JB TOP50七色ダム戦優勝”小林知寛” 大逆転への武器”ウナギリグ”と”虫ルアー” [バストーナメント・誇り高き挑戦者たちFILE.3|後編]



日本最高峰のバストーナメント2017JBTOP50第3戦「七色ダム」は、小林知寛選手が大逆転で優勝を勝ち取ったことは大きな話題となった。釣りプラスでは大会最終日に小林艇に同船し、その勝利への戦略とテクニックを取材することに成功。取材した近藤圭一が、その模様をお伝えします。【後編】

最高峰戦で小林知寛がみせた大逆転を支えたルアー公開

 日本最高峰のバストーナメントJB TOP50第3戦は、7月7日〜9日に行われたに奈良県七色ダムで行われた。小林知寛選手がその決勝最終日DAY3、見事な大逆転で優勝を勝ち取った。

こばやし・ともひろ 1980年9月10日生まれ(36歳)、岡山県出身。右投げ・ベイト/スピニング共に左巻き。スポンサー:エバーグリーンインターナショナル、ベイトブレス、ガンクラフト、オフィスZPI、がまかつ、ジーエルデザインラボ。攻めのストロングスタイルを信条に、ウエイイン場内を沸かせるBIGFISHを幾度となく魅せてきたTOP50屈指の怪物。人は彼をエバーグリーンイズムの継承者と呼ぶ。2017TOP50ゼッケンNo.7。

 その小林選手に同船取材した当記事【前編】では、2日目までの流れや、最終日序盤の展開をお伝えした。

 最終日のスタート時刻からわずか30分ほどで、3キロに近いビッグフィッシュを含む2尾で推定3500グラムをキープした小林選手。狙い通りの釣りを展開できた上流域をあとにして、ボートは下流へ向かった…。

 この【後編】では、今回の優勝に大きな貢献した2つの「ルアー」に注目していく。小林選手自身が、「獲れれば高確率で1キロ」というビッグフィッシュゲッターとして用意したルアー。一つは「虫ルアー・ノールックバグ」、そしてもう一つは「ボウワーム12インチのウナギリグ」だ。

[BIGFISH GETTERその1]虫ルアー・ノールックバグのチョーチン釣り

小林選手(以下 小林)「300グラム程度のキーパーを獲る方法は昨日見つけた。でも、それだけでは勝てない」。

 5本リミットに至るまで残り3本を獲って1キロ強を上乗せしても、6キロには到底届かない。小林選手の脳内には瞬時にこんな数式が浮かんでいたのではないだろうか。

[6000−3500=2500グラム、2500÷3=800グラム強]

 目標の数値から現在ライブウェルにいる2本のウェイトを引き、残り3本はそれぞれどのくらい必要なのか。無論、キーパー獲りも大切ではあるが、やはり2つのビッグフィッシュゲッターを軸にする必要があった。

使用したノールックバグはフッキングしやすいようにストレート#2/0をセット。チョーチン釣り前提のためブラシで自作ガードも装着済み。PE1号+フロロ8ポンドリーダーのパワーフィネス系スピニングで使用。

小林「でかいのが回ってくるまで、待ちます」。

 竿を片手に岸沿いをエレキで探索。その目で大型を探し、仕留める作戦のようだ。すると「おった!」と小声で呟くや、方向転換。その姿を目で追いながら、進行方向に向けてキャスト。樹木の枝にラインをかけ、虫ルアーが着水。小刻みに波紋を描く。

小林「うわっ! 魚がすっ飛んできたのに、フッキングパワーが十分に伝わらんかった…」。

 突如現れる大型スクールに対しての1投勝負。多少キャストミスをしても投げ直す時間はない。時には、こんな無理のある状態でも釣りを続行していたのだ。

狙いの枝へPEラインを掛けるべくキャストするも手前でせり出したオーバーハングを通過。2つの接触点を支点にして、竿先を小刻みに揺らすことで水面の虫ルアーが波紋を描く。しかし、たとえ伸びの少ないPEでもこの状態ではフッキングのパワーは伝わりづらかった…。


でかいバスは釣る前に、狙って探す術がある

 魚、それも大型の個体はどう探すのか。目で水中を凝視して探すしか方法はないのだろうか。

小林「大型には回遊ルートがある。どのエリアのどこを通るのかは、自分で経験して覚えていくしかない。試合ではプレッシャーがかかるので、深い水深で回遊するため見つけづらいが、通常は見やすい水深で動く。雨が降ればより浮くし、晴れれば岸沿いのシェード内を回遊するはずです」。

 試合中ながらも、回遊する大型だけを狙い撃つ虫ルアーの釣り、現代リザーバー攻略の最新メソッドを解説してくれた小林選手。話によればやはり経験こそが大きな意味を持つようだが、我々が初めて訪れるリザーバーでも応用できそうな話もあった。

小林「流れってやっぱり大切なんですよ。今、岸沿いの水面に落ち葉などが線状に浮いてますよね。これが今、流れている証拠。大型のバスはそのやや岸側を回遊し始めるので、個体を探す目安にもなりますよ。ベイトフィッシュ、この場合は特にウグイが回り出したらそろそろかなという合図です」。

岸沿いで落ち葉が形成する流れの筋。「これが大型スクールの回遊コースの目安になる」と小林選手は言う。フィールドで確認してみたい。

 スモールマウスの聖地・野尻湖で良く耳にする水面上のゴミの筋とよく似ている現象なのだろうか。

小林「あれは風によってできるゴミの筋ですけど、基本的にはそれと同じです。スモールはそこに溜まったエサを食べに来る。リザーバーの魚はエサを探すためにその下を回遊する。という違いだけですね」。

掛けたら魚は宙づりのまま即座にエレキで寄ってネットイン。
狙いのキロ以上とはいかないまでも、800グラムクラスを見事にキャッチ! 

[BIGFISH GETTERその2]ボウワーム12インチ高浮力×独自「ウナギリグ」

 虫ルアーに対して、もう1つのビッグフィッシュゲッター、ボウワーム12インチ高浮力の「ウナギリグ」の戦略は実にシンプル。「回遊の魚が差すであろうカバー」という経験値こそ必要だが、基本的にはキャスト&スローなズル引きだ。

ウナギリグの内部構造はこの通り。ヘビーカバーストレート#5/0(がまかつ)は10センチほどのPEラインでワーム内を貫通。スプリットリングでメインラインと接続すると同時に、シンカーをセット可能。「リグるのはかなりメンドイです(笑)」。

小林「バンクに投げて、ボトムトレースが基本。立木に絡めて乗り越えた瞬間のバイトも多い。アタればキロクラス以上。初日のBIGFISH(61センチ4315グラム)もこの釣りだった」。

 岸際にキャストしたらクラッチを切ってラインを送り出し、リグはボトムへと到達。ボトムが基本とはいえ、その手前に立木が潜みラインが乗ることは必至。スラックを取りながらのスロートレースで、手元で水中の感触を得ながらその時を待つ。
 注目したいのはその独自のリグ形状。頭側から2〜3センチほどの位置からダウンショットシンカー5グラムがセットされる。ショートリーダーのダウンショットやジカリグ系ではない。なぜなのか。

小林「こうすることで、ツートンカラーのワームが背中と腹で明滅を見せてくれるんですよ。シンカーが頭より先にあったら、ワームはフォールでぐるぐる回転してしまう。思考錯誤していった結果、このスタイルになりました」。

 セット方法はやや難解。しかし、長尺ワームならではの独自のアクションがさらに威力を増してくれそうだ。

渾身のフッキング!!「ここの魚、特に大型ほど賢い。食ったら必ず立木の下をくぐってラインを切ろうとする」。ヘラクレスLTSのパワーと巧みな竿さばきで難なくランディング。天才バスの戦略も小林選手の前では打つ手なしだ。
「このリグで1キロ以下の魚を釣ったのは初めてや…」。とは言うものの、この日6本目となる見事な個体をキャッチして入れ替えへ。この時、10時36分。これ以降は入れ替えできるサイズの魚は出ず、ウェイインへと向かうことになった。

2014年以来、2度目のA.OY.も射程内に!

小林「芸風(=釣りのスタイル)が(他選手とは)違うんで」。

 ストロングな戦略をベースに、TOP50屈指の爆発力を秘める怪物アングラー。小林選手は表彰台の頂点でこう語った。

 この日は狙いの6キロには到達せずも、5225グラムと存分なウェイトを堂々のウェイイン。上位2選手が揃って失速した隙を逃さず、常に自らのMAXの釣りで挑んだ小林選手の頭上に栄冠は輝くことになったのだ。

七色ダム戦の優勝で年間暫定順位は4位へ。首位との差はわずかに9ポイントとなった。

 劇的な優勝から1ヶ月後のこと、TOP50中断期間の7月中旬にルアーマガジン誌で小林選手を取材する機会に恵まれた。狙う魚もフィールド事情も異なるレイクで、彼が見せたのは驚くべき釣り方の数々だった。

小林「自分のスタイルでMAX釣らな」。

 そう言いながら1本、また1本と魚を追加。それもそのフィールドでキッカーと言えるサイズばかり。残念ながらその詳細は、ここでお知らせできないことを察していただきたい。なぜなら第4戦の開催地・桧原湖(福島県)で取材を敢行したからだ。

 現在、小林選手は第3戦を終了した現時点で、年間暫定順位は4位。首位との差はわずかに9ポイント。ストロングを貫き、駆け抜けた2014年以来となる2度目のA.O.Y.も現実味を帯びてきた。残す2戦も小林選手から目が離せそうにない。

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