『ルアーマガジン・ソルト』誌の連載企画「タックル進化論」を担当するフカポン。タックルハウス社のK−TENシステムから始まったルアーの「重心移動システム」に注目し、その機構や歴史、各社の同システムのバリエーションについて取材を続けてきたが、本稿ではメガバス社の最新重心移動システム「LBO」について深掘り紹介する。スレきった釣り雑誌編集者にとっても、この仕組みはかなり衝撃だった模様。
ルアーの”重心移動システム”は奥が深い。深すぎる。
HFE(自称Hyper Fishing Editor)のフカポンです。みっぴさんの秘蔵画像は、近々出しますので落ち着いてください。いまは溜め期です。
さて、小話は置いておいて本題です。
小生が担当しておりますルアーマガジンソルト誌の連載企画「タックル進化論」では、タックルハウス社のK−TENシステムから始まったルアーの「重心移動システム」に注目し、その機構や歴史、各社の同システムのバリエーションについて取材してきました(それらがいかなるギミックなのかは過去記事をご参照あれ ↓)。
さて今回取材したのは、メガバス社の「LBO(Liner Bearing Oscillator)」という最新重心移動システム!(『ルアーマガジンソルト2018年7月号』に掲載中)
この重心移動システムは、おそらく本稿執筆時点では各社がしのぎを削った同機構の最新タイプと呼んで差し支えないでしょう。
(正確にはLBO Ⅱがリリースされていますので、そちらが最新)
ルアーマガジンソルト誌でも心情を吐露しておりますが、最初、この機構を見たときの素直な感想は「ちょっとヤリすぎ〜、メガバスさんギミックこだわりすぎー」なんて思ったモノでした。たしかにその時から興味はありましたが、でも、果たしてこのギミックは本当に必要なモノなのか。単にルアーを売るための”方便”ではないのか…と、若干引き気味にリリース資料を目で追いました。
LBOの実力に迫る。そしてLBOのごとく摩擦係数少なく軍門に下る。
さて、メガバス本社に赴き、このLBOについて根掘り葉掘り聞く機会が訪れました。小生、スレきった編集者です。メーカー様であろうと、ちょっと意地悪な質問とかぶつけちゃったりして困惑させ、あとでそんな失礼なこと聞くんじゃねー!と小社上長的な方に怒られちゃったりして楽しむドMです(もしくは先方からクレーム)。
そんななか虎視眈々と裏話的な部分や、淡々とそのものの説明を聞き続けるワケなのですが…。
「あれ?これ、発想もトライも極端だけど、超正統進化なんじゃねーの。メガバスやべー!!」
…と、あっさり軍門に下ることに。えぇあっさりと下りますとも。まぁ、ワケがあるんですが…。
小生、いろいろな重心移動システムを取材してきて、やはり最初のアイデア(タックルハウス社・二宮正樹氏)に対して、深くリスペクトを表明するわけですが、各社がそれをベースに据えつつ、重心移動システムの性能という部分での進化を模索したとき、とある2つの機能の進化がこのシステムそのものの性能を押し上げるだろうと考えておりました。
メガバスのLBOは、その機能をある意味で究極まで高めてきました。ひとつは「キャスト距離の向上」、そしてもうひとつは…、「着水後のルアーアクションのレスポンス向上」です。
特に注目したい、着水後のルアーアクションのレスポンスの速さ
ウエイトがルアー内部に固定される固定重心モデルのルアーの利点は、着水直後からルアーがきちんと機能することでした。ウエイトはアクションをさせるためにセッティングした位置から動かないわけですから、ルアーはすぐに仕事をするわけですね。
(ブラックバスなんかは特に、ルアーの飛行中もソレを追って着水点に向かったりします。なので、着水後すぐにアクションするってルアーの機能は、思ってるより重要だったりするわけです。水中のストラクチャーをかすめて低空をキャストすることで、魚を誘い出すなんてテクニックもあるくらいで…。なので近距離戦も多いバス用ルアーは、固定重心が好まれたりすることもあったりしますです)
でも、重心移動システムのウエイトは、一度、キャストに最善なルアー後方にウエイトを移動させ、その後、しかるべき運動や角度を加えることでルアーがアクションするウエイト位置に移動して収まります。その位置に収まるまでの間のタイムラグこそが重心移動システムの弱点でした。
(ただ、当然、遠投性能は高まるのでそこは目をつぶりましょうよ。ちょっとしたラグじゃん?という認識です)
この弱点を克服するためのトライを各社が続けてきたといっても過言ではないでしょう。例えば記憶に新しいのはシマノの「AR-C」でしょうか。AR-Cはバネの力で着水時には既にウエイトが然るべき位置に戻るというシステムです(ざっくりしすぎな解説ですいません。このシステムも非常に面白いので近日中に掘り下げ取材予定)。
さて、話をLBOに戻しましょう。メガバスでは、この然るべき位置にウエイトをいち早く、しかも確実に戻すにはどうすればいいのかという究極の性能を模索したようです。その発想が「摩擦係数が少ないベアリングをウエイトに内蔵して移動させれば超スムーズ!」というものだったようです。おいおい、重心移動のウエイトのムーブ機構にボールベアリングを内蔵だとっ?狂気の沙汰でゾクゾクしますな!
さらに調べていくと、埼玉県川越市にある小径リニアボールブッシュ世界トップメーカー・ヒーハイスト精工とその機構の開発に乗り出したことが分かります。スゴい、そのあたりの動きができるメガバスという会社に憧れる!
アレ? コレ言っちゃってよかったのかな。まぁ、ネットで調べりゃでてくることですし、提灯記事ではないですし(暴論)
そしてメガバスのノウハウを注入しつつ完成したのがコレ!!
これがLBOの正体です。ざっと説明すると、いわゆるシャフトに円筒状のウエイトが移動するシャフト型の重心移動システムで、どこにそのボールベアリングが入っているかと言うと、シャフトに接するウエイトの中なわけです。その数値がどれくらいすごいのかはわかりませんが摩擦係数0.01だそうです!
なんで摩擦係数が少ないといいの? それはね、ちょっとルアーを傾けただけでウエイトがスルスルと移動するからなのです。つまりはルアーが着水して動き出す前傾姿勢をとったときには、必要な位置にウエイトが収まっている…、つまりルアーがすぐに仕事する! そう! するのです!
まぁ、メーカーさんのホームページでアゲアゲな解説を見ていただくのが、どうスゴいかという長所を確認するには手っ取り早いと思います。
しかしですね、さすがにギミックとしてはすごいけどデカくなりすぎないコレ? ついでにコストいくら掛かってんの?? というヒネた感想を持つスレきった編集者が小生です。
理由は後に書きますが、確かにかなり高いレベルで重心移動の弱点を克服した機構といえます。常に安定した飛距離を叩き出すこ可能なロジック、そして、アクションの初動の速さ…。パーフェクツ!!
なのですが、気になった点はあります。
ルアーのアクションはルアーそのものの内部の空きスペース(体積)が大事になります。もちろん、ルアーの形状やウエイトの配置で諸々変わってくることは承知していますが、ルアーの内壁を極限まで削って体積を増やし、アクションのキレを求めるチューンナップがあるくらいですから、このシステムの大きさは単純にマイナスなんじゃないかと思ったのです。要はルアースペースに対して「システムが体積とりすぎなんじゃないの?」という疑問です。
ただ、メガバスのLBO搭載ルアーに関しては、比較的大型でファット、なおかつ求められているアクションの性質からどうもそのデメリットは顕在化しにくいということがわかりました。つまり、驚異的な飛距離の安定性と単純な性能アップ、そして動き出しの良さは強力なプラス要素としてルアーに付与されたようです。
でも、さすがにベアリングボール内蔵ウエイトですからね。ルアーのコストは上がったようです。ユーザーにとってのマイナス要素ではありますが、そのアップに見合った性能は内包されていると小生的には思います。
革新的重心移動機構だけど、やっぱりメガバスとしても大きさが気になった!?
さて、LBOは非常に完成された重心移動システムですし、現況搭載されているルアーについても、良い仕事をすることはわかりました。でも、ちょっとシステムが大きくなりすぎるので、そのまま小型のルアーに内蔵するには無理がある…。どうも、開発元のメガバスでもその問題については早々に認識していたようです。そこで…「LBO Ⅱ」が開発されたのです(のはずです)。ということで、続きは〈後編〉をお待ちください。
(メガバスルアーの最新重心移動システム「LBO」。『ルアーマガジン・ソルト2018年7月号』に掲載されている「タックル進化論」にてさらなる詳細を掘り下げている。気になる方はぜひご覧あれ!)