
ヘッドと呼ばれる鉛やタングステン製の玉に、ネクタイ・スカートと呼ばれるラバー素材のパーツが組み合わさったルアー「タイラバ」。シンプルなアクションでマダイをはじめとした様々なターゲットを狙うことができるので、オフショアルアーゲームへの第一歩目にもおすすめだ。
●文:ルアマガプラス編集部(山川)
ターゲット
ターゲットは魚の王様「マダイ」。鮮やかな見た目で、古くからお祝い事には欠かせない縁起魚として親しまれてきた。
日本列島全域の近海に生息しており、オールシーズン釣ることができるが、乗っ込みと呼ばれる春~初夏には、産卵を控えた大型個体が狙え、時には80㎝を超えるモンスターサイズに出会えることも。数釣りが楽しめる秋には、40㎝台の食べ頃サイズが狙える。
雑食性の魚であるが、主に甲殻類や魚類を捕食し、今回紹介するタイラバはじめ、メタルジグを使ったジギングでも釣ることができるルアーゲームの好敵手だ。
鮮やかな赤に立派な魚体、その見た目はまさに…おめでタイ!
ブリ、シーバス、ヒラメ、マゴチ、カサゴ、ホウボウ等、タイラバゲームではマダイ以外にも多種多様な魚がヒットする。シンプルな釣り方でターゲットが豊富なところもオフショアルアーゲーム入門におすすめしたい大きな理由である。
ターゲットは無限大!ボウズを回避しやすく初心者に優しい釣りである
仕掛図
ロッド
タイラバ専用ロッドはしなやかに曲がり、繊細な穂先を持つものがほとんど。マダイは噛みつくようにしてタイラバを追いかけてくるので、違和感なく針掛かりさせるための重要なポイントである。専用ロッドが無い場合は柔らかめのライトジギング用ロッド等でも可。
ポイントで使用するタイラバウェイトが背負えるものを選ぶこと。もし商品のラインナップに「乗せ調子」と「掛け調子」があれば、最初の1本はオートマチックにフッキングしてくれる「乗せ調子」がおすすめだ。
柔らかすぎ!と思われるかもしれないが、タイラバにおいて柔らかいは正義なのだ
リール
PEラインの1.0号が200m以上巻けるリールを用意しよう。特に初心者であれば着底が把握しやすいベイトリールを推奨する。タイラバ専用リールでなくとも小型の船用両軸リールであれば流用可能だが、ドラグ性能の良いものを使いたい。
水深を測れるカウンターがついたものは魚のヒットゾーンを把握しやすくなり便利である。ギア比はゆっくりと一定のスピードで巻きやすくなるローギア(パワーギア)タイプがおすすめ。
初心者といえばスピニングリールのイメージだが、タイラバは初心者こそベイトリールを使って欲しい
ライン・リーダー
0.6号~1.0号あたりのPEラインを使用する。タイラバはドテラ流しの釣りになることが多いので、少しでも潮切れを良くするために1.0号以下のラインを使いたい。細くて不安に思われるかもしれないが、ドラグを効かせながらやりとりするので心配ない。
高切れ等のトラブルも考慮して最低でも水深の倍以上は巻いておこう。(例:水深100m前後のエリアで釣りをするなら200m以上巻いておく) リーダーはフロロカーボンの5号前後が3m~5m程度ついていれば十分である。
フグ等の歯の鋭い魚に切られることもあるので、予備のPEラインがあるとなお安心だ
タイラバ(ヘッド)
タイラバのヘッドには様々な形状、カラー、ウェイトが存在する。基本的には釣り場の水深や潮の速さによってウェイトを決める。ウェイトについては乗船する遊漁船の船長に確認してみるのがいいだろう。
形状に関しては潮切れがよく巻き感が軽いもの、巻くだけでフリフリとボディを揺らしてアピールするもの等あるので色々と試してみてほしい。
カラーは定番のレッド、オレンジ、ゴールドを中心にグリーンやグロー等の差し色を揃えておけば幅広い状況にマッチさせることができる。
レッドやオレンジ、ゴールド系はマダイが好む定番カラー
ヘッドには安価な鉛製のものと、高価なタングステン製のものがあるが、同じウェイトでもシルエット(ヘッドサイズ)を小さくできるタングステン製のヘッドは食いが渋い状況で爆発的な釣果を出すこともあるため、少量でもいいので準備しておきたい。
また、タングステン製ヘッドは鉛製ヘッドよりも比重が大きいのでフォールスピード(沈下速度)が速く、一足早くマダイのいる水深へタイラバを届けることができる上、着底が分かりやすくなるというメリットもある。
画像左がタングステン製、右が鉛製であるが、どちらも同じ80gである
タイラバ(ネクタイ・スカート)
タイラバゲームにおいて、ネクタイ、スカート選びも釣果UPに繋がる重要なポイント。様々な形状、カラーが存在するが、基本的にはヘッドのカラーと近い色を組み合わせるのがセオリー。
形状によってアピール力も変わってくるので、ストレート、カーリー、セミカーリー、スカートが付いているものいないもの、幅広く用意して、その日のマダイが好む組み合わせを見つけたい。
タイラバ初挑戦の方は、各メーカーよりヘッドとラバーユニット(ネクタイ・スカート・フック)がセットになったものが発売されているのでそれを購入すればOK。
マダイがアピールを嫌う状況では、スカートを外し、ネクタイのみで使う事もある
タイラバのセット方法は簡単で、まずヘッドを貫通しているパイプにリーダーを通す。出てきたリーダーをラバーユニット上部の金属もしくは樹脂でできた接続パーツに結び付けるだけである。結び方はクリンチノットやユニノットで構わない。
ファイト中にすっぽ抜けないようしっかり結ぼう
釣り方
タイラバゲームの釣り方は極端に言えば一定のスピードで巻くだけといったごくごくシンプルなものだが、いくつか釣果を上げるためのコツがあるので以下紹介する。
①タイラバの落とし方
マダイは海底から中層にかけて回遊していることが多いので、まずはタイラバを落とし、しっかり底取りすることが大事。ベイトリールの場合はより着底が分かりやすくなるよう、スプールを親指で押さえ、軽くテンションをかけながら落としていくと良い。
②タイラバの誘い方
着底したら巻き始めるが、まずは一定のスピードで巻き続けることを意識しよう。中層くらいまで巻いてみて、アタリが無ければ再び着底させる。基本はこれの繰り返しである。
ドテラ流しの釣り(船を固定せず風や潮に乗せて流していく釣り)であれば、何度かこの動作を繰り返していると、ラインに角度がついて着底がわかりにくくなるタイミングがあるはず。その時は一度回収し再度落とし直すようにしよう。
人それぞれスピード感は違うと思うが、ゆっくり巻いてみたり、少し速めに巻いてみたり、その日のアタリが出やすいスピードを試してみて欲しい。反射的に口を使わせるのであれば、海底からの巻き始め2~3mのみ速巻きを入れてみても面白い。
③タイラバのアワセ方
場合によっては前アタリ等なく一気に竿先が絞り込まれるようなアタリもあるが、ほとんどの場合、マダイがネクタイやスカートに噛みつきながら追いかけてきて、噛みついている最中に針掛かりするパターンが多い。
竿先にはガツッガツッと前アタリが出るが、重要なのはここでアワせないこと。前アタリがあってもそのまま一定のスピードで巻き続けていれば、ほとんどの場合オートマチックに針掛かりするので心配無用である。アワセを入れる場合は、魚が針掛かりしてドラグが強く引っ張り出されたタイミング(本アタリ)で入れること。
魚が掛かったあともテンションが抜けないよう、タモ入れまで一定のスピードで巻き続けてこよう。魚が大きければ大きいほど引きも強くなるが、魚が突っ込むときはしっかり竿を曲げていなすこと。糸が出ていくことに慌ててスプールを指で押さえたり、下手にドラグを締めてしまうとラインブレイクに繋がるので注意が必要だ。
ここで重要ポイント!マダイは落下するタイラバを追いかけて海底までついていくことも多いのだが、タイラバが海底についたまま放置されてしまうと「エサじゃない」と判断し離れていってしまう。着底した瞬間に巻き上げる、つまりタッチアンドゴーを意識してもらうと、タイラバが浮き上がった瞬間についてきたマダイに口を使わせることができるかもしれない。アタリが無い時こそ是非実践してみて欲しい。
ただ落として巻くだけでなく、水の中をイメージしながら釣ると面白い
深堀り
深堀その①:ヘッド形状について
先に述べた通り、タイラバのヘッドには様々な形状があり、それによってアクションが変わってくるということも覚えておこう。つまり、このヘッドは釣れない、このヘッドは釣れるという状況が時間や日ごとに、または釣り場ごとに出てくるのである。
流線形のヘッド形状は、潮が重たい状況でも引き抵抗を軽減することができる
例えば下の画像ダイワ紅牙ベイラバーフリーのヘッド形状を見てみよう。上から見るとヘッドが細くなっている側と太くなっている側があるのがお分かりいただけるであろうか。
細くなっている方が頭(細い方から太い方へラインを通す)になるようセットすれば、巻き抵抗は小さくなり、S字スラロームを描くようなアクションになる。
太くなっている方が頭(太い方から細い方へラインを通す)になるようセットすれば、巻き抵抗は大きくなり、潮が緩いタイミングでもしっかり潮を受け止めてウォブリングアクションを起こす設計がされている。
画像上が細くなっている側、下が太くなっている側
形状によってアクションが違うということはそれだけ戦略の幅が広がるということ。タイラバゲームの面白さの1つでもあるので、様々なヘッドを揃えて試行錯誤してみて欲しい。
深堀りその②:フックについて
タイラバで使うフックの数は何本のものを使えばいいのか?2本針、3本針、4本針と各メーカーより発売されているが、人によって様々な考え方があるので正解は無いのだろう。
個人的には、リーダーに絡みつく等のトラブルレスを考慮して2本針をベースに、アタリはあるものの針掛かりしないような状況では3本針や4本針を使うようにしている。
針のサイズについては、マダイが違和感なく口の中に入れることができ、水中でゆらめくラバーの動きに同調させやすい小さめ(軽め)のものがおすすめである。80㎝を超えるような大鯛や青物が掛かるような状況であれば、針のサイズを大きくしたい。
筆者お気に入りの3本針は食いが浅い時でもバイトを絡めとってくれる
フックの話からは少し脱線するかもしれないが、リーダーとタイラバの間にタイラバ専用のサビキ仕掛けを取り付ければ、タイラバサビキを楽しむこともできる。
水の抵抗が変わり、オマツリが増える可能性もあるので、使って良いかどうかは船長に確認しよう。釣り方は変わらない。アジやサバ、深いポイントであれば高級根魚等、嬉しいお土産を確保できるかも?
いつだってサビキ釣りは初心者の味方である
深堀りその③:ワームについて
各メーカーよりタイラバ専用のワームが発売されているが、タイラバゲームでは針にワームを刺して使うことがある。状況によってはワームの有無で釣果に圧倒的差がつくこともあるので侮れないアイテムだ。基本的には針先へのちょん掛けでOK。
ワームを刺すことで簡単にボリュームアップ=アピール力を高めることができる。また、針に浮力をつけることができるので、ラバーの動きと同調させやすくなる上、タイラバが着底した際にヘッドの後を追って針(ラバーユニット)がフワフワと落ちていき、着底時にも魚を誘うことができるのだ。
ワームをつけている人だけ釣れる!そんな日も度々あるぞ
持っておきたい装備
ライフジャケット
乗船時には必ず着用しなければならないライフジャケット。これは法律で定められているので、船釣り入門者であればまず手に入れたいアイテムだ。無料で貸し出してくれる遊漁船もあるので、予約時に確認してみるといい。
落水時に浮力体が膨らみ、浮き輪のような形でサポートしてくれる膨張式とスポンジのような浮力体が入ったベストを着用する固定式がある。どちらにしても国土交通省の安全基準を満たした桜マーク付きのものを購入すること。グレードは全ての航行区域に対応しているTypeAを選べば間違いない。
ちなみに、オフショアルアーゲームでは体の動きを邪魔しない膨張式がおすすめである。膨張式には肩に掛けるタイプと腰に巻くタイプがあるが、デザインも含めて気に入ったものを選ぼう。
偏光サングラス
偏光サングラスは水面のギラツキ(太陽光の反射)を抑え、視界を確保してくれるアイテム。ラインやルアーの動きが見やすくなり、ナブラや鳥山を見つけるのにも有利である。
また、特にオフショアルアーゲームでは、水面で魚の口から外れてしまったルアーが顔や目に向かって飛んでくることがある。はじめは高価なものでなくとも良いので、重大な怪我を防止するためにも着用をおすすめする。
グローブ
グローブは、竿やリールをガッチリ握ることができるので、魚とのファイトを楽にしてくれると同時に、手が滑ってタックルが海に…といった悲しすぎる事故も軽減してくれるアイテムだ。ランディング時には暴れる魚の鋭い歯やエラブタ、トゲから手を守ってくれる役割もある。
暑い季節でも解放感があり、タックルの操作性に優れる5本カットモデル、グリップ力と保護能力ともに高く、キャスティングやジギング等の大物釣りに推奨されるフルフィンガーモデル、手を保護しつつ細かい作業もやりやすい3本カットモデル等、それぞれ特性があるのでシチュエーションに合わせて選択しよう。
レインウェア
海上では急な天候不良に見舞われることもあるため、レインウェアを準備しておくと安心だ。雨だけでなく波飛沫から体が濡れることを防いでくれる。たとえ春夏であっても朝方は冷え込むこともあるため、防寒対策にもなるだろう。
ちなみに購入してすぐに防水スプレーでコーティングしておくことで撥水効果を長持ちさせることができるので試してみて欲しい。
デッキシューズ
特に濡れた船上は非常に滑りやすく、陸上で使うような運動靴やサンダルでは転倒の危険が大いにある。船釣り用のデッキシューズやデッキサンダル、長靴を用意しておこう。
フィッシュグリップ
マダイの口は非常に頑丈で、顎の力はエビやカニをバリバリ嚙み砕くほど。針を外そうとして指を噛まれてしまえば大怪我をしてしまう。マダイだけに限らず、暴れる魚を固定するためのフィッシュグリップは必ず用意しておこう。
ライトゲーム等で使う小型のものではなく、安価でも良いのでグリップ力の高い大きめのものを選ぶこと。記念撮影をする際にも安全に、かつ迫力のある写真が撮れるのでおすすめのアイテムだ。
プライヤー
フィッシュグリップに併せて用意してもらいたいのがプライヤーである。フィッシュグリップで固定した魚の口から針を外すためのアイテム。
魚が暴れた際、自分の指に針が刺さってしまった人をこれまで何人も見てきたので、絶対に素手で針を外そうとしないようお願いしたい。
対象魚にもよるが、マダイ相手に使うプライヤーはなるべく頑丈で大きめのものを選ぼう。フォーセップのような細く小さいものは力が入りにくいのでおすすめしない。
ハサミ
タイラバのみならず、魚釣りにおける神器の1つがハサミである。ラインを切る時、パッケージを開ける時、さらには魚の血抜きをする時等、使い方は多岐にわたる。
携帯に便利な小型のものから、魚の絞めまでこなす大型のものまで多様なハサミが存在するので、用途に合わせて何種類か持っておくと便利かもしれない。
まとめ
タイラバゲームはシンプルな釣り方で、オフショアルアーゲーム入門にもってこいの釣りだと紹介したが、ヘッドの形状は?ラバーのボリュームは?巻きスピードは?針の大きさは?と、突き詰めていくと非常に奥が深い釣りでもある。
初心者の皆さんがこの記事を参考にしていただければ幸いだが、個人的には魚釣りに絶対は無いと思っているので、是非それぞれが思う「これ釣れそうだな!」セッティングでタイラバゲームを楽しんで欲しい。
レッツトライタイラバ!