山形県で再放流禁止に関するパブリックコメント募集を実施
今年(2016年)の9月23日から10月22日の1か月間、山形県内水面漁場管理委員会がパブリックコメントを募集していたことを知っているだろうか?
テーマはブラックバス、およびブルーギルの再放流禁止について。
つまり、山形県もリリース禁止になってしまうかどうかの瀬戸際だった。
山形県にも多くのバスファンが存在していて、代表的なバスレイク「前川ダム」ではトーナメントも開催されている。
内水面漁場管理委員会は、そのことを軽視せず、パブコメに先立って、NBCの山形チャプターなど、県内の釣り団体に意見書の提出を求めたという。
これをきっかけとして、今度は釣り人側から意見交換会を要請。粘り強く交渉して、それは実現した。このとき、中心的な役割を果たしたのが、JBでも活躍する秋葉紀幸プロだった。
その後、実施されたパブリックコメントでは、寄せられた意見が273件に及んだ。そして11月15日、山形県では内水面漁場管理委員会が開催され、パブリックコメントの内容を踏まえたうえで、リリース禁止の是非が議論されたのだ。
山形県では漁業権のある漁場のみリリース禁止
その結果は、「リリース禁止決定」。この委員会指示は2017年の6月1日より発効される。これでは、釣り人の意見が無駄だったのでは? と思われても仕方ないが、今回の山形県の場合は、そうでもない。
なぜならリリース禁止は山形県全域ではなく、漁業権の設定されている漁場のみ。それ以外のエリアでは今まで通りリリースOKとなった。
具体的なリリ禁除外エリアは●山形市全域●上山市全域●新井田川(酒田市)●三瀬川(鶴岡市)●徳良湖(尾花沢市)とされている(新聞発表)。
もちろん野池なども漁業権はないので、リリース禁止ではない。前述した前川ダムも上山市内なので、今回はリリ禁除外地域になった。
釣り人の熱意と委員会の理解によって「全域リリ禁」を回避
「今回、リリース禁止の委員会指示が全域にならず対象外の地域ができたのは、パブリックコメントだとか、バスの釣り団体の方々のご意見も尊重した結果です」
これは、委員会の事務局に電話して、実際に担当の人からうかがった言葉だ。リリ禁は回避できなかったものの、除外地域を勝ち取ることができたのは、むしろ快挙ではないだろうか?
地元の釣り人の努力と、内水面漁場管理委員会の真摯な姿勢は素晴らしいと思う。
この写真は、以前ルアーマガジンで前川ダムの釣りを取材したときのもの。前川ダムではこれからも普通に釣りができそうだ。
ただし、喜んでばかりはいられない。実は1年経ったら委員会指示の内容を見直すことになっている。
1年後の見直しに向けて「釣り人にも協力姿勢が求められている」
「委員会の最後に、委員長からこんな話がありました。漁業権漁場で漁協が外来魚の駆除をする際は、釣り団体の人も協力をよろしくお願いします。ちょっとでもブラックバスが減る方向になれば、この方向で続けます。でも、一向にブラックバスが減らなかったり、協力が得られなかったり、トラブルが多かったりしたら、また見直しますよ……と、しめくっています」
これは先ほどの事務局の担当者からの話。リリース禁止でバスが減らなかったら、リリース禁止そのものに意味がないと考えるのが論理的だと思うけれど、今の日本はまだその理屈が通用しないようだ。
実際にこの委員会を傍聴した、秋葉プロも警鐘を鳴らしている。
「1年後までに、何もしなかったら、リリ禁が山形県全域になるかもしれません。内水面漁場管理委員会に妥協してもらったからには、釣り人側も協力姿勢を示していかないといけない。これからが大事だと思います」(秋葉紀幸プロ)
バス釣り場を守るために「それぞれができること」
リリース禁止の県はじわりじわりと増加しているが、釣り人に理解のある山形県は、その波を食い止める防波堤ではないだろうか? そう考えると、バス駆除に協力という苦渋の選択もせざるを得ないのかもしれない。
まずは、委員会指示を順守して、マナーよくバス釣りを楽しむこと。
その上で何をすべきか? 各自が考えていかなければならない。
山形県内水面漁場管理委員会は11月末に、「意見募集(パブコメ)の結果と委員会の考え方」を公式サイトで発表している。
[釣りPLUS]>> HOME