“秋ヤマメ”は派手めスプーン×ワイドアピールでリアクションを狙え!【アングラーズシステム福田紀之が明かす”喰わせの要素”】



渓流シーズン終盤戦にさしかかると、ヤマメの魚体は体高を増し、表情はよりいかつく、そしてサビの入った体側に赤やオレンジ色が散りばめられていく。そんな容姿端麗な魚を釣り人たちは「秋ヤマメ」と呼び、シーズン終盤戦のメインターゲットとしている人も少なくない。この魚を狙うための要素について、老舗スプーンメーカー・アングラーズシステムの福田紀之氏に話を聞いた。

福田紀之(ふくだのりゆき) アングラーズシステム代表。フロントワイド形状の「バックス」や「オリエン」など、これまで数々の名作スプーンを世に送り出してきたエンジニアであり、経験豊富なトラウトアングラーでもある。

テリトリーへの意識を逆手にとった攻略法

福田「20年以上前の話になるけど、南会津の川ですごい魚と出会ったんだ。川底に砂利があって”いかにも”っていう場所。ここで38㎝のヤマメをキャッチしたんだけど、その後、まったく同じレーンを通したら43㎝のヤマメもヒットしたんだ。ルアーは忠さんスプーンの6g」

ヤマメということで言えば、43㎝は福田さんにとってのレコードフィッシュ。そして、この魚との出会いを機に福田さんの”大ヤマメ”への思い入れはどんどん強くなっていったそうだ。

福田「大型のヤマメと言えばやっぱり秋。この時期のヤマメは特に、自らのテリトリーに入ってくるものを嫌う傾向にある。それらを排除するために威嚇行動をとることが多く、この行動を逆手にとったのが反射食いを狙った”リアクションの釣り”」

現在、渓流ルアーフィッシングではミノーイングが主流とされている。そんな中、福田さんは”使う”のも”作る”のもスプーン一筋という強いこだわりを貫いてきた人物でもあるのだ。ここでは、彼の情熱が生み出したスプーニングの極意を解説してもらうことにしよう。

“派手さ”を演出する「バックス」のスプーン形状

秋のヤマメを攻略するために最も必要な要素が”強アピール”である。福田さんが開発したスプーン「バックス」には、その要素が多く詰まっているようだ。

福田「常にイメージしているのが、魚に『異物だ』と強く認識させること。スプーンの場合なら、とにかくワイドな泳ぎと強いフラッシングで誘うことが重要なんだよ」

秋のヤマメにはマッチ・ザ・ベイトではなくリアクション。とにかく派手な演出で魚の威嚇行動を逆手にとった先方が有効とのことだ。そこで、まずはバックスの性能について見ていこう。

福田さんが開発した「バックス」。実釣&研究を重ねた末にたどり着いたのが、独自のフロントワイド形状だった。渓流スプーニングに必要不可欠な存在となっている。

深いカップがワイドな泳ぎを実現

ワイドなアクションがもたらすのは激しいフラッシング。この深いカップが強アピールを実現している。

レンジキープ能力の高さも秀逸

バックスはフロントのカーブがリップのような役割を果たして下に潜ろうとする力が働く。さらに、テイルのカーブがしっかり水を受け止めてくれるため、水中でのボディバランスが安定する。これがレンジキープ能力を高める2つの要素なのである。

水を”受ける”だけでなく”逃す”ことも重要

福田「カップを深くしすぎると水を噛みすぎてスプーンが回転してしまうので、回転する寸前で復元させたい。そのためにはスプーンへの水の抵抗を少なくすることが重要になってくるんです。だからこそ〝水を逃す〟性能が必要不可欠。バックスの場合は細いテイルと再度のカーブがその役割を果たしているんです」。


セレクトも重要。”派手め”系統を細かく使い分ける

「色はとにかく派手なものを」と福田さん。ピンク、チャートなどの蛍光色を基本に選択しているというが、その中でも細かなカラーの使い分けがあるそうだ。

メッキとパールの違い

福田さんの秋ヤマメ基準色が派手な〝蛍光色〟。その中でもとにかく強いアピールを演出したい場合には金・銀のメッキベースを選択する。それでも、魚は常に反応してくれるとは限らない。福田「水色や魚の反応によりけりですが、アピールをやや弱めたい場合には、パールベースを投入することもあります。派手な色の中でルアーのアピールを細かく変えていくのもひとつの手です」。

板厚で考えるスプーンのアピール

スプーンの板厚も泳ぎに大きく影響する。対・秋ヤマメということで考えてみると、よりワイドな動きを出すことが重要だ。

福田「シンプルにスプーンの板厚を薄くすることで動きはワイドになる。ただし、流速の速い場所では動きが破綻しやすいというデメリットも。そうした場所に対応するためにはウエイトの重いものを使ったり、同形状でありながら〝板厚〟の厚いものを使用するのもひとつの手」

同じシチュエーションで考えた場合、スプーンの板厚が薄ければ水の抵抗を強く受けるためアクションはよりワイドに。逆に板厚が厚ければ、アクションはやや弱くなる傾向にある。

シルエットは変えずに流速に対応

バックス5.1gと6.5gは同じ形状でありながら板厚が異なる。様々な流速に対応させるために、単純にウエイトを落とすだけでなく、シルエットを変えずに攻略することができる。

※この記事はルアーマガジンリバー2014年10月号の記事を元に再構成しています。

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