エリアトラウトの歴史を変えた名作ルアー〈その4〉【モカ × 森田大】



エリアトラウトにおける必携クランクベイトのひとつ『モカ』。クランクなのに抑えたアクションという、相反する要素が激ハマりしたロデオクラフトの名作だ。生みの親にしてエリアエキスパートである森田大さんが、このルアーに込めた”思想”について掘り下げた。

固定概念をくつがえす! 『モカ』の前に『ノア』ありき…!

今から約15年以上昔…。急成長の兆しを見せていたエリアトラウトの世界では、現在のトラウトキング選手権大会へと続く、全国規模のエリアトーナメントの人気と影響力が加速し始めていた。トーナメントでは、戦国時代の勢力図さながらに「栃木県」の管理釣り場をホームエリアとしていた、いわゆる「北関東軍団」が圧倒的な強さを誇っていた。実際、現在のエリア文化の礎を築いた北関東勢の釣りは、当時から繊細にして先鋭的だった。

そんな時代背景の中…、当時としてはエリア後進地域であった千葉県出身で、たったひとりで全国のエリアトーナメントを転戦し、圧倒的な強さを誇っていたアングラーがいた。
そのアングラーこそがロデオクラフトの現チーフデザイナーである森田大さんだ。

森田大(もりた・まさる)ロデオクラフト・チーフデザイナー。「天才」「奇才」「異才」がひしめき合っているロデオクラフト軍団を束ねている総大将。伝説のロッド「フォーナイン」シリーズ、また「ノア」「モカ」といった、現在のエリアシーンにおいて欠かすことができない名作のプロデューサーとしても知られている。エリアに限らずネイティブトラウト、シーバス、ライギョと各方面の釣りで「神」の異名を持つ、影響力マックスの超エキスパートアングラー。

現在でこそ、松本幸雄さんを筆頭に、福田和範さん、早乙女智啓さん、安塚壱也さん、佐野亘彬さんという、錚々たる「天才」「異才」「奇才」たちがひしめきあっているロデオクラフトだが、その第一歩は、森田大さんがたったひとりで全国のトーナメントを転戦して、絶対的な”結果”という分かりやすいカタチで足跡を残すところから始まっていた。

そんな森田さんが主力で使用していたスプーンこそが、自身で開発した『ノア』(ロデオクラフト)だった。

写真はノアB(ロデオクラフト)

現在では、エリアアングラーのワレットの中を覗かせてもらうと、かなりの高確率で常備させている超メジャーなノア。そんなノアをここまでメジャーなスプーンに押し上げたきっかけは、開発者である森田大さんがノアを引っさげ全国各地で勝ちまくったからだ。

それくらい、森田大さんの強さは異次元だった。

森田さんが使用しているスプーンは、どうやらノアという名前らしい…、という事実が口コミで広がり、気が付けばノアは全国区のスプーンに成長していた。そして、トーナメントの世界で異次元の強さを誇るアングラーが使用しているルアーが全国区になる…という公式的なものが、うっすらと輪郭を表したのもこの時期だった。
その結果、トーナメントの影響力はさらに強くなり、その熱気と人気はさらに急加速を遂げた。

『モカ』というクランクベイト!

ノアを引っさげて、全国で連戦連勝を続けていた森田大さんは、当時からスプーンの巻きスタイルにこだわっていた。そんな森田さんが、トーナメント絶頂期に開発したルアーが『モカ』(ロデオクラフト)だ。

長期間の検証に末に誕生した伝説のクランクベイト『モカ』

スプーン巻きの森田大がクランクベイトを開発した!

その衝撃は、当時のエリア業界に多大な影響を与えた。そして、森田さんが開発したクランクベイトは、強波動…、強アピールが主力だったエリアクランクにおいて、波動とアピール抑えた、当時としては異端とも取れるクランクベイトだった。

「モカの動きはタイトウォブリングです。当時クランクベイトを開発するときに、この先、みんながクランクを普通に投げる時代が来ると確信していたのですが、そうなったときにどうなるか? ということを予測、検証して開発したのがモカです。自分でもクランクを使い倒して、1~2か月かけてプレッシャーを与え続けて、それを何サイクルか続けました。クランクを使い続けると最終局面でどうなるのか?」

モカはいつの時代もエリアゲームの最前線を突っ走っている。

「その結果、スプーン同様バタバタした強めの動きでは釣れなくなる…という確証が持てました。でも時代は、クランクベイトはブリブリ動いてなんぼ…という価値観全盛でした…。一歩間違えたら、早すぎたクランクと言われて消えていたキケンもありましたよね…(笑)」。

ノア同様、現在では多くのエリアアングラーのルアーボックスの中に常備されているモカ。発売当初こそ異端の影が透けて見えていたモカだが、現在では完全なるエリアクランクの王座に鎮座している。

エリアトラウトの楽しさを感じて欲しいがゆえの”ワンフック”

そして、森田大さんはモカ開発当時にいくつかのメッセージというか…、願いを込めていた。そのひとつが”ワンフックシステム”(現在のモカは2フックシステム)である。

スプーンの使い手である森田大さんは、終始 “釣りを詰める” という楽しさを提唱し続けている。”釣りを詰める” とは、その日、その時のトラウトの状況に即してアングラーがレンジやカラー、アクション、スピード、シルエットなどを絞り込んで行き、その絞り込みの連鎖の到達点に…、単なる鉄板であるスプーンをストレスなくトラウトに食わせる一点が存在する。その一点を詰めるための試行錯誤がエリアトラウトならではの楽しみのひとつなのだ、と。

モカのワンフックシステムには、森田大さんの “ある願い” が込められている。

その一点に到達し得れば、ビッタリとキレイなフッキングに至る。その一点を目指すことはすなわち、スプーンを介したトラウトとの濃密なコミュニケーションに他ならい。森田さんはその楽しさを伝えたいがために、2フックが主流のクランクベイトに対して、あえてワンフックシステムを採用した。

つまり、しっかりと “釣りを詰めていれば”=”トラウトとコミュニケーションが取れていれば”、フックはひとつで十分…というメッセージ・願いだ。

写真(上)モカ。写真(下)ぷちモカ。

そして、現在のエリアアングラーの多くが、この “釣りを詰める” という行為を追求して研究を重ね、同時に楽しんでいる。森田さんが提唱している “釣りを詰める” という楽しさは、エリア文化の根底に完全に根付くどころか、エリアゲームの本質そのもとなっている。
一方、森田さんを始めとしたロデオクラフトのプロスタッフに憧れて、エリアゲームを始めるビギナーの数も膨大な数に上るようになった。現在ではモカ開発当時とは比較にならほど多くのアングラーがエリアゲームを楽しんでいる。



さらにエントリーユーザーも取り込む “2フックのモカ” へ…!

そして、モカは膨大に増えているビギナーアングラーにも釣りの楽しさを提供するべき “モカ第2時代” へと突入し、やがて2フックシステムとなって生まれ変わった。

いつの時代も、時代の先端を突っ走るルアー。それこそがモカの正体なのだ。

そして…現在モカは2フックシステムとなった。

モカを開発した森田大さんによるエリアトラウトの大物理論については、『ルアーマガジン マス王』内「森田大×松本幸雄:偶然ではない必然だ! 狙って獲る”でかマス学”公開! でかマス方程式」にて詳説を展開。シーバスやバスを始め、さまざまなビッグフィッシュを仕留めてきた森田さんが考えるエリア大型魚攻略。考え方のキモからアプローチまでを、松本幸雄さんと実釣&語り下ろし。でかマスを釣りたい諸氏は必読だ!

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