土佐西南・辺境の漁師町に伝わる幻のぶっかけ飯”さつま”を喰らう【釣り師のレシピ】



千葉の「なめろう」だけがアジの漁師料理じゃないぜよ!!
今回は、僕の故郷・土佐の西南部の漁師町で食べられている「さつま」という、まっこと美味いアジのぶっかけ飯をご紹介!!

材料も作り方もいたってシンプル

ざっと説明すると、アジを焼いてすり鉢ですって、骨でダシをとった味噌汁とともに白飯にぶっかけて食べる汁かけ飯です。ゾゾっと豪快にかきこむと口中にアジの旨味が広がります。

材料

アジ/白米/ショウガ/万能ねぎ
塩/酒/味噌/



作り方

味噌をあぶるとか、魚はおろしてから焼くとか、人それぞれ作り方がありますが、できるだけ手間を省いた方法を紹介しますね。

包丁を使うのはワタを取る、切れ目を入れる、ネギを刻むくらい。少々手間はかかりますが難しいテクは一切使いません。

◆1・米を炊く

カレーと同じく、これを忘れてたらどうにもなりませんね。汁かけ飯だから気持ち硬めに。

◆2・アジを焼く

ワタとエラをとって、軽く塩を振って焼く。切れ目を入れておくと早く火が通るよ。家庭のグリルなら中火で。どうせ身をほぐしてすり鉢であたるのだから、皮が爆ぜようが、身が崩れようが、少し焦げようが、気にしない。火が通ってればいいんです。

塩をパラっとふって水気と臭みを抜き、旨味を凝縮
少々コゲても気にしない。


◆3・アジの身をほぐす

アジの身と骨を分ける。

すり鉢で当たっているうちに、残った骨もピョロっと出てくるよ

◆4・骨でダシを取り、味噌汁を作る

まだ頭と骨と皮に取りきれない身が残ってますね。これでダシをとります。鍋に水をはり、アジの残骸、スライスしたショウガ、酒を加え、水から煮ていきます。沸騰してブワっとアクが出てくるのでおたまですくったら火を止める。ザルでこして、味噌汁を作る。

酒を飲みながら作っていたら軽く酔っぱらってショウガを入れ忘れたよ。味噌と酒でもけっこう臭みが消えます。
アジ一匹でお椀一杯の濃厚なダシがとれたよ。蛍光灯が写り込んでますね。やはり酔っていたようです。

◆5・味噌汁で溶きながら仕上げる

味噌汁を加えながらすり鉢であたる。個人的には汁を少な目にして、ポッタリ仕上げるのが好きですが、シャバっと汁っぽく仕上げるのもあり。

味噌汁を加えながらすり鉢であたってアジをなめらかにしてきいます。
このくらいのポッタリ感が好み。

◆6・ご飯にかけて、かきこむべし

ご飯にかけて、万能ねぎをちらしてゾゾっとかきこむ!! アジの旨味を丸ごと堪能してください。

お茶碗に口をつけて、行儀悪くゾゾっとかきこむのが美味い。

補足——こまかいことは気にしない

アジの干物で作ることもできますし、骨のダシは省いて普通の味噌汁でもいいです。

薬味に大葉やゴマや塩もみしたキュウリを加える人もいますが、味噌の風味を活かすなら万能ねぎだけでも十分です。

「さつま」なんだけど鹿児島料理じゃないよ

さてお腹が膨れたところで、「さつま」について解説を。
「さつま」は大分県・愛媛県・高知県の豊後水道に面した地域で食べられている料理です。アジがポピュラーですが、小さなタイやカマスでも美味しいです。
鹿児島料理でないのになぜ「さつま」?

四国では、九州からわたってきたから「さつま」と呼ぶという説があり、大分では、汁がご飯に馴染みやすいように、お箸で十文字(薩摩の島津藩の家紋)に割れ目を入れることから「さつま」という説もあります。
シンプルな料理ですが割と手間がかかることから、夫が妻を助けながら作るので「佐妻」と昭和天皇が字を当てたという話もあります。
一匹のアジでお茶碗2杯分、たっぷり作れます。少しの魚をできるだけ多くの人で美味しく味わう、昔の人の知恵なのかもしれませんね。

台所居酒屋「俺ちゃん」本日の酒とアテ

「さつま」を作りながら晩酌を。
スーパーでカツオのサクが半額だったので小躍りするような気分で購入。厚めに切って、ニンニクたっぷりが土佐流。
酒はやはり土佐の酒「酔鯨」。昔からある高知の辛口の酒。カツオとニンニクをほお張ったあとの舌を、辛口の冷やで洗い流して飲み込むとたまらんですよ。

アジのさつまは最高のシメになりました。


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