でしかありません。ギヤ比率も特殊なモデルでない限り、1:1です。ものすごくシンプル。
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フライリールの代表的なドラッグ機構は2つ。ラチェットドラグシステム。ディスクドラグシステム。
ちなみに、リールのドラッグシステムは、魚が走ったときにラインがスムーズに引き出されるように抵抗をかけ、ライン切れやバラシを防ぐ仕組みです。魚の引きに対してテンションをコントロールし、安定したファイトを可能にします。
ディスクドラグシステムというのは、スピニングリールやベイトリールなどを使っている方ならば、すぐに想像できるかと思います。ディスクブレーキは、リールの中に回転部分(スプール)を止めるための円盤(ディスク)が入っています(フライリールはシンプルなのでノブでスプールを押さえ込んでいるだけのものもありますが)。
古い私物で失礼! こちらは金色のギアの部分を裏のパッドで押さえつけてドラッグにしているディスクブレーキモデル。30年ほど前のバテンキル/オービス(ディスクブレーキモデル)
このディスクにパッド(摩擦材)が圧力をかけて、回転をゆるやかにしているんです。
ラチェットドラグシステムは、カチカチと音を立てながら一定の抵抗をかけるシンプルなドラグ機構です。主にクラシックなフライリールに使われ、バネとギザギザの歯車(ラチェット)でスプールの回転にブレーキをかけます。調整幅は少ないですが、軽量・メンテナンス性が高いのが特徴です。
こちらも古い私物で失礼! ギアにバネのテンションで抵抗を持たせた非常にシンプルなシステム。25年ほど前のマーキス/ハウス・オブ・ハーディーというモデル。
フライリールの場合、ある程度、ラインを引き出すときに抵抗がないとトラブルになってしまいますので、ほどよく抵抗がある状態を、ディスクにしろラチェットドラグにしろ作っていると考えてください。
渓流のフライフィッシングに優秀なリールのドラッグは必要…無い!
この2つの機構を聞いて、なるほど、リールにはそういう機能もあるんだと感じたかもしれませんが、ぶっちゃけますがこの機構を駆使しなければならない魚と出会うことは稀です。
だいたい、魚のやりとりは手でラインを手繰り寄せ、綱引きのようにやり取りすることがほとんどです。ググぐっと引っ張られたら、少しだけテンションをかけて握っていたフライライン送り出します。魚をキャッチするときには、手元のラインをホールドしながら手繰り寄せます…。
写真はエーベルというメーカーのリール。(写真提供:高橋章)
この釣りに慣れてくるとファイトしながら、手元に散乱するフライラインをまずリールに回収し、そしてリールを使ってやりとり。なんてシーンも生まれて来ますが、別にそんなことしなくてもなんとかなるというのが渓流のフライフィッシングです。
そう、極論言うとリールを使わないでやりとりすることが多いということなんです。でも、フライラインをだらしなく垂れ流しているのもトラブルの元です。なので収納庫としてはあると大変便利なアイテムなのであります。
なので、はっきり申し上げて、ディスクブレーキ搭載のフライリールなんて、日本の渓流フライフィッシングには自己満足でしかありません! が、あったらあったで、1割くらいは役にたつこともあるので、好き好きというところなのです。趣味ですからね。そこは自由です。
どんなフライリールを買うべきか
ということなので、フライラインが収納できるリールなら、なんでもいいです。デザインにこだわる、メーカーにこだわる、価格にこだわる。丈夫でシンプルなものであれば、機構も複雑でないので、性能的差異なんてほとんどありません。ただし、サイズだけはちゃんと選びましょう。
渓流釣の場合は4番以下のフライラインを収納するのに適したモデルを選んで下さい(北海道民は4番、5番が必要になることも)。
フライセットを買う時は安価な中華製はセットになっているラインが悪いからやめておきましょうとアドバイスしましたが、フライリールに関しては、フライラインの収納庫として機能するものであれば何でもOKです。有名なブランドのTシャツと、スーパーのセールで売っているTシャツは機能はさほど変わりません。フライリールはまさしくそれ。ブランドもん買いたくなりますけどね…。
ほとんどがアルミを使ったモデルですが、製造方法が何種類かあります。アルミを削り出して整形したもの、鋳型に溶かし込んで整形したもの。プレートやピラーなどを組み合わせてリールの形にしたもの。プラスチック製のものまであります。釣りをするってダケなら、どれを選んでもOKです。
リールの種類、デザイン
1. ラージアーバーリール (Large Arbor Reel)
特徴:スプール径が大きく、ラインに緩やかなカーブがつきにくいデザイン。
解説:ラインメモリ(フライラインにつくクセのこと)が少なく、巻き取りが速くドラグ性能が安定する現代主流モデル。
コロラドフライリール(ロス)典型的な大口径ラージアーバーリール。フライラインにクセがつきづらいが、やや大きめのバランスになる傾向があります。
2. ミッドアーバーリール (Mid Arbor Reel)
特徴:ラージとスタンダードの中間径のスプールを採用。
解説:軽さと巻き取り速度のバランスが良く、幅広く使えます。
オラクル(ティムコ)。ミッドアーバー(中口径)リール。
3. スタンダードアーバーリール (Standard Arbor Reel)
特徴:クラシックな細いスプール径。
解説:コンパクトで繊細な釣り向きですが、ラインメモリが付きやすいのが弱点。
バテンキル・ディスク(オービス)、バッキングラインと呼ばれる下巻き糸を多めにして口径を稼ぎ、なるべくラインにクセがつかないように工夫する必要があります。
4. レイズドピラースタイル (Raised Pillar Reel)
特徴:リールの両サイドに柱(ピラー)があり、スプールがフレームから離れているクラシカルなデザイン。
解説:軽量で見た目が美しく、ビンテージ感がある。バンブーロッドなどにマッチする。
写真右上。プレートをリールフットとピラーで固定しているスタイル。
5. バーミンガムスタイル (Birmingham Style Reel)
特徴:イギリス・バーミンガムで広まった頑丈なリールスタイル。
解説:比較的ずんぐりとしたクラシックなデザインで、クリックドラグのみを備えたものが主流。職人の手仕事感が魅力。
RETRO TROUT(IWANA)という日本メーカーのバーミンガムスタイルのリール。クラシカルなスタイルなので、竹竿などに合わせる人が多いデザイン。https://campanellafishing.com/iwana/
細かく言うと他にもありますが、大別するとこの5つでしょう。
昔は高級リールの典型だったマシンカットリールも格安ECサイトで数千円で購入することができます。が、フライフィッシングは映えの釣りでもあります。コピー品の性能十分を選ぶのもアリですが、『俺、フライフィッシングに真面目に取り組んでみようと思う』と言う大人な釣り人向きに映える安価〜高価格帯のリールをご紹介しようと思います。まぁ、結果、コスパは良くなると思えばいいです。
買って損はしないリールたち
もう、このリールたちを買っておけば、間違いなくどんなロッドやリールにも映える。うるさいベテランも『いいリール持ってるね』と、思ってくれるメーカーと機種です。
ハウス・オブ・ハーディー・リミテッド
キング・オブ・フライリールといっていいでしょう。ハウス・オブ・ハーディーのリールをとりあえず購入しておきましょう。ハーディーはフライフィッシング発祥の地として知られるイギリスのフライタックルメーカーです。詳しい歴史は公式サイトでじっくり味わっていただくほうがよいでしょう。
ライトウエイト
小難しいウンチクは語りません。古くから日本のフライフィッシャーに愛されて来たハーディー・リールの渓流向けモデルです。どんなメーカーのロッドにもマッチします。そして、壊れない限り10年でも20年でもコレクションの一軍を張れるでしょう。ダブルテーパーの2番ライン、ウェイトフォワードの3番ラインがマッチするモデルです。
公式webの写真です。
マーキスLWT 2/3 or 4
ベテランのフライフィッシャーであれば、マーキスと言えばハーディーのリールで、小型の渓流用番手も昔はラインナップされていて馴染みが深いのですが、現行では低番手のマーキスはLWTというモデル名で展開されています。質感もかっこよさも昔のマーキスよりいい感じ。
オービス
ORVIS(オービス)は、アメリカの老舗有名フライタックルメーカー。このメーカーはロッドも有名なのですが、こちらで長年売られているリールも、ハーディー同様に、これから一生使っていけるブランド力を持ったリールとなります。
CFO Ⅱ or Ⅲ
創業者『Charles Frederick Orvis(チャールズ・フェデリック・オービス)』の頭文字をとってCFOと名付けられたロングセラー。一時期、カタログ落ちしていましたが、現在は復活してラインナップされています。スタン・ボグダン(Stan Bogdan)というフライフィッシング界に名を刻む、巨匠によってデザインされたと言われる両面穴あき軽量化されたアイコニックなリール。1972年に登場して以来、愛されている息の長いモデルです。どんなロッドにもしっくりくる『映え』るアイテムです。渓流用としてはコンパクトなⅡというサイズか、ほんの少し大きなⅢを買い求めると良いかと思います。
バテンキル(クリック&ポールモデル/ディスクモデル)3FT BATTENKILL CLICK FLY REEL
渓流釣りという範疇でいけば、ディスクブレーキ付きリールはほとんど必要ない。60cmのニジマス相手にも必要ありません。あってもいいけどね…。
CFOがオービスのリールナインナップのフラッグシップだとすれば、こちらはその廉価版に位置するアイテムになります。とはいえ、CFOを彷彿とさせるデザイン、ディスクドラッグ機構モデルがあったりと、性能面では申し分なし。記者的には渓流で使うなら、クリック&ポールモデルで十分だとは思うのですが、ディスクモデルも謎の満足感がありますので、どちらを選んでも問題ないかと思います。
以上、4機種のどれかを持っていれば一生の相棒として活躍しますが。こちらある意味、フライフィッシャーマンを名乗る人であれば、高確率で持ってドヤってるリールです。
俺は自分でアイデンテティを確立するぜ!って気概の方は、気に入ったデザイン、予算に合う価格帯のなるべく『軽くて丈夫でシンプル』なフライリールを選んでください。ちゃんとスプールが回転して、ディスクシステムでなくてもほどよくラインにドラッグが掛かる機構であればOKです。軽くてと申し上げましたが、別に多少重くても問題は、、、ありません。
先に上げた、オービスやハーディには他にも魅力的なデザインのリールもありますし、そちらを物色してもよいかもしれません。
写真はハーディー社のクラシカルなリールでパーフェクト。何十年も前のリールだがいまだに現役。どころか主力。
お好きにどうぞ。と、言われても困るかもしれませんので、記者が覚えている範囲で持っていれば映えそうなリールメーカーを羅列しておきます。日本の代理店がないメーカーもあるかもしれませんのでご了承ください。エーベル、アイランダー、ラムソン、ノーティラス、ループ、ウォーターワークス..。挙げてみましたが、本当にデザインだけでフライリールは選んでいいと思います……。日本の国産リールも精度が高くてかっこいいリール多いので、少し調べてみてください。
では、次は、一度、ロッドに舞い戻りまして、『俺は、本気でフライフィシングを始める。ボーナス全部を注ぎ込む覚悟だ!』と言うみなさまのためのロッド選びを解説しようと思います。
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