リトリーブにはエリアゲームの基本が詰め込まれている!
リールハンドルをグルグルと回すリトリーブ。
単純に言うと、キャスト後にルアーにアクションを加えながら、ラインを巻き取っているだけなのだが、実はリトリーブの中にこそ、エリアゲーム(管理釣り場)の「基本」から「神髄」までもが詰め込まれている。
そして、エリアゲームのトッププロたちの多くが、このリトリーブに、ただならぬこだわりを持っている。
エリアゲームのメインターゲットであるニジマスは、規則正しい一定アクションに反応する傾向が強い…と言われている。
ただし、注意すべきは、あくまでも「傾向が強い…」というだけで、「絶対にそうだ…」という訳ではない。状況によっては、イレギュラーアクションにしか反応を示さないこともある。
さらに、イワナやヤマメは、一定アクションよりも、イレギュラーを駆使した、リアクションで食わせるケースが圧倒的に多い。
にもかかわらず、エリアゲームのトッププロたちは「リールハンドルを一定に巻く」という動作に強いこだわりを持ち、そこを基本として、その上に複雑なゲームプランを構築している。
いわば「一定巻き」はエリアゲームの土台にして根底なのだ。
もちろん、それには理由がある。
「一定巻き」は魚のために行う訳ではない!
誤解を恐れずに言うと、エリアゲームにおける一定巻きは、ターゲットである魚のために行っている訳ではない。
では、何のための一定巻きなのか? という問い対する答えのひとつが「アングラーのための一定巻き」ということになる。
ハンドルを一定に巻くことによって、リールハンドルを回す左手(左効きの人は右手)、もしくはロッドを握る右手(左効きの人は左手)に伝達される、僅かなブルブル感を一定に保つことができる。
ブルブル感を一定に保つことによって、一定リズムから外れた「僅かな違和感」が魚からの、文字通りの「声」となってアングラーへ伝達される。
この際に、リールハンドルをキレイに一定に巻けないと、手元に伝わる振動にも、ブレと濁りが生じてしまう。
その結果、手元に伝達される情報が、純度の高い魚からの信号ではなく、手元のブレがもたらす、濁った信号と化してしまうキケンがある。
ちなみにトッププロになるほど、リトリーブ中の魚からの信号を察知する能力が研ぎ澄まされている。
その精度は「魚からの声」を通り越して、ときに「ラインを通して水中を眺める、もうひとつの目」を連想させることもある。
情報の精度が次の一手のヒントとなる!
リトリーブ中の振動や違和感は、ラインを通して、ロッドガイドを経由して、ロッドブランクスを通過して、ロッドの握り手や、ハンドルを回している手元に伝達される。
そのため、トッププロたちはラインやガイド、ロッドブランクス性能はもちろんのこと、リールハンドルの素材や長さ、さらにはハンドルノブの素材や形状にもこだわっている。
中には、リール内で直接ラインに触れるラインローラーの感度にもこだわり、独自のチューニングを施しているトッププロも存在する。
つまりは、それほどまでにリトリーブ中に得られる情報の精度が、エリアゲームのカギを握っていることになる。
トッププロたちは、一般的な「アタリ」という表現以外に「触り」という表現を多用する。
この場合の「触り」とは、アタリには至らないが、トラウトがある種の疑いを持ちながらルアーに軽く触れている状態。この段階ではフッキングに至るケースは少ないが、「触り」は多くのヒントを与えてくれる。
こうした「触り」を疑いなく食べてくる「アタリ」へと昇華させるために、ルアーを変え、カラーを変え、スピードを変えて釣りを詰めて行く。
そのすべての基本が「一定巻き」から始まっている。
ちなみに「一定巻き」の大切さを誰よりも最初に提唱した、ロデオクラフトの森田大さんは、_「一定巻きはある意味、エリアゲームに限らず、すべてのルアーフィッシングにおいて大切な要だと思います!」と、遥か昔のインタビューで語ってくれた。
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