井上友樹ブランド”ジャンプライズ”新事務所訪問レポート|前編



ソルトルアー界の鬼才 井上友樹の新たなる仕事場に潜入!

井上友樹さんが代表を務める”ジャンプライズ”。新事務所には20メートル級のスイムテスト用プールが併設されている。

太陽光が降り注ぐ窓が大きい作業部屋には現在、掘削マシンが3台設置されている。井上さんはこのマシンを5台にする予定。そのためのスペースも十分に確保されている。

ジャンプライズ新事務所の掘削作業部屋。掘削作業部屋の他にさまざまな用途の部屋が多数存在する。
井上友樹 いのうえ・ゆうき ジャンプライズ代表。ヒラスズキの世界記録をはじめとした、ショアからの大物ハンターとして人気が高い。ターゲットは大物だが、釣りの精度と理論は緻密を極めている。さらに、ルアー構想から、内部構造、CADデータ、プロトモデルの削り出しまでを、一人でこなす日本有数の天才的ルアー開発者としても知られている。

井上さん自らがCAD×CAMデータをプログラミング

井上さんは、着想を得たルアーイメージを自身の手によってCADで書き出す。

CADとはPC画面上で図面を制作する専用ソフト。電化製品から航空機まで既存の工業製品は、ほぼすべてCADで図面を書き出すところからスタートしている。

CADの段階でジャンプライズ製ルアーは「ボディ肉厚」から「内部構造」「ウエイト位置」、そして「細かいギミック」に至るまで井上友樹さん自身によって、緻密な計算が施されている。そうした緻密な計算の裏側は、膨大な実釣データに支えられている。

そしてCADに書き出したデータは、次にCAMに書き換える。

CAMとは簡単に言うと、掘削マシンにデータを転送して正常にマシンを作動させるための専用言語。ちなみに、掘削マシンとは、その場でプロトモデルを制作できる機械のこと。

つまり井上友樹さんは、ひとつのプロトモデルを制作するために、2度のプログラムを組んでいることになる。

掘削マシンを可動させる井上友樹さん。現在3台ある掘削マシンだが、近々2台増設して合計5台にする予定。


まさに変人系天才児(笑)!

井上友樹さんを深く知る人たちは、井上さんのことを愛を込めて「偏った変人系天才児」と評する。その偏りは、好きなことへの熱量が高すぎるがゆえに、井上さん自身にもコントロールが不可能に見受けられる。

例えば、ひとたびルアー開発を始めると、朝8時~深夜3時頃までぶっ通しで3台の掘削マシンを回し続ける日々が続く。その時間帯のすべてで3台の掘削マシンを動かし続けると、「複合データ」という特殊なプログラムを組んだ場合で、1日約24個のプロトモデルが完成する。

掘削マシンで削り出し途中のプロトルアー。はたしてどんな姿が削り出されるのか?

井上さんは開発を始めとる、何かに憑り付かれたように、そんな生活を約一ケ月間近く続ける。

1日24個のプロトが31日間。単純計算すると24個×31日=744個になるが、厳密には途中で近くの海でのスイムテストなどが含まれるため、完成するプロト数はもっと少ない。プロトを作る間もスイムテストを繰り返し、その結果を受けて、翌日掘削するプロトデータに微調整をくわえる。

さまざまな工程を経て、仕上がりに近づきつつあるプロトルアーの原型

そのようにして約1ケ月間作り続けたプロトが溜まると、その中から選抜された有望モデルを持参して全国実釣行脚へと出発する。

プロトルアーのテストのために全国実釣行脚!

実釣行脚が始まると東北から九州、伊豆七島、ときには男女群島にまで足をのばしてプロトルアーのテストに明け暮れる。

有望と思えたプロトも全国のさまざまなシチュエーションの海で使用すると、塩分濃度の違いや、風、波、サラシの影響でイメージと異なることがあるという。そしてなにより、僅かな設計の違いが、大きな釣果の違いに結び付くことを新ためて実感するという。

ちなみに井上さんのこうした実釣遠征生活は、約半月ほどぶっ通しで続くことが多い。そして、この期間の井上さんは、釣りのこと以外は何も考えられない(笑)。

スイムテストをクリアしたプロトモデルは、簡易塗装が施されて実釣テストの段階へと進む

つまり、これだけ偏った情熱的生活を送っている井上友樹さんにとって、3台の掘削マシンではとても足りない。そして、新事務所横に巨大なスイムテストプールが完成することによって、スイムテストのために近所の海に行く時間も省略される。そんな井上友樹さんの情熱を支える新事務所完成は目前に迫っている。

最後にもうひとつ。井上友樹さんがスイムテスト用プールを必要している大切な理由が、実はもうひとつあるのです。

詳しくは後編にてご紹介します↓


[釣りPLUS]>> HOME