エリアトラウトのお楽しみ、超美味赤身ニジマスのヒミツは釣り堀の”土”にアリ!?【フィッシングエリアJ”マダラ”氏の挑戦】



生物マニアが独学で、メチャ美味いニジマスだらけの釣り堀を経営!?

サカナくん(敬称略)レベルで、サカナが好きすぎてたまらない人達が、釣り業界にも若干名存在する…。

そんな純粋な求道者が、釣らせて食べるエリアトラウトの釣り場を経営している…というウワサを聞き、取材班は直撃インタビューを試みた! そこには、一見フツーのお父さん(失礼!)が一人。いざ話を始めると、その熱量でヤケドをしそうなほど、熱いアツい「おさかなフリーク」の本領を発揮し始めたのだった…!

マダラさんこと、黒田さん。フィッシングエリアJ代表。あの『タックルボックス』誌で連載を持ち、独自の視点で生き物の生態を披露。おっさんアングラーは目に涙…。マダラの由来は?「名字の黒から、白黒マダラの言葉遊びから小学生の頃あだ名を付けられたような気が…」

マダラさんの経営する釣り場は、フィッシングエリアJ。茨城県土浦市にある、知る人ぞ知る名ポンドだ。

そんなマダラさんに、釣り堀に至った経緯と、美味しいニジマスに掛ける情熱を伺った。

幼少の頃から夢見た「サカナ生活」。2年間休みなく「手作り」し、夢のトラウト管理釣り場が完成…!!

「工事着工が14年前、オープンして12年です。工事も資金の面もあるし、いろいろ極力自分たちでやろうと。山を削ったりというのは業者さんに頼みましたが、2年間無休無給で、やっと完成に至りました」

「いろんな釣りを経験していきつつバスブームが起こり、ボート釣りがあまりいなくて。オヤジが観光船の仕事をやっていたので、作業船をレンタルしたら面白いかな…とボート屋を始めて。最終的には釣り堀を始めたかったんですが、若い頃はお金もないし、地位も名誉もないので借りれないし…釣りのビジネスをいろいろ経験し、やっとお金を借りられて始めたのが14年前ですね。レンタルボート屋(Jボート)、釣具店(プロショップJ)、サカナの養殖にも手を出したりして…釣りには携わりたくて、ずっと釣り関係の仕事をしてました。果てはオリジナルのバスボートの企画、製造までやってました…」

「幼少の頃から、オタクというか、生き物マニアなんですね。昆虫からサカナから…育てて繁殖までやらないと気が済まない主義(笑)。自然に恵まれた霞ヶ浦沿いで育ったのですが、都会の人と違って、釣りが日常のものだったんです。小学生の頃は食用ガエルを釣って売るバイトを始めて…楽しいし、将来は釣りで商売をしようと幼少ながらに志して」

「釣り」の将来のために…行き着いたのが「美味いニジマス」!?

「若い人がどんどんサカナを食べなくなってきているんで、ニジマスは食用魚ですよと言い続けるために、ニジマスを美味しく育て、美味しく食べて貰うために、時間限定ですが炭火を無料で提供しているんですよ」

このときの「焼き奉行」は、かの松本幸雄さん…!

「ルアーフィッシングを愛するが故に、『サカナ釣り』を途絶えさせたくないという気持ちがある。将来、サカナを食べられない、触れない…という若者が増えて欲しくない。そういう啓蒙活動という側面も、釣り堀にはあると思うんです。僕自身も釣り人で、マスも30年くらい釣っていて、だいたい持ち帰って食用にしていたんですね。けれど、正直周りにも不評だし、ガーリックなどを効かせないと火を通しても臭みが残るんですね」



魚も育ちが違えば、味が違う?

「ある日、高級タマゴでタマゴ掛けゴハンを食べてみたら、味が違う。なんでだ? 牛肉も品種が同じでも輸入と和牛とで違う。じゃあサカナも、育ちで味が変わるんじゃないか…そんな素朴な疑問が出発点でした。でもその疑問をどうすれば良いのか分からなかったので、まず牛の飼育の勉強を始めました(笑)。音楽を聴かせる、広い敷地で放牧する…学んでいくと、疲労物質が生臭さにつながることが分かった。なるほど、ストレスを抜くため色々やってるんだなと」

「サカナの飼育も3歳4歳のころから、今でも欠かすことなく続けてます。水槽の趣味も高じ、テクニックもノウハウもそれなりにあるので、サカナの病気や元気がない状態も体にしみこんでます。そこで、池でマスたちをストレスフリーな状態で、良いエサ与えて育てたら…という思いです」。

「日本一美味しいという養魚場のサカナを取り寄せ、さらなる飼育ノウハウを教えてもらいながら、池の改造が始まったんです。最初臭かったサカナが、年を追うごとに全然変わってきたんですね。しまいには、後味までクリアになってきた。平行して、地鶏の文献とかさらに色々な生き物の勉強を重ねて日々精進しています」

「ニジマス」の育つ環境は、まず水…じゃなくて、まず「土」から!

「対人ストレスが厳しいヒトとは違って、動物は環境ストレスが大きい。たとえばコンクリートだと振動が跳ね返ってストレスになると聞いて土の岸にしたり。また、水槽でもボトムが汚れると病気になるんですよ。そのために、重機で端から端まで土をひっくり返して攪拌する。そうやって土作りからやってみたら、大きく変化しました。よくワタカビがつくことがあるんですが、ウチはほぼない…治っちゃう。地面が生きてるからなんですね。バクテリアからプランクトンからサカナまでの連鎖が健全じゃないと」

「日本一美味しいマスを育てた方が居て、その方の著書を拝読したら、やはり土をいじることが書いてあった。やっぱり正解だった!と自信がついて、今でも耕しまくっています。マスは手を掛けなかったら、臭みが出ます。でも、サケと紙一重の兄弟種なので、手を掛けると抜群に美味しくなる。釣って楽しい、食べて美味しいなら、レジャーとしても価値が高まる。家族の理解も深まる。さらに釣りが楽しめる」。

「でも最近はどこの養魚場さんも努力を惜しまないので、全体的にかなり美味しさのレベルは上がっています。今は量より質が求められるので」

美味いエサを食うから、サカナが美味くなる! 高級エサに掛ける情熱と「赤身」

「エサは、サカナも食用として流通しているので、検査を通ったものしか使ってはいけない決まりになっています。業者も数社しかない。元々高価なものですが、ランクも様々にある。ランクの低いモノは魚粉と小麦粉が主体。それでも脂もそこそこ乗るし、美味しく頂ける。じゃあ高いエサはというと、今度はエビやカニが原材料になってくる。サケの身が赤い理由は、甲殻類を食べているからなんですよ」

サイズがそこそこなのに、赤身を帯びている…コレが美味い!
「でも、ランクの低いエサと比べて、コストは3倍弱と、非常に高価。安いドッグフードと比べても3倍します。それが毎日大量に必要になる。ですが世界的にもニジマスはサーモンと呼んで流通できるものなので、じゃあせっかくなので赤身にしようと高価なエサにチャレンジしています」。

「なので、ウチは赤身のサカナが多いんです。良く引くサカナを育てていますとか、施設が充実していますとか、エリアごとに売りがあると思いますが、ウチは健康で美味しいマスが売り」。

赤身のサカナは、ヒレや周辺に赤味を帯びる

「あと、ビクとかでのキープも禁止しています。生かしてキープすると、疲労物質が出ちゃうんです。だからウチでは、すぐ締めてもらって、クーラーボックスに入れてもらっています。またトラウトでも、神経締めはかなり効果ありますよ。刺身で食べるとき、分かっている人はみんなやっています。死後硬直しないので、プリプリのまま頂けるんです。尻尾かアタマを落として、背骨に締め具を通します」

ここは3つある池のうち、美味マスがいる池。数もサイズも選べないが、美味いマスがいる…!!

「また養殖魚はナマで食えないという誤解があるんですが、安心安全なので。養殖魚に関しては、何十年も寄生虫が検査に引っかかったことがないし、検査自体も厳しいです。むしろ、養殖魚は安心さが売りですね。まあ、回転寿司のサーモンも、高確率でニジマスですから」

「一般的に家庭用の井戸は20〜40メートルあたりまで掘って水をくみ上げるんです。でも、食べて貰う手前、何かで万が一汚染されたら嫌だし、最も良い水でなくては…とウチでは80メートルほど掘って使っています。かなりのお金が掛かりましたが、毒性などもちろん大幅クリアで、安心して安定した水源を確保できました。まあ、こうやって、あまり宣伝にはならない設備にコストを掛けちゃってるんで儲けが少ない(笑)」。

「お客さんでもキープして持ち帰る人は多くて、持ち帰らなくても食べていったり。両方合わせて半数以上が、キープして食べて頂いてます。やはり、お父さんが少ない小遣いで釣りを続けていくためには、家族に好評だとういことが大切。美味しいから、また釣ってきてねという展開が、非常に重要だと。そうやって10年、20年後も釣りを続けて欲しいんです」

とにかく入門者歓迎! そしてエリアで○○○を会得すると、釣りが「2倍」上手くなる!?

「各エリアでトーナメントがあると思いますが、ウチでは2タイプやっています。ガチガチのマニア向けと、ビギナー向けの2本柱でやってます。釣りが成熟した人も大事に、入ってきた人も大事にしたい。そして長く釣りを続けて欲しいんです」

ここは真ん中の池。数釣りを楽しめる。もう一つの池は、ビッグフィッシュ池だ!

「バスにしろ、ソルトにしろ、ネイティブなサカナと決定的な違いは、サカナを探すこと。エリアトラウトは、いるサカナを釣ることが大前提。分かっているようで、実はそこが落とし穴になっちゃう。いるのにアタリがないと、もう釣れないつまらない、に、なっちゃう。パズルゲームみたいな釣りなので、ルアーを取っ替え引っ替えしたり、レンジやスピードを変えたり、常に新手で攻めて行く釣りというイメージでやってみてください。エリアトラウトも、達人たちが色んなハウツーやデータを残してくれているので、それを知って積み重ねていくだけでかなり釣れるようになります」

本当に初心者でも楽しめる、J流エリアトラウト術。マダラさんはいつでも懇切丁寧教えてくれるぞ!

「エリアトラウトを1〜2シーズンみっちりやって、ルアーのパワーの整理と、レンジの概念を身につけると、バスやソルトも倍以上釣れるようになります。杭ひとつとっても、自然とキャストを重ねる釣りができ、難しいとされるサスペンドしているサカナも獲れるようになる。例えば寄せるパワーと食わせるパワーが理解できるだけでも、とっても釣れるようになりますよ。冬はトラウト、夏はバス、秋冬は好きな方を、釣果も納得いくまで釣れるようになって、一年中オフシーズンのない釣り生活を送れますよ!」


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