書籍編集者でありながら、釣り好き・料理好きが高じて、「釣りPLUS」では居酒屋「俺ちゃん」として魚料理の記事を書かせてもらっています。
一方で、書籍編集者としての得意ジャンルは、学生時代から続けているサッカー。まあ部活の練習はそこそこで、休日などは午前で切り上げ、釣り竿を担いで、自宅から10分圏内の四万十川や中筋川にフナやコイを釣りに出かけていたものです。
それでも前職も含めると50冊以上のサッカー書籍を作ってきました。
そんな中、書籍化を目指して、4年前から追っかけ続けてきた、高校サッカーの監督がおりまして、その先生のサッカー哲学や育成理論が、サッカー編集者としてだけでなく、一人の釣り好きとして、ビンビンと響いてくる内容なんです!!
「海老で鯛を釣るなんてもんじゃない。麦で鯛を釣るってなもんですよ」
と笑う大分高校サッカー部・朴英雄(パク・ヨンウン)監督。いきなり来ました!! そのまんま「釣り」に例えてるし!!
優秀な選手が集まらないなか、2番手・3番手の選手を率いて幾度も高校選手権、インターハイ出場を成し遂げてきた名監督。
大分高校は、平成28年度第95回全国サッカー選手権大会にも2年連続9回目の出場を果たした強豪校。本日12月31日(土)の第一回戦で岐阜県代表中京高校と対戦。
何事においても道を究めた人の哲学から、別の道にも通ずる真理が多々感じられるものです。
限られた環境・状況で最大限の成果を上げる、「麦で鯛を釣る」ためのサッカー論。これ、まさに釣りにそのまま適応できるんです。
取材中、また出来上がってきた原稿を読んでいて、「あ、これは釣りと同じではないか!!」と釣り好きのサッカー編集者は、ポンとヒザを打つことが多々ありました(←その時くらい釣りのことは忘れろよ)。
手持ちの釣具を最大限に生かす――ジャイアントキリングの快感
監督にも資金潤沢なビッグクラブを率いて世界一を目指すファーガソンやモウリーニョのようなタイプもいれば、プロビンチャと呼ばれる小さなクラブのチカラを最大限に引き出し大物食いで評価を得る監督もいます。
朴監督は後者。個々の選手の特長を最大限に伸ばしたうえで、一番力を発揮できる形に組み合わせてチームを作ること。
かつてオシム監督は「強いチームとはやりたいことを夢みるのではなく、できることをやるものだ」と語りました。
その時々の魚種に合わせて竿も仕掛けも専用のものを用意できればいいのですが、奥様に財布を握られて難しい人も多いでしょう。
限られた種類の竿で、あとは仕掛け・エサのバリエーションの工夫でやりくりする。制限があるからこその楽しみもあるわけです。
私なんてナイロンのラインの、1250円の釣りセットで、キス、アジ、カワハギ、ホウボウ、エソ、メジナさらにはアナゴまでゲットしました。
ものすごい釣果があったわけではありませんが、「1250円でコレだけ釣れたよ」と誇らしげな気分。「弱者が強者を倒すというのがみんな好きですからね」と朴監督。釣りでもジャイアントキリングは快感なんです!!
釣りは臨機応変かつ厳密に実行すべし
大枠は臨機応変、融通無碍な朴監督ですが、細部の仕上げについてのこだわりはすさまじいものがあります。
守備位置については20センチ単位で指示が飛びます。またポジションによって走る距離や速さの質が違いますから、ランニングもそれぞれのポジションにあわせたメニューを組み、ポジションごとに必要とされるプレーを体に染み込ませていきます。
失敗したプレーについては、そうした理由を選手に述べさせた上で、それを再現させて「なぜ失敗したのか」を理解させます。
私も書籍の最終のツメの取材に同席したのですが、「この時、Aはどのポジションにいないといけない?」といきなり質問されるんです。
どうにかこうにかサッカーの知識をフル稼働して答えると、すかさず「なんで?」と根拠も問われる。
これ、選手たち毎日やられたら相当、頭が鍛えられるんじゃないかな。
臨機応変に「手法」を変えるが、「技法」は蓄積された経験に基づき、厳密に実行する。二律背反する事象を巧みに使い分けることがサッカーにおいても釣りにおいても「一番大切なあたりまえのこと」。
その日の状況によってタナは上下するものです。カワハギなら誘い方もタタキ、タルマセ、聞きアワセ。いろいろな手法を試しつつ、今、この時間はコレだと確信と根拠を得たら徹底する。今年初のカワハギ釣りでも実践しましたよ。「今日はタタキだ!!」つかんでからは立て続けにヒットしましたから。
魚の本能に訴えかけてその気にさせる
朴監督は選手一人ひとりの性格・血液型・星座、さらには足のサイズまで把握して、接し方を考える。それぞれの趣味に例えて説明したり、時には恋愛に例えることも。試合前の指示もホワイトボードの向きにまで気を配ります。
「自分にわかりやすいように話すのではなく、相手にわかりやすいように話すのが『伝える』ということ」と朴監督。「選手を戦う気持ちにさせてこそ監督」「選手の本能的な部分を活かして、自然と選手がそういうプレーをするように指導する」というモティベートの手腕も名将たるゆえん。
魚の気持ちになって、魚がどうしたいかを考える。
アジやキスは、イソメは食べやすいように小さく。カサゴの気分は、今日はイソメなのかサバの切り身なのか? カワハギのアサリは食べやすいようにコンパクトに針にまとまっているのか? 誘って焦らせた方がいいのか、それとも食べるまで待つのか?
その日の相手の気持ちを考えることが、食いつかせるための近道であり王道です!!
大分県のサッカー好きは釣りも好き
と、まあ無理くり釣り好きの方向けに、サッカーの話を続けてきました。ご清聴感謝です。
実は、大分県民の余暇の過ごし方ランキングで、釣りは第2位なんですね。ということは釣りPLUSの読者に大分県の方も多いと思い、ご当地の大分高校サッカー部の監督の話を紹介したかったというのが、本当の狙いです。
なんと大分のJクラブ、大分トリニータには釣り部が存在するとか!?
大分のJクラブ・大分トリニータには、釣り部が存在するということを書籍の構成・執筆を担当した、ひぐらしひなつさん(大分トリニータ番記者)から聞いてます。
なんと「ルアマガ」の愛読者もいるとか。三平和司選手(「さんぺい」ではなく「みつひら」)は大の釣り好きで海も川も両方やるそうです。
今季サンフレッチェ広島から移籍してきた元日本代表・山岸智選手は入団時の取材に対して「釣りが趣味。大分にきたので、アジやサバを釣りたい」と抱負を語るほど。
また地元出身の松本昌也選手は幼少時から実家の近くにおなじみの釣りスポットを確保しているとか
松本選手は来季からジュビロ磐田に完全移籍。他クラブに移籍していった夛田(ただ)凌輔、井上裕大、石神直哉、刀根亮輔も釣り部のメンバーで、彼らとともにJクラブに釣りの輪を広げていくかもしれませんね。
トリニータ釣り部の活動や、釣り好きのサッカー選手のネタ、今後もアップしていく予定なのでお楽しみに。
活性が高まってきたところで!! 『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』
そして四年越しで追い続けた朴監督のサッカー哲学が詰まった『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』好評発売中です!!
ここまでのコマセの効果はいかがなものか。ひとつよしなにお願い申し上げます。
本書の詳しい情報はこちらのFacebookページでご覧になれます。
「あたりまえ」だけど、多くの指導者・選手が気づいていない、強くなるためのヒントが満載。
構成・執筆のひぐらしひなつさんが、試合レポート・選手インタビューを執筆しているトリニータ公式サイトのスペシャルコンテンツ「トリテン」もおススメです。
なお、つい先日、三平・山岸・松本の3選手の釣行がオフの特別企画「さんぺー・ギシ・昌也の豊後水道釣りキチ紀行」として大分トリニータ公式サイト内の「トリテン」に掲載されました。鯛が釣れたとか。
1月下旬に発売される大分トリニータ・オフィシャルマガジン「winning goal」2月号で、この釣行の詳しい記事を読むことができるそうです。詳しくは大分トリニータのオフィシャルサイトをご覧ください。
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