ジャンルを超えて広がる釣り好きの輪は、サッカー界にも広がっています。なんとJリーグの大分トリニータには釣り部が存在し、なかでも「さんぺー」こと三平和司(みつひら・かずし)選手は、バス釣り好きで、「ルアーマガジン」の愛読者様でもあります!! クレバーな戦術眼に定評がある三平選手に、大分トリニータ番記者のひぐらしひなつさんが、「さんぺー」的バス釣り論をうかがいました!!
「ルアーマガジン」愛読者の現役Jリーガー三平和司選手にインタビュー!
インタビュー取材・執筆を担当した、ひぐらしひなつさんは、大分県中津市出身。サッカー主体のフリーランスライターで、九州を拠点に育成年代からトップまで幅広く取材。大分トリニータのオフィシャル誌などに執筆し、サッカー新聞「エルゴラッソ」では大分トリニータ担当として活躍中。弊社刊行の『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』の著者でもあります。実はトリニータに釣り部があるという情報も、ひぐらしさんから入手したものでした。
バスは釣れないのがあたりまえ!?
―― 三平選手は釣り好きなことで有名ですが、中でもバス釣りがいちばんだそうですね。バス釣りの魅力って何ですか。
海の魚を釣るのも難しいと思うんですけど、海釣りをする人ってほとんど釣った魚を食べるじゃないですか。だからあんまり魚がスレることがないというか。釣られることに慣れることがないんですね。でも、バスはみんなリリースするから、だんだん慣れてくるんです。学習能力がある。水温の変化やシーズンといった状況次第でバスの側がそういう気分じゃないときもあるらしくて、そういう駆け引きが面白くて、釣りの中でもいちばん難しいのかなと。
——― 難しいところにチャレンジするのが楽しいんですね。
そうですね。僕の中では、バス釣りに行くときは、釣れないのがあたりまえ、くらいの感じです。釣り方や釣る道具にもよるのかもしれないですけど。大分は九州の中でも釣れるほうだと思うんですよ。
——いつも決まった場所で釣るんですか。
大分だったら芹川ダムが有名です。遊漁券が必要なので、一昨年はシーズンパスを買って通ってました。その前は日指ダムという、大分農業文化公園の近くにあるところに。あとはやっぱり釣りOKの野池が多いですね。ダムに行けば大きいバスはいるんですけど、野池のほうが、「この大きさの野池にバスがいる」と思ったら、メンタル的にも頑張れるというか。ボートも持ってないし、ダムのようにめちゃくちゃ広い中で釣れずにいると「もしかしてここにはいないんじゃねーか?」って思えてきちゃうから。だから僕は、野池のほうが好きですね。
—— 野池に、隠れ家的な釣り場も。
バス釣りをする人はみんなそうかもしれませんけど、ちょっと人が少ないところが好きですね。
―― 同じところに通っていると、「あ、これって前に釣ったバスかな」という“再会”はないんですか。
ないですね。「コイツ、さっきのじゃね?」ってのは、いままで一度もないです(笑)。
「釣れる」ことだけが楽しみじゃない
—— 道具によっても釣れ方が左右されるんですよね。
僕の中ではワームを使えば結構、釣れるというイメージです。ワームの中でもネコリグっていう、ミミズみたいなヤツの真ん中に針を刺したヤツが、いちばん釣れる感じです。トリニータの釣り部の中では「セコ釣り」って言ってましたけど。セコい釣り方だって。だから、僕はワームとは別のルアーで釣ることのほうが多いです。プロの人からしたら、何を使っても同じように釣るんでしょうけど、僕らの間ではネコリグが特に釣れやすい感じでした。
―― ルアーを選ぶときのポイントってあるんですか?
人それぞれに好みがあるんだと思います。お気に入りの色とか。多分、釣ったことのあるルアーの色が、頭に残るんですよ。僕はオレンジ系のスピナーベイトをよく使いますね。そういう系統で釣果が結構あったので。水が濁っているときはこの色がいいとかいったデータも一応あるんですけど、プロの人が釣るのを見ていると、エサになる魚の色なんかも考えてルアーをチョイスしてるんだと思います。
でも、バスが食べているのは、基本的にブルーギルとか、もしかしたらアユとかも食べてるかもしれないですけど、それほど色で釣れるというイメージはないんですよね。僕はちょっと目立つ色のルアーを使ったほうが食いついてきたという印象があります。
—— 釣られる魚の気持ちを想像するんですか。
プロの人だと水温を測ったりもした上で、最初にトップウォーター(水面)で釣るルアーを試して、それで反応がなかったら中層、さらに下、というふうに探っていくみたいです。でも僕は、基本的にスピナーベイトが好きなので。投げたときに、なんの感覚もないヤツはあまり好きじゃないんです。ブルブルふるえたりするのが好き。でも、バイブレーションっていう、引っ張ってるだけで振動するのはちょっと違うんだけど。
—— エサだと騙すような動かし方をするわけですよね。
ネコリグは、木から虫が落ちてくるっていうイメージだから、いったん、糸を木に引っかけて垂らして水面をチョンチョンつつくと、食いついてきたりするんだけど。一度、野池でポンパドール(ジャッカル)っていう羽根のついたルアーを投げたら、きわどいところで木に引っかかっちゃって、外そうとしたときにポンパドールがポーンと跳ねて、水面にバシャッと落ちた瞬間にバスが勢いよく食いついてきた。あれはめっちゃ面白かったですね。
—— どこに投げるかというのは、どうやって決めるんですか。
バス釣りをやってる人は「あ、あそこはいそうだな」っていうイメージが何となく湧くんですよ。その、良さそうな場所を選ぶ楽しみもあるし、そこにキャストする技術も楽しい。狙いどおりに投げることができたら、釣れなくても「よっしゃ、うまく行った」と思うし。それで釣れたら、さらに楽しいっていう感じです。そんなふうに、いろいろな楽しみがあるんです。僕も、釣れなくても楽しい時期があって、ただ投げるのが楽しい。
バス釣りをするのは、基本的に周りが森みたいなところ。で、そういうところの角っこに、けっこういたりするんですよ。水面に張り出した木の下とか。そういうきわどいところに投げて、うまく投げることができたときが楽しいし、投げたのが水面に落ちた瞬間にバスがガッと食いついてくるときもあって、それはたまらないですね。
サッカーは読めるけど、釣りは読めない
—— バスプロでは金森隆志さんが好きだそうですが、どういうところが魅力なんですか。
とにかく渋いんです。カッコいいんです。サングラスとかも今っぽいのをかけてて。髪を結んでるときもあったし。若い人は結構、カナモさんのこと好きだと思います。人気あります。金森さんが使ってるメーカーの商品を、一時期は相当買ってました。
——それはサッカー少年が、自分の好きなプロ選手と同じスパイクを買ったりするのと同じですね。
そうそう。そんな感じです
—— 釣りの駆け引きの部分って、サッカーと似ているところがあるんですか。
うーん、どうかな……。でも、極めていったらもっと違うんだろうけど、僕の中では「バス釣りってけっこう、運なんじゃないかな」って思っちゃってるんですよね。ある程度は。結局、魚の気持ちなんて人間にはわからないじゃないですか。プロの人は「いま水温がこうでこうだからこういうところに溜まる」って言って釣ったりもするんですけど、それでも釣れないときは釣れないし、プロが釣れないんだったら、僕らが行ってそんな簡単に釣れるわけないよな、と思うし。だから釣れるときってのは、ちょっとラッキー要素が強いんじゃないかなって思いがあります。
——サッカーのほうが必然という。
そうですね、人間対人間なので、相手のことを読みやすいですね。やっぱり魚の気持ちはわからないですもん。いま魚がお腹すいてるかどうかなんてわかんないし。結局、統計上ではこういう動きをするというデータを見て考えたりするわけじゃないですか。でもそれだって、魚それぞれに違うかもしれないし。たとえば、僕があるルアーを投げる直前に、バスがそれと同じような形のエサを食べてたら、もう1尾食べに行こうとは思わないかもしれないでしょ。でも逆に「あ、また同じのがいる。ラッキー」と思って食いつくのもいるかもしれない。そう考えたら、ちょっと運みたいなところがありますよね。運だなんて言ったらプロの人に怒られるかもしれないけど(笑)。
Jリーグに広がる釣り好きの輪
——最近、トリニータ釣り部の活動は。
最近はみんな結構、海釣りに行ってるんですよ。みんな釣ったら食べるんですよ。
——三平選手の他にバス釣りが好きな選手は?
(松本)昌也(現・ジュビロ磐田)が相当好きでしたね。西(弘則)くん(現・カマタマーレ讃岐)もよく行ってた。でもいちばん好きなのは多分、夛田(ただ)凌輔(現・栃木SC)ですよ。自分でカーナビで探していろんなところに行ってたし、いまでも行ってるらしいし。アイツが大分にいた頃は僕も一緒にだいぶあちこち行きました。
―― 選手寮にバス釣り用のボートもあるそうですね。
みんなでお金を出し合って買いました。「7、8人いればみんなで力を合わせれば買えるんじゃね?」って。8万円くらいしたんですけど。でも、野池でボートを出したら無敵でした。絶対釣れます。岸からじゃ行けない、投げても届かないっていうところ、人の気配のないところにまで行けるし。あれはめちゃくちゃ楽しかったです。思い出満載です。僕と夛田、西くん、サク(作田裕次、現・ツエーゲン金沢)、(井上)裕大(現・町田ゼルビア)、(清水)圭介(現・京都サンガ)。あと誰だっけな……。
—— みんな移籍先でも釣りを続けてるんですかね?
あのときの釣り部のLINEはいまもあるんで、圭介なんかは琵琶湖で魚を釣ったときは写真を送ってきますよ。夛田も送ってきてました。
夢は50センチオーバー
—— いちばん最初にバス釣りを教えてくれたのは誰だったんですか。
誰だろう、兄ちゃんかな……。小学校のときに釣りマンガの『スーパーフィッシング・グランダー武蔵』が流行ってたのもありました。班で登校するときに、班長が「班長棒」っていうのを持ってるんですけど、その棒が、切ったらルアーに出来るような棒なんですよ。それが欲しくて。班長棒は、折れたら先生のところに行けば新しいのをもらえるんで、わざと折って新しいのをもらって、折ったヤツを切って絵を描いて針をつけて、ルアーにして使ってました。ただ、まったく釣れなかったけど(笑)。でも本当に本格的にやりはじめたのは大分に来てからですね。サクに「バス釣り面白いよ」って誘われて行ってハマって、っていう感じです。
—— バス釣りの面白さって、本当に奥深い渋いところにあるんですね。
そうですね。普通の人が考えたら、食べれないのになんで釣るの、って感じなのかもしれない。でもやりたいっていうのは、それだけの魅力があるってことなんです。
—— 駆け引きが好きなんですか。
何が好きなんだろう……。ドキドキすることが好きなのかな。釣りは、いつそのときが来るかわからなくて、いきなりグンッと持っていかれたら、めっちゃ心拍数が上がるんですよ。それでバレちゃったとしても、ドキドキが止まらないくらい。何年やってもそうですね。魚が来たときはめっちゃドキドキします。急に来るのがいいんだろうな……。
—— サッカーは別の話として、釣り人生での目標はあるんですか。
バスだったら、僕は50センチ以上のを釣ったことがないんです。最高で49センチくらいまでなんですよ。やっぱり50センチオーバーを釣ってみたいです。プロの人でも50センチオーバーを釣ったときはめっちゃ喜んでますもん。
取材・文 ひぐらしひなつ
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一方で、書籍編集者としての得意ジャンルは、学生時代から続けているサッカー。まあ部活の練習はそこそこで、休日などは午前で切り上げ、釣り竿を担いで、自宅から10分圏内の四万十川や中筋川にフナやコイを釣りに出かけていたものです。
それでも前職も含めると50冊以上のサッカー書籍を作ってきました。
そんな中、書籍化を目指して、4年前から追っかけ続けてきた、高校サッカ…
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